劇場公開日 2023年6月2日

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「最初に「寓話」であることを明示して欲しかった」ウーマン・トーキング 私たちの選択 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5最初に「寓話」であることを明示して欲しかった

2023年6月6日
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敬虔なキリスト教徒の話なのに、冒頭の投票で、いきなり「赦す」という選択肢が除外されたことに違和感を感じる。
しかも、復讐や殺人につながりかねない「戦う」という選択肢の得票数が、「出て行く」と同数であるということにも驚く。
よほど腹の虫が治まらないのか、それとも自尊心が強いからなのかと思っていたら、中盤で2010年の話だと分かり、こんな閉鎖的な社会にもようやく女性解放の波が押し寄せたのかと、少し納得した。
ただし、いくらアーミッシュのような宗教的なコミュニティだとしても、司法や行政の手は届くだろうし、タリバンでもあるまいし、女性に教育の機会を与えないのは度が過ぎるだろうという疑問が残る。
南十字星が出てきて、初めて舞台がアメリカではないことが分かるのだが、それだったら、これが(解説にあるように)現代のボリビアでの事件を下敷きにした「寓話」であるということを、最初に明示してもらいたかった。
そうすれば、次々に湧き上がってくる違和感や疑問に気を取られることなく、女性たちの白熱した討論にもっと入り込むことができたのではないかと思えるのである。
知識や教養はないものの、知性や理性に裏打ちされた彼女たちの主張には、直接心に響いてくるような重みを感じることができる。
恐怖や憎しみの対象である加害者の男たちが、はっきりと画面に映し出されないため、観客が、討論の行方を、冷静かつ客観的に見守ることができるようにもなっている。
すでに結論は出ているのだが、全員がそれに納得できている訳ではない。
そんな中、彼女たちが、宗教的な「善」の価値観や「子供たちのため」という信念に基づいて、誰もが同意できる解釈を導き出す過程は見応えがあった。

tomato
tomatoさんのコメント
2023年6月7日

humさん、コメント、ありがとうございます。
時代や場所といったものを超越した「普遍性」を感じ取ることができる映画でしたね。
真摯に絞り出される「言葉の力」というものを、改めて認識することができました。

tomato
humさんのコメント
2023年6月7日

コミュニティを、宗教から、家庭、国家、友人関係など、様々におきかえ考えられる話でした。tomatoさんの、最後の文章が沁みます。

hum