きみの色のレビュー・感想・評価
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皆いい子で人間ドラマがない。絵が綺麗なだけならイラストで充分
絵はため息が出るほど美しい。演出もセンス抜群。でもキャラクターとストーリーが弱すぎた。
登場人物が全員いい人だから葛藤が生まれない。キャラ同士の相克がない。最初からみんな仲良し。親に対して秘密があっても、親もいい人だからどうせ分かってくれると話が読めてしまう。
後半はひたすらあくびが出た。
劇中歌がダサいとかカッコイイとか正直どうでもいい。最初から大した悩みも乗り越えるべき困難も何もなく、周りの大人も先回りして察して分かってくれる。これじゃ全くドラマが深まらない。こんな話は語る価値がない。
何も主人公と対立するのが悪人である必要はない。価値観や主張が違えば利害がぶつかる。それだけでいいのにみんな考える事が一緒。
平家物語が面白かったのは美しい絵にキャラクターの相克がしっかりと描かれていたから。オリジナルだと京アニっぽいぬるい内容になってしまうというなら、これからは原作モノでやってほしい。
リアルな描写とそれを包み込む優しさ。
[あらすじ]
他人持つ「色」が見えるミッション系の女子校の寮生の日暮トツ子(CV鈴川紗由)は、同級生の作永きみ(CV高石あかり)の持つ美しい青色に惹かれて彼女に関心を持つ。
高校を退学したきみを探したトツ子は再会した古書店しろねこ堂で、きみの奏でるギターの音色に惹かれ、同じく彼女のギターに惹かれた影平ルイ(CV木戸大聖)とともに、バンドを結成する。
ルイが暮らす離島での小さな教会が、バンドの練習場所だ。行き帰りのフェリーでの船酔いや慣れないピアノの演奏を練習する中で、トツ子は天体の授業を元に作曲のインスピレーションを得て、バンドは曲の完成を目指していく。
一方で、きみは同居するおばあちゃん(CV戸田恵子)に高校を退学した事を言い出せず、島で唯一の診療所の息子であるルイは肉親に音楽に熱中している事を秘密にしていた。
「僕たちは、好きと秘密を共有しているんだ」
バンド活動は周囲との秘密の中で進行していくーー。
[所感]
素晴らしい作品を観ました。
四季を通してしっかりと描写して、光と色に関する解説は実験的な描写もあり、迫力のある天体の描写もあり。
しかし、この物語はトツ子の他人の色が見えるという能力も特に超常的な展開を見せることはなく、それぞれの成長と別れに着地します。
この作品のすごいところは、現実の美しい風景を描写し、しかしアニメならではの美しい箱庭として成立させる事に注意を払い、完成させた事でしょう。
パンフレットやエンドロールでは、ロケ地が長崎市や五島列島である事が明記しているけれど、教会がなければ、日帰りできる離島があり、市電が走る瀬戸内地方だと誤解する事もできるでしょう。なにしろ、トツ子の通っている高校の名前も出てこないのです。
山田尚子監督はこの作品を描くとき、キャラクターを優しく包み込み、慈しむ目線で描いていると思いました。
例えば、幼いトツ子のバレエの動きは可愛い。同年代の子に比べてもワンテンポ遅れているのだけど、それがまた幼いトツ子のかわいらしさやキャラクター性に結びついています。
また、トツ子やきみを観た時、デザインの思い切りの良さに驚きました。
トツ子の眉毛もまつげもまぶたも瞳も、繊細な線をいくつも重ね合わせた描き込みによって描画されています。しかし、その体型はスレンダーでスカートも膝丈で、リビドーを刺激するようには力を割いていないのです。キャラクターのシルエットは現実の人間に近く、だからこそ楽器の描写やバレエのダンスもリアルに描いても違和感がないのです。
ルイが演奏するテルミンという楽器は初めて知りましたが、弦もない中で空中の手の仕草だけで演奏する描写をギターやキーボードに劣らないリアルさで表現出来たのではないかと感じました。
リアルさとそれを上回るキャラクターへの優しさは、観ていて安心感があり、トツ子と退学したきみの事を否定しないシスター日吉子(CV新垣結衣)など、周囲の大人が暖かく見守っており、ストレスの多い世の中だからこそストレスのない作品を作りたいとインタビューで答えていた山田尚子監督の言葉も納得できる物でした。
しかし、きみやルイの保護者であるおばあちゃんやお母さん(CV井上喜久子)は、本当に秘密を知らなかったのか、考えてみると彼女たちは知っていて秘密を打ち明けてくれるのを待っていたのかもしれないと感じさせられました。例えば、おばあちゃんはきみに聖歌隊を引っ張っていける実力があると聞いたと話しているシーンがあります。他の方がツッコまれていましたが、生徒の退学に保護者に話が行かないわけはなく、裏ではお話を聞いていたりしたかも知れない、とは思っています。後述するライブのシーンで校長と腕を組んでダンスをしたのは、その場の感情の爆発ではなく、何か縁があったのではないか、と妄想しています。ルイのお母さんも果たしてパーカーで顔を隠したくらいで息子の姿が分からなくなるでしょうか?
