きみの色のレビュー・感想・評価
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なんともふんわか
「ぼっち・ざ・ろっく」を劇場に観に行ったときに、予告編で知った「きみの色」。
作品名は忘れたけれど、別の予告編もアニメでバンド・音楽モノが流れていた記憶がある。
だからなのか、最近またバンドブームなのかな、って思った。
バンド映画というと「リンダ!リンダ!リンダ!」(2005年公開)かな。
ティーンズ音楽系だと「スィングガールズ」(2004年公開)を思い出す。
その辺のキャラクタの熱量と比べると、「きみの色」に出てきたトツ子、きみ、ルイというのはおとなしいなぁって思えた。ミッションスクールが舞台になっているせいもあるのかな。
主人公たちの葛藤のようなものの熱量が、昔の作品と比べると抑えられている感じ。
これは演出の意図なのかもしれない。
トツ子の世界においての世界観自体がおとなしいモノなのかもしれない。
テルミンが使われたのも そんな演出の一つなのかもしれない。
心の結びつき
田舎町の高校を舞台に音楽を通して絆を深める若者たちの
青春映画。
音色を色で表現するやり方を取り、全体を淡い色合いでまとめ主人公たちの固まっていない心を表現している様に思えた。全体のバランスとしては心情に訴えかけるものがある訳ではないので、どうしても色合いと相まって淡白に感じられた。
きっと自分は曇天のような色
映画館で観たらまた違った感想かもしれない
なんといっても美しい色彩を放つ映像が素晴らしい。
トツ子の不思議ちゃんとも思われる行動もルームメイトや優しい教師が見守っている。主人公3人のもつ悩みや葛藤、後ろめたさは青春時代限らず社会人になってからもあって、大きな衝撃や悲劇はないものの続いていく日常を丁寧に描ききった作品でもある。人によっては物足りないかも、映画館で観たらまた違った感想かもしれません。
最後のバンド演奏は楽しさが伝わってきて、自然と口ずさんだり体を揺らしたりしていました。恋愛要素がなかったのはよかった。
青春の揺らぎ、悩みのカケラが、散りばめられているけれど、もどかしさを感じてしまう。
とても叙情にあふれる詩的な作品で、作画もパステルカラーで
ふんわりと美しい。
トツ子が、人の姿が、色で見える・・・
このテーマ、
明確な形に出来てない気がする。
きみちゃんは・・・青。
ルイ君は・・・緑。
トツ子は、
自分の色は・・・?
“分からない“と、答える。
色が見える・・・トツ子の心が揺れるとき、
…………………………トツ子の心が騒いでしまうとき、
…………………………エモーショナルな感情・・・
つまり、感動・・・それが“色“なのかな。
とも、思う。
《変えること出来ないものを、
《受け入れる、心の平安をください》
トツコは聖堂で毎日、毎日、祈っている。
トツコにとって《変えることのできないもの》
それは何だろう?
成績?
容姿?
身長?
体重?
性格?
案外この中にあるかも知れない。
きみちゃの退学の理由?
これはやはり知りたかった・・・
確かなことは、ルイ君、トツ子、きみちゃん、
この3人でバンドを組んで、
一つになり、
結果的に一つの答えは出た。
夢中になれるものを見つけるのが、
生きること・・・だと思うので、
結果的に、答えは出た。
ライブは面白かった。
“水金地火木土天アーメン“は
リズミカルで楽しく
盛り上がったね。
テルミンなんて楽器、
今でもあるのかなぁ!?
