「面白かったがオチのひと押しが足りず、紙一重」ゲネプロ★7 sayさんの映画レビュー(感想・評価)
面白かったがオチのひと押しが足りず、紙一重
自分としては面白かった。
劇中劇は流石に普段舞台に立っているだけあって、一瞬で役の魅力を表現するところが素晴らしかった。
役者さんは芝居にも殺陣にも慣れていて流石の迫力だったし、劇中劇も興味深かった。
小道具の劇団7の過去作のポスターなどもリアルで、売れない時、売れ始めた時、売れている今のポスターがデザインやカラー数などかけている予算が違うのが見て取れる。
だがそういったことは、舞台好きだから思うことだ。
そうでない人にも伝わる描写が、全体的に少なかったのではないかと思う。
低評価のレビューの内容にも頷くことが非常に多い。
ゲネプロがどういうものであるのか、言葉の説明ではなく肌感として伝わっていたかも疑問だし、
シェイクスピアを知らないと台詞にピンとこなかったり、
パックが薬で悪さをする元ネタがわからなかったりして
劇中劇の面白さがわからないと思う。
Show must go onとはよく言われるが、ゲネプロで事故が起きたら当然止めるはずで
ゲネプロではなく本番だった方がまだ理解できたと思ってしまった。
舞台に演出家は口を出せないという台詞は確かに!と思ったものの
尚の事ゲネプロであった意味がなくなる。
つまりいつの間にか本番に切り替わっているぞという種明かしの表現なのだろうか。
そもそも解釈が観客に委ねられている部分が多すぎるのではないか。
現実と役作りがリンクしていきヒートアップする過程はぞくそくしたものの
結局どこまでが現実だったのか、全てが芝居だったのか
舞台の迫力で観客が見ていた幻だったのか
結局『黒幕』は誰だったのか。
劇中劇でオーベロンとして話していたかと思えば
シェイクスピアの名前が出てくるのでどんでん返しがあるかと思ったが
蘇我が入れた山井、という二人以上の人間は答えとして出て来ない。
蘇我の顔は結局最後まで明かされないのもわざとらしさを感じたし
結局死んだというのが嘘だったのか(そんな無茶な)
亡霊のように劇団についている概念的なものだったのか。
ラストのカテコスタンディングオベーションの後もうひと押し
謎解きなりどんでん返しがあると思ったので、なかった点にがっかりしてしまった。
企画・プロデュースが松田さんなので仕方ないと言えば仕方ないが、
結局キャストもスタッフもいつメン。
折角堤監督だし竹中直人さんなど有名役者を呼んでいるのに
正直竹中さんの役どころも思わせぶりなだけでもう一声という感じ。
メインに若手役者で脇役に大御所役者を配置し、
人気役者のスケジュール上短期間で一気にやるというのもいつものやり口で、
そのせいで、折角役者は実力派揃いなのに安っぽくB級に見えてしまっていると思う。
蘇我が行方不明程度にしておいたら実は良い芝居を見たかったからなんです、
というのも納得できたし、
蘇我を出馬させるために舞台大成功敏腕プロデューサーの肩書をつけさせようと
竹中さん演じる渋谷氏が暗躍していたとか
もうちょっと現実的に筋が通っている部分があったら全体の説得力が上がったと思う。
繰り返しになるが、自分は面白かったものの、
キャストありき、好きな役者が出ていればなんでもいいファンが高評価をつけるだけの映画
と思われても残念だが仕方ない部分はあるとも思ったので
その点非常に惜しいし悔しく、面白かったと言い切れないのが残念。