聖ヴァレンタイン祭のライブのシーンは、観ていて作中の人物も楽しんでいる感じが伝わってきて良かったです。
はしゃぐシスターたちの姿は『天使にラブソングを』を思い出しますし、おばあちゃんの弾けた姿と校長先生と腕を組んでダンスをするシーンは、作中では全く面識のなかった二人の女性がつながる事に、そこまで楽しんでくれたんだ・・・と最近の言葉で言えばエモく尊かったです。
山田尚子監督と吉田玲子氏と並んで現在のアニメ界の女性作家で旬な方は、岡田麿里氏だと思いますが、『心が叫びたがっているんだ。』で描写された娘の演劇に衝撃を受ける母親とは対照的な学園祭で、こんなアプローチもあるんだと表現の幅を見せつけられました。
これからしろねこ堂のみんなの将来が気になりますが、エンドクレジットの後のSee you! は果たして上映後にyoutubeで「水金地火木土天アーメン」の動画を見てね、という意味なのか、それとも続編を制作する予定があるのかは気になります。
インタビューを見る限り、きみとルイの歌はそれぞれ自身の作詞をお互いが曲を付けたという事で、続編があるとすれば『たまこラブストーリー』のようなきみとルイの恋愛なんかがあっても良いような気もしますが・・・どうなる事でしょうか。
喧嘩と色事の無い娯楽作品
タイトルの言葉は
ある脚本家がお師匠様に言われた教えから
「芝居が持たなくなったら喧嘩か色事を入れるんだよ」
その言葉にあるように
多くの娯楽作品では
バトルやラブストーリー(またはエロ)が大きな売りになる
特に最近の多くの大ヒットアニメ映画がそうだし
だが本作には見事にそれらが無い
メインキャラもサブキャラも
みんな平和的
トツ子がきみを寮に泊めた問題も
労働奉仕で済んじゃうし
メイントリオが男1人女2人だと
普通はトライアングラーであわやバンド解散とかなるが
本作は全くそんなことは無いし
合宿しても全くエロい展開にはならないし
事件らしい事件も無く
クライマックスは教会でライブ
尼さんが踊りまくるのは
「天使にラブソングを」か「ブルースブラザーズ」辺り
意識したのかも知れない
ルイが船で去るシーンでは
ルイが海に飛び込まないか焦った
(ヴァイオレット・エヴァーガーデンじゃねえよ!w)
京アニ出身の山田尚子監督ということもあってか
絵がとにかく綺麗
カチッとした感じではない
ほんわかした画風は「リズと青い鳥」を想起させる
あと主人公が人を色で見えるという設定のせいもあり
色使いがまた淡くて綺麗
個人的にはまた京アニに戻って来て欲しいとも思うけど
本作見てからは監督は京アニ流を日本アニメ界で布教する為に
旅立ったと認識することにした
そんな訳でとても平和的な秀作
物凄い感動ではないが
ほんわかいい気持ちにさせる
ただ最近の大ヒットアニメで
感動した泣いたと騒いでる層には
良さが理解出来ないかも知れない
濃い味付けのインスタント食品や総菜に慣れた人が
京風の上品な味が薄味と感じるように
期待はずれ。ただのよくあるくだらん青春もの。
人の色が見えるというストーリーが楽しそうなので劇場で鑑賞したが、
色が見える描写が少ない。表現の仕方が薄っぺらい。そしてやっと「何色だ」と言ったと思ったら対してそこに深い意味はなかった。
一体何が言いたい映画なのだ。
バンドの男の子がもう思春期のいい歳なのに、女の子に対して距離感近くてなんか天然すけこましで普通に気持ち悪い。
そして髪をちゃんと切れ。
あと主人公の女の子が微妙に太ってるのがなんか嫌だった。
ぽっちゃりの天然はなんか腹立つからやめた方がいい。
主人公が細くてスタイル良かったらまたちょっと違ってただろうに。
全体的にそこらへんの中身のないほのぼの青春アニメ系で、劇場料金で観る価値はなかったかもしれん。。
変えられないものに折り合いを付けていく