しろねこ堂のライブの後に、
ミスチルがエンディング曲を歌うのは、
賛否が分かれると思う。
ミスチルは、さすがの解釈で、この映画を完全に説明していて、
なるほどと感心したけれど、
(ミスチルの桜井さんに代弁、補足してもらうのは、
この映画のメッセージ性の弱さだと思う)
山田尚子監督の「聲の形」は、
生身の傷に塩を擦り込まれるような映画だった。
(この映画は、ずうっとマイルドで穏便・・・
(それが悪いわけでは勿論ない)
“水金地火木土天アーメン“で、盛り上がって7分間くらい
暴れ回って、
ロックして、
スタンディングオベーションの、
津波と洪水の嵐の中、
くるくるまれ、キラキラと、
で、終わっても良かったと、思う。
きみの色、
それはYouであり、
Yourだろう。
各々の、みんなの色が、
あってもいいというメッセージ。
ボヤーっとした文学性を感じるしメッセージはあるけど、エンタメ度が低いです。
評価が難しい作品です。最後まで見た印象は悪くないのですが、エンタメとしての盛り上がりがないので「面白かった」という感想は素直には出てきません。
テーマ性、私小説としての作家性などはあまり感じません。もちろん生き方に関する自分らしさ、自分の気持ちなどの含意はなくはないですが、あえてそこをボヤッとさせている印象があります。となると文学を目指したのかな?という気がしなくはないです。
一見人間に色がついて見える共感覚の持ち主トツ子がヒロインに見えますが「きみの色」のタイトルが示すとおり「きみ」という名の少女がどちらかと言えばヒロインです。内面描写も抱えている問題も「きみ」に焦点が当たります。
逆にトツ子はおそらくですが、無垢で純粋、色で人の本質が見える、音楽で踊り出す…などの性質は「聖性」なんですよね。カトリック系の学校であることと合わせて、トツ子の役回りは「天使」です。
そう考えると、生き方を迷っている「きみ」のところに舞い降りた天使に触れることで「自分らしさ」を確認する話なんだと思います。だから一緒にいてくれるんでしょう。
「きみ」の退学の理由とか、男の子ルイの葛藤とかそういうところを明確に描かないのは、その内容が大事なんじゃくて、そういう状態の人に向けてのメッセージを含むからと考えられます。
つまり「きみ」が意味するのは、ヒロインであると同時に我々視聴者のことでもあるということでしょう。感情移入するように、自分事として考えられるように、ヒロイン「きみ」の事情を明確にしなかったんだと思います。そこに高校生の進路を考える時や人生に悩んでいる人に対するメッセージがこめられているのかな、と思わなくはないです。
そういう「意図」がありそうなので、私が読み取れない何かが含まれているのかもしれませんが、1回見ただけではそれくらいしか感じ取れませんでした。そうなると、作品としてのエンタメ性がかなり不十分なので、一般的な評価は悪くなるだろうなあという気はします。
最後に素直な感想を言えば、面白くないわけじゃないし、感じられるものはありました。見て損だったとは思いませんでした。しかし、これを劇場まで行って見たら頭に来てたかも。作画が素晴らしいので逆に満足したのかもしれませんけど。
あーあ、今日で奉仕活動が終わっちゃうね!
こちらでは遅ればせながら今から5日くらい前に上映開始になりました。
こちらのサイトでは全体評価で星3.5と、アニメ作品にしては少々辛口評価が気になりましたが、私には色々刺さった作品でした。
最近は日本女性もなかなかたくましくなっているし、ギャルだの頂き女子だの、したたかな女子が目につきがちですが、私の経験上、実際の女子高生は大半が優しくて真面目でおしとやかで頑張り屋でいい子ばかりです。
トツコちゃんの一見、天然で宇宙人のようなキャラにしても、いいとこで育った友達思いの優しい、典型的、敬虔なお嬢様だし、お菓子交換したり、片耳イヤホンしたり、色々見ていて癒されました。
どうしてもキミちゃんの退学理由がはっきりしない点だけモヤモヤしてリアリティに欠けましたが、あの体育館でのライブシーンは、友達がクラスTシャツを着ていたり、あんな感じで段々人が集まって盛り上がったりするところなど、めちゃくちゃ文化祭あるあるで青春みを感じて熱くなりました。
なんだかんだでヒヨコ先生が一番美しかったし、なかなかの秘密をぶっちゃけた、一番胸熱なキャラだったかなwww
エンディングのミスチルの歌も良かったなぁ。30年以上も第一線の、超スーパーバンドなのに、この曲はまるで高校生が体育館で演奏してそうな、特にドラムのシンプルさに心を持ってかれました。(もちろんあんな上手いボーカルは高校生に滅多にいませんが)
少子高齢化がどんどん進んでる日本とはいえ、大人たちもみんなが通ってきたあの眩しい青春時代を、不器用ながら真面目に頑張る登場人物に重ねて思い出させてくれるような、キラキラした作品でした。
no chemistry
思春期を描いた佳作
後味の良い映画だった。映画の画も音楽もそうだが最高を目指していない。どこにでもいる、どこにでもある話を描いている。
特筆するほど良い場面はないが、たんたんと丹念に描く監督の姿勢は好感が持てる。
最後が演奏会で終わるのもうまい終わり方だと思う。
音楽が凄く好きな人が脚本を書いたようだ。
主人公たちは音楽家を目指していない。
