「私(宮﨑駿)はこう生きた。さて君たちは?」君たちはどう生きるか しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
私(宮﨑駿)はこう生きた。さて君たちは?
第81回ゴールデン・グローブ賞作品賞受賞作。
第47回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞作。
通常スクリーンで鑑賞。
吉野源三郎氏の同題小説は読了済み。
なんの先入観も持たずに映画を観たのは今回が初めてかもしれない。前代未聞の宣伝手法を取った本作だが、それは情報が氾濫する現代社会にひとつの楔を打ち込んだかの如く、世間の話題をかっさらっていたのがある意味痛快だった。ネームバリューだけで客を呼ぶことが出来るすごさも痛感させられた。
監督の自伝的要素を含みながら主人公が世の中や己自身に向き合い成長していく、かなり王道なストーリーが展開する。
物語の前半と後半で印象が変わり、少々散漫な印象を受けたものの、ジブリらしさ全開の独創的なファンタジーだった。
内容について詳しくは語らないが、監督のキャリアの集大成的な作品であることは間違いが無く、とても面白かった。
「私はこう生きた。さて、君たちはこれからをどう生きるんだい?」と監督から問い掛けられているような気がした。
一時代を築いた人物なだけに、その問い掛けは真に迫っていると云うか、とてつもない重みを伴っているように思う。
つまりそれは、ひとつの時代の終わりをも意味しているわけで(おそらく本作が本当の引退作だろう)大変寂しい。
最高傑作ではないかもしれないが、引退を撤回して本作をつくったクリエイターとしての心意気が伝わる力作であることは間違い無い。お疲れ様でした。ありがとうございます。
[追記(2023/10/05)]
本作で監督は引退されると思っていたので上記末文のようなことを書いたが、ご本人は全く引退する気が無いらしいと云うネットの記事を読み、衰えぬ創作意欲に感服すると共に、まだ新作が観られるのかと云う喜びに震えている。
※修正(2025/05/24)
こちらこそ共感いただき、ありがとうございます。
レビューを拝読し、思考を放棄しているかのような人たちへのメッセージが込められていると云う点になるほどと思いました。
巨匠による現代への提言は、身につまされるし考えさせられることばかりで、本作の余韻はしばらく離れそうにありません。
共感をありがとうございます!
仰る通り、宮崎監督からの真に迫ってくる、とてつもない重みを伴った問いかけでしたよね。
あのお歳にして尚、他作品への興味が薄れない感覚、創作への意欲、届け手としての使命感。。
宮崎監督には感謝と尊敬の念しかありません。
そして、1つの時代が終わっていく感覚。。共感します。
私もエヴァ以来の寂しさにおそわれています。
余談の部分、おっしゃる通りだと思います。
70代半ばで、児童文学に刺激を受けてまた自分で作りたくなる。
そして、これだけのものを7年間かけて作ってしまう。
それだけで感動します。