予告の曲で一気に引き込まれ、前々から気になってはいたものの滑り込みの鑑賞になってしまった。良い意味で期待通り、なおかつ想定していた展開と違い少し驚いた。
悩みを抱えた少年少女3人の物語といえば必ずと言っていいほど心の沈む展開があるが、この作品にはそれがなくとても優しい物語だった。僅かばかりの人物らの心の痛みは秘密を抱える辛さを柔らかく伝えてくれる。
秘密を抱え込んでしまう人たちの背中を優しく押してくれるような作品でとても心が温かくなった。
秘密を抱えていると、どうしても心も抱えるものも重くなっていくもので…吐き出してしまえば思っていたより周りの反応は優しかった、なんてことは現実でもままあること。
本作は変えられないものとどう向き合っていくかを大きなテーマとして掲げているように感じる。
人が色で見えるトツ子の祈り「変えることのできないものについて…」は人の色が見えるという自分の特性を疎ましく思った上での祈りかと考えたが、意外にも前向きに受け入れている様子が見て取れる。
しかしながら自身の特性を内に秘めたまま日常を送るさまは自身と他者の間のギャップを確かに映している。
きみの秘密である中退は、自己評価と他者の評価のギャップによって引き起こされたものだった。祖母に打ち明けられず、負い目を感じながらもなあなあにしながら過ごすさまは、親に言いづらい事を抱えながらもひた隠しにした幼い頃の自身をみているようでむず痒くなった。
ルイの親の期待と自身のやりたいことの板挟みにあいながらもひたすらに自身の音楽の道を一つ一つ、中古屋を巡り、古本屋を巡りと積み上げていく姿はとても眩しく映った。
物語を通してみるとトツ子は自身の特異性、きみは自身の意志、ルイは医者の息子という出自、これらが彼らにとっての変えられないものだろう。
トツ子は秘密の共有を経て、人に合わせ特性を隠す生き方から自身をようやく表に出したことで自分の色が見えるようになったのだと思う。
きみは単純に祖母に自身の気持ちを伝え負い目を乗り越えた。また、ライブ前には友人らの変わらない態度に改めて気づくことがあったのだろう。
ルイは自身の変えられない出自を受け入れながら音楽も楽しむ、初期と変わらないスタンスながらも確実に前を向いている、そんな印象を受けた。
秘密の共有以前以後で行動自体に明確な変化はないが、それでもどこか自己肯定感を持って終わったように感じる。
もとより彼らは最初の一歩を踏み出すという一番大変な行程を終えているようにも思う。トツ子は自身の特性に関しては既に踏ん切りがついている様子、きみは中退というとてつもなく大きな一歩を踏み出したあとだ。ルイは楽器の練度からみて音楽を追うことをやめる気は毛頭ない。しかもバンドを組むという唐突な提案にも踏み出せる勇気もある。最初からある意味で決着はついていた。
ただ、心を軽くするあと一歩、秘密を打ち明けることができていなかっただけなのだ。この心を軽くするための一歩の重要性をこの作品は教えてくれたように感じた。
唯一気になったところはルイくんの万能さだろう。楽器を奏でることは当たり前、勉強も申し分なく医者志望、バンド云々も彼が発端、さらには離島の古教会という雰囲気バッチリな場所の提供。完璧すぎる。トツ子の特異性も彼の前では無力だ。ルイくんの持つガラケーには親の圧力があったのかなどと考えてみたり、抜け道としての勉強用のパソコンという口実を作ったりしたのかな、などと邪推も捗る。イケメン高身長知的メガネ穏やかジョン・コナーなんて属性が盛りすぎもいいとこだ。
変えられないものに時折立ち止まって考えてしまう自分にはとても刺さった映画だった。重い展開を苦手とする自分にはとても受け入れやすい、穏やかな気持ちで観れる今作はとても好みの作品だった。
キリスト教のミッションスクールという舞台も全体の雰囲気に加えて、過ちを犯したあとのシスターのスタンスなど考えさせられるものが多かった。最後のライブシーンのノリノリシスターなんかは「天使にラブソングを」を思い起こさせたがあれはやはり狙っているのだろうか。