その意味このコンサートは唯一のハレの舞台だ。
監督は音楽を食い物にしてのしあがろうとする人たちを描きたかった訳ではない。
音楽に携わる名もしらぬ人たちを描きたかったのだ。
そういう意味で、成功していると思う。
個人的にはきみの横顔が好みだった。
絵は魅力的だった。
人がさりげなくうまいく描けている。
皆いい子で人間ドラマがない。絵が綺麗なだけならイラストで充分
絵はため息が出るほど美しい。演出もセンス抜群。でもキャラクターとストーリーが弱すぎた。
登場人物が全員いい人だから葛藤が生まれない。キャラ同士の相克がない。最初からみんな仲良し。親に対して秘密があっても、親もいい人だからどうせ分かってくれると話が読めてしまう。
後半はひたすらあくびが出た。
劇中歌がダサいとかカッコイイとか正直どうでもいい。最初から大した悩みも乗り越えるべき困難も何もなく、周りの大人も先回りして察して分かってくれる。これじゃ全くドラマが深まらない。こんな話は語る価値がない。
何も主人公と対立するのが悪人である必要はない。価値観や主張が違えば利害がぶつかる。それだけでいいのにみんな考える事が一緒。
平家物語が面白かったのは美しい絵にキャラクターの相克がしっかりと描かれていたから。オリジナルだと京アニっぽいぬるい内容になってしまうというなら、これからは原作モノでやってほしい。
リアルな描写とそれを包み込む優しさ。
[あらすじ]
他人持つ「色」が見えるミッション系の女子校の寮生の日暮トツ子(CV鈴川紗由)は、同級生の作永きみ(CV高石あかり)の持つ美しい青色に惹かれて彼女に関心を持つ。
高校を退学したきみを探したトツ子は再会した古書店しろねこ堂で、きみの奏でるギターの音色に惹かれ、同じく彼女のギターに惹かれた影平ルイ(CV木戸大聖)とともに、バンドを結成する。
ルイが暮らす離島での小さな教会が、バンドの練習場所だ。行き帰りのフェリーでの船酔いや慣れないピアノの演奏を練習する中で、トツ子は天体の授業を元に作曲のインスピレーションを得て、バンドは曲の完成を目指していく。
一方で、きみは同居するおばあちゃん(CV戸田恵子)に高校を退学した事を言い出せず、島で唯一の診療所の息子であるルイは肉親に音楽に熱中している事を秘密にしていた。
「僕たちは、好きと秘密を共有しているんだ」
バンド活動は周囲との秘密の中で進行していくーー。
[所感]
素晴らしい作品を観ました。
四季を通してしっかりと描写して、光と色に関する解説は実験的な描写もあり、迫力のある天体の描写もあり。
しかし、この物語はトツ子の他人の色が見えるという能力も特に超常的な展開を見せることはなく、それぞれの成長と別れに着地します。
この作品のすごいところは、現実の美しい風景を描写し、しかしアニメならではの美しい箱庭として成立させる事に注意を払い、完成させた事でしょう。
パンフレットやエンドロールでは、ロケ地が長崎市や五島列島である事が明記しているけれど、教会がなければ、日帰りできる離島があり、市電が走る瀬戸内地方だと誤解する事もできるでしょう。なにしろ、トツ子の通っている高校の名前も出てこないのです。
山田尚子監督はこの作品を描くとき、キャラクターを優しく包み込み、慈しむ目線で描いていると思いました。
例えば、幼いトツ子のバレエの動きは可愛い。同年代の子に比べてもワンテンポ遅れているのだけど、それがまた幼いトツ子のかわいらしさやキャラクター性に結びついています。
また、トツ子やきみを観た時、デザインの思い切りの良さに驚きました。
トツ子の眉毛もまつげもまぶたも瞳も、繊細な線をいくつも重ね合わせた描き込みによって描画されています。しかし、その体型はスレンダーでスカートも膝丈で、リビドーを刺激するようには力を割いていないのです。キャラクターのシルエットは現実の人間に近く、だからこそ楽器の描写やバレエのダンスもリアルに描いても違和感がないのです。
ルイが演奏するテルミンという楽器は初めて知りましたが、弦もない中で空中の手の仕草だけで演奏する描写をギターやキーボードに劣らないリアルさで表現出来たのではないかと感じました。
リアルさとそれを上回るキャラクターへの優しさは、観ていて安心感があり、トツ子と退学したきみの事を否定しないシスター日吉子(CV新垣結衣)など、周囲の大人が暖かく見守っており、ストレスの多い世の中だからこそストレスのない作品を作りたいとインタビューで答えていた山田尚子監督の言葉も納得できる物でした。
しかし、きみやルイの保護者であるおばあちゃんやお母さん(CV井上喜久子)は、本当に秘密を知らなかったのか、考えてみると彼女たちは知っていて秘密を打ち明けてくれるのを待っていたのかもしれないと感じさせられました。例えば、おばあちゃんはきみに聖歌隊を引っ張っていける実力があると聞いたと話しているシーンがあります。他の方がツッコまれていましたが、生徒の退学に保護者に話が行かないわけはなく、裏ではお話を聞いていたりしたかも知れない、とは思っています。後述するライブのシーンで校長と腕を組んでダンスをしたのは、その場の感情の爆発ではなく、何か縁があったのではないか、と妄想しています。ルイのお母さんも果たしてパーカーで顔を隠したくらいで息子の姿が分からなくなるでしょうか?