近年まれに見る面白くない映画でした。。
映像も音楽も良かった、内容は薄かった
映像が綺麗で、特にとがった癖のある登場人物も出てこないし、
逆境という逆境もなくて気楽にゆったり観れる映画。
でも逆にそれだけ平和なのが無味無臭な仕上がりになってしまっている。
3人のバンドメンバーそれぞれに人に言いにくい悩みがあるのだけど、
人が色で見える子は自分の色が見えないと悩んでいたけど、
見えない事で何が問題なのか解らないし、
察するに幼少時代から人と違う事で軋轢が生じて、
ちょっとした差別やいじめを受けてたのかもと邪推するけど、
劇中で彼女の口からそんな悩みが出される事はなかった。
足が綺麗なギターの子も学校を辞めた理由が全く解らない、
祖母にそのことを知られるのを恐れているのだけが一番の悩みで、
辞めて本当にやりたい事があるとか、神が信じられなくなったとかの理由もなく薄い。
重箱の隅をつつくけど、そもそも生徒が学校辞めるってなったら祖母に連絡が行って当然だと思うんだけど、規律に厳しそうな学校だし。
テルミン男子も医者よりもやりたい事があるのかもしれないけど、
全くそれも語られないし、影が薄い。
でも最後の方は全員スッキリした感じになって学園祭の集大成のバンド演奏。
過剰にキャーキャー盛り上がるわけでもなく、静かに盛り上がる感じで、
曲もシリアスな感じからポップな曲まで幅があって良かった。
でもそこで初めてギターの子がボーカルなんだって知ったぐらいバンド要素も薄い。
結成してたのは知ってたけど気付いたら舞台に上がってた。
思い返すとこの映画結局何が見せたかったのが解らない。
ふわっとした波だけ立てて、最後はバンド演奏で感動したでしょ?って言われた気がしてならない。
最後に自分の色が見えたと言われてもそれが何となってしまう。
もっとおぞましいぐらいの汚い色の人を登場させて、その人との対比で綺麗な色の人の意味を教えてほしかった。
目を引く要素が色々出て来てつまらなくはないのだけど、それに対するアプローチが薄くて物足りなさを凄く感じる映画。
つまらなすぎる。
これまで観た映画の中でも、ワースト3に入るほどのつまらなさでした。まず、この映画を通して何を伝えたいのかが全くわかりません。山田尚子監督作品ということで期待して観に行きましたが、途中で退席したくなるほどでした。時間とお金を返してほしい。
エンドロールを見て、脚本が他の方であったと知り「なるほど」と思いましたが、それでも多くのスタッフが関わっているはずで、誰もこの脚本に対して異議を唱えなかったのかと疑問が残ります。
主人公の言動が終始理解不能なうえ、例えばキミの高校を辞めた本当の理由が不明のままであったり、男の子が医学部進学を目指していてそれが音楽の足枷になっているのかと思いきやそうではなかったりと、それぞれの悩みやキャラクターの個性が薄いまま、全く物語がいきいきとしていません。悩みを乗り越える描写もなく、キャラクター設定が浅すぎて感情移入ができず、途中で眠くなりました。
また、長崎の美しい風景を描きたかったのかもしれませんが、キリスト教系女子校の設定が映画の内容に意味を持たせず、主人公の「他人の色が見える」という設定も全く活かされていません。恋愛、進路、友情など多感な時期の要素を詰め込みすぎた結果、どれも中途半端に終わってしまい、映画として大失敗しています。むしろ意味不明なシーンで無理に尺を引き延ばしているように感じ、観客を侮辱しているのかとさえ思いました。例えば、冒頭から「自分の色が見えない」と繰り返していたのに、最後には何の伏線もなしに突然見えるようになったり、謎のバレエシーンが挿入されたりと、意図の伝わらないシーンで構成されており、途中から笑ってしまうほどです。結局、脚本家の自己満足に終始した作品になっており、作画や声優が良いだけに非常に残念です。
最後に、主人公には「人を色で判断するな」と言いたいですし、もっと寮の友達も大切にするべきではないでしょうか。
優しく平坦であることの良さは理解しつつ低評価
監督のこれまで作られた作品のファンだったのでいち早く劇場へ。
情景や人物描写の美しさは期待以上でした。
特に最後のライブシーンは素晴らしく、劇を締めくくるにあたり、かなり捲り上げた感じがあったように思います。
ですが、私はこの映画を高く評価できませんでした。
その理由をあらすじとともに以下に記載します。
【あらすじ】
主人公のとつこは人物の「色」が見える。つまらなく言ってしまえば共感覚やオーラのようなものだろう。
このことが理由で人とは少し違った世界の見え方をしているため、やや人間関係では不器用なところがある。
そんな中、学校で出会った美しい青色を持つきみに憧れを持ち、訳あってバンドを組むことになり、美しい緑色をもつルイをメンバーに加えて互いの心を自己開示をしながらこっそりと練習をし始める…というのが大筋。
評価できないと感じた点:
①どうしても物語に浅さを感じてしまうこと。
この映画の大切な要素として、悪人が登場しないという点がある。
とつ子の優しさや純真さも相まって、劇中を一貫して事件は大きくは起こらず、微笑ましいシーンの数々も私は楽しめたつもりだ。
一方で、物語としてどうしても起伏に欠ける構成とも言えるように感じた。
きみやルイは親には言えない隠し事があるのだが、物語としてはこの要素が弱く、見るものを引き込むには不十分な仕掛けであるように思う。
要は彼らは周囲や親からの期待に迎合出来ないのだ。
それは思春期に誰もが陥りがちな、一種の通過儀礼であり、この映画は現代の若者の、脆くて過敏な彼らの感受性を監督の視点から描いたものだと解釈した。
私はこの理解の上で、やはりストーリーには起伏が必要であったように思う。
上記の通り、穏やかで平坦なところがリアルっぽく感じられるのだが、それにしては台詞回しが芝居がかっていて妙に没入できない。
また、彼らの持つ暗い陰の成分が中途半端にチラつき、穏やかな物語が良さなのを理解した上でも全体がぼんやりしすぎている印象を持った。
②ルイに成分を詰め込みすぎて没入しずらい
バンドの唯一の男性メンバーであるルイに属性を詰め込みすぎではないだろうか。
小さなことに感じられるかもしれないが、かれが演奏する楽器としてテルミンを出す必要はなかったのではと思う。
音楽を大きなテーマとして扱う上で、楽器や音色の持つ意味について、もう少しパリッとしたテーマを打ち出しても良いのかな、と言うのが率直な感想だ。
乱暴な言い方かも知れないが、テルミンの音色は今作に意味をもたらさなかっただけでなく、むしろやや浮いている、ノイズになっているように感じた。
肝心なシーンで弾かれるテルミンが妙に魔が悪く、それなら単純にキーボードのほうが良かったなと思ったシーンが複数ある。
また、ルイ自体が物語上での舞台装置的な立ち位置を持ち、彼の言動が無理に芝居がかっている感じが終始見受けられた点も残念だった。
総じて、話もビジュアルも美しさを感じるが、映画としてはやや散漫出会ったように思う。
私が小賢しく老いたために、本作の良さだけを見つめられず、このように起承転結や小道具の意味を考えてしまっている可能性があるのが少し忌まわしいが、正直な感想として書き残したい。
素敵な青春映画
色について
終盤でトツ子が自分の色を認識した時、どうしてそうなったか分かりませんでした。
もしかしたら、バレエをやりたいけど、上手くできないからと辞めてしまったことに対して、自分のやりたいこと(バレエ)を通すことで分かったということでしょうか。
その理由でいくと、高校生の他の生徒達に色がついてるのは既にやりたいことを見つけてるのかな???