聖ヴァレンタイン祭のライブのシーンは、観ていて作中の人物も楽しんでいる感じが伝わってきて良かったです。
はしゃぐシスターたちの姿は『天使にラブソングを』を思い出しますし、おばあちゃんの弾けた姿と校長先生と腕を組んでダンスをするシーンは、作中では全く面識のなかった二人の女性がつながる事に、そこまで楽しんでくれたんだ・・・と最近の言葉で言えばエモく尊かったです。
山田尚子監督と吉田玲子氏と並んで現在のアニメ界の女性作家で旬な方は、岡田麿里氏だと思いますが、『心が叫びたがっているんだ。』で描写された娘の演劇に衝撃を受ける母親とは対照的な学園祭で、こんなアプローチもあるんだと表現の幅を見せつけられました。
これからしろねこ堂のみんなの将来が気になりますが、エンドクレジットの後のSee you! は果たして上映後にyoutubeで「水金地火木土天アーメン」の動画を見てね、という意味なのか、それとも続編を制作する予定があるのかは気になります。
インタビューを見る限り、きみとルイの歌はそれぞれ自身の作詞をお互いが曲を付けたという事で、続編があるとすれば『たまこラブストーリー』のようなきみとルイの恋愛なんかがあっても良いような気もしますが・・・どうなる事でしょうか。
喧嘩と色事の無い娯楽作品
タイトルの言葉は
ある脚本家がお師匠様に言われた教えから
「芝居が持たなくなったら喧嘩か色事を入れるんだよ」
その言葉にあるように
多くの娯楽作品では
バトルやラブストーリー(またはエロ)が大きな売りになる
特に最近の多くの大ヒットアニメ映画がそうだし
だが本作には見事にそれらが無い
メインキャラもサブキャラも
みんな平和的
トツ子がきみを寮に泊めた問題も
労働奉仕で済んじゃうし
メイントリオが男1人女2人だと
普通はトライアングラーであわやバンド解散とかなるが
本作は全くそんなことは無いし
合宿しても全くエロい展開にはならないし
事件らしい事件も無く
クライマックスは教会でライブ
尼さんが踊りまくるのは
「天使にラブソングを」か「ブルースブラザーズ」辺り
意識したのかも知れない
ルイが船で去るシーンでは
ルイが海に飛び込まないか焦った
(ヴァイオレット・エヴァーガーデンじゃねえよ!w)
京アニ出身の山田尚子監督ということもあってか
絵がとにかく綺麗
カチッとした感じではない
ほんわかした画風は「リズと青い鳥」を想起させる
あと主人公が人を色で見えるという設定のせいもあり
色使いがまた淡くて綺麗
個人的にはまた京アニに戻って来て欲しいとも思うけど
本作見てからは監督は京アニ流を日本アニメ界で布教する為に
旅立ったと認識することにした
そんな訳でとても平和的な秀作
物凄い感動ではないが
ほんわかいい気持ちにさせる
ただ最近の大ヒットアニメで
感動した泣いたと騒いでる層には
良さが理解出来ないかも知れない
濃い味付けのインスタント食品や総菜に慣れた人が
京風の上品な味が薄味と感じるように
期待はずれ。ただのよくあるくだらん青春もの。
人の色が見えるというストーリーが楽しそうなので劇場で鑑賞したが、
色が見える描写が少ない。表現の仕方が薄っぺらい。そしてやっと「何色だ」と言ったと思ったら対してそこに深い意味はなかった。
一体何が言いたい映画なのだ。
バンドの男の子がもう思春期のいい歳なのに、女の子に対して距離感近くてなんか天然すけこましで普通に気持ち悪い。
そして髪をちゃんと切れ。
あと主人公の女の子が微妙に太ってるのがなんか嫌だった。
ぽっちゃりの天然はなんか腹立つからやめた方がいい。
主人公が細くてスタイル良かったらまたちょっと違ってただろうに。
全体的にそこらへんの中身のないほのぼの青春アニメ系で、劇場料金で観る価値はなかったかもしれん。。
変えられないものに折り合いを付けていく
予告の曲で一気に引き込まれ、前々から気になってはいたものの滑り込みの鑑賞になってしまった。良い意味で期待通り、なおかつ想定していた展開と違い少し驚いた。