ルイが将来に向けて船旅に出る時、様々な色の紙テープが強調されてたのは、色んな目的で旅立つ人々の想いを色にしたのかもしれません。
映画は最後に歌で締められますが、音楽をやってない自分でも、音楽の良さを感じたり、良い締めくくりを感じることができました。
有難うございました。
美しい映像美と等身大の登場人物
色が見える、不思議な女の子の物語。
物語における、大きな起伏というものがない。そこにあるのは小さな起伏だけ。だけど、それが作品に上手くマッチしていて心を震えさせられました。
誰一人とて悪い人がいない"優しい世界"というものをそう感じました。心穏やかな気持ちで見れて、とても良かったです。
祈り光つづきをもっときかせて
主の元あるいわ聖母マリアの元、運命に導かれて進む物語。大好きな山田尚子×吉田玲子コンビだがキービジュアルに惹かれずあまり期待していなかったのだけど…始まってすぐに“最高かよ”と思った。
人を色で感じ取る不思議少女、讃美歌、聖書の言葉、白猫、古本屋、無邪気な文系美少年、テルミン、島に一つしかない病院、ジゼル、ロザリオ、中退する女子校のミューズ、スノードーム、ろうそくの灯り…それぞれが絡み合って混ざり合って表現されるダンス讃美歌…。
自分たちの大好きな物を詰め込んだスクラップブックのような雑誌オリーブのような作品。
物語でなく感性で心を揺さぶる手腕はいつもながらお見事。二人でしかできない仕事だと思う。
あと、サイエンスSARUもいつもながらあっぱれでした。
色々な青春があっていい
青春を題材にした小説・ドラマ・映画、正直大嫌いです。これらのストーリに共通するのは、決まって、クラスの中心的な人物、友達がたくさんいて、彼女もいる、毎日が充実している、こういう人が主人公になっています。そして、そんないい所ばかりの主人公でも、こんな悩みがあって、こんな所に苦労しています、というストーリーです。
なので、大嫌いです。そんな主人公、どんだけ世の中にいるのでしょうかね?
この映画は、なんと、そんな画一的な青春物語ではないです。主人公の女の子を見てもらうとわかるのですが、見た目も含めて、普通の女の子。友人も少なく、どちらかというと暗い性格。そんな女の子が、思い切って人生を踏み出すことから、物語が進んでいきます。
ただ、どうしても商業的にでしょうか?脇を固める女の子は、かわいい子、男の子はイケメンになっています。まあ、仕方ないですかね。
ありきたりの青春物語が嫌いな方、色々な青春があるんだな、と気づかされる作品です。
共感覚の少女に救われる優しい物語
主人公のトツ子は他人を見ると色がついて見えるという少女。
おそらく、音が色に見えるタイプの共感覚の持ち主。実際に存在する能力です。他人の発する声や音を色として感じているのだと思う。
ただ、トツ子はそれを共感覚などと具体的に考えているわけではなく、ぼんやりと不思議だなぁと受けとめている。ただ、世界をそういうものだと優しくおおらかに受けとめている。
この映画はトツ子の見ている優しく美しい世界を、彼女の目線で描いている。
だから、他のふたりの詳しい背後の設定や、心の中の葛藤は作品中にはあまり描かれていないのだと思う。トツ子はそんな所を見ていないから。
ただ、目の前にいる友達を、ただ、そのまま受けとめている。「きみちゃん(ルイくん)の色はきれい」と。
だから、特に友達の問題を解決しようとはしない。彼女はわかっているのだろう。「きみちゃんの色はきれい」だから「たぶん大丈夫」と。
他のふたりには悩みがあるが、トツ子のありのままを受けとめてくれる優しさに、自然と心が癒されていく。問題は解決したわけでは無いが、受けとめて立ち向かえる様子が最後に描かれる。
旅立つルイくんに向かって叫ぶ、きみの