悩みを抱えた少年少女3人の物語といえば必ずと言っていいほど心の沈む展開があるが、この作品にはそれがなくとても優しい物語だった。僅かばかりの人物らの心の痛みは秘密を抱える辛さを柔らかく伝えてくれる。
秘密を抱え込んでしまう人たちの背中を優しく押してくれるような作品でとても心が温かくなった。
秘密を抱えていると、どうしても心も抱えるものも重くなっていくもので…吐き出してしまえば思っていたより周りの反応は優しかった、なんてことは現実でもままあること。
本作は変えられないものとどう向き合っていくかを大きなテーマとして掲げているように感じる。
人が色で見えるトツ子の祈り「変えることのできないものについて…」は人の色が見えるという自分の特性を疎ましく思った上での祈りかと考えたが、意外にも前向きに受け入れている様子が見て取れる。
しかしながら自身の特性を内に秘めたまま日常を送るさまは自身と他者の間のギャップを確かに映している。
きみの秘密である中退は、自己評価と他者の評価のギャップによって引き起こされたものだった。祖母に打ち明けられず、負い目を感じながらもなあなあにしながら過ごすさまは、親に言いづらい事を抱えながらもひた隠しにした幼い頃の自身をみているようでむず痒くなった。
ルイの親の期待と自身のやりたいことの板挟みにあいながらもひたすらに自身の音楽の道を一つ一つ、中古屋を巡り、古本屋を巡りと積み上げていく姿はとても眩しく映った。
物語を通してみるとトツ子は自身の特異性、きみは自身の意志、ルイは医者の息子という出自、これらが彼らにとっての変えられないものだろう。
トツ子は秘密の共有を経て、人に合わせ特性を隠す生き方から自身をようやく表に出したことで自分の色が見えるようになったのだと思う。
きみは単純に祖母に自身の気持ちを伝え負い目を乗り越えた。また、ライブ前には友人らの変わらない態度に改めて気づくことがあったのだろう。
ルイは自身の変えられない出自を受け入れながら音楽も楽しむ、初期と変わらないスタンスながらも確実に前を向いている、そんな印象を受けた。
秘密の共有以前以後で行動自体に明確な変化はないが、それでもどこか自己肯定感を持って終わったように感じる。
もとより彼らは最初の一歩を踏み出すという一番大変な行程を終えているようにも思う。トツ子は自身の特性に関しては既に踏ん切りがついている様子、きみは中退というとてつもなく大きな一歩を踏み出したあとだ。ルイは楽器の練度からみて音楽を追うことをやめる気は毛頭ない。しかもバンドを組むという唐突な提案にも踏み出せる勇気もある。最初からある意味で決着はついていた。
ただ、心を軽くするあと一歩、秘密を打ち明けることができていなかっただけなのだ。この心を軽くするための一歩の重要性をこの作品は教えてくれたように感じた。
唯一気になったところはルイくんの万能さだろう。楽器を奏でることは当たり前、勉強も申し分なく医者志望、バンド云々も彼が発端、さらには離島の古教会という雰囲気バッチリな場所の提供。完璧すぎる。トツ子の特異性も彼の前では無力だ。ルイくんの持つガラケーには親の圧力があったのかなどと考えてみたり、抜け道としての勉強用のパソコンという口実を作ったりしたのかな、などと邪推も捗る。イケメン高身長知的メガネ穏やかジョン・コナーなんて属性が盛りすぎもいいとこだ。
変えられないものに時折立ち止まって考えてしまう自分にはとても刺さった映画だった。重い展開を苦手とする自分にはとても受け入れやすい、穏やかな気持ちで観れる今作はとても好みの作品だった。
キリスト教のミッションスクールという舞台も全体の雰囲気に加えて、過ちを犯したあとのシスターのスタンスなど考えさせられるものが多かった。最後のライブシーンのノリノリシスターなんかは「天使にラブソングを」を思い起こさせたがあれはやはり狙っているのだろうか。
近年まれに見る面白くない映画でした。。
全257件中、21~40件目を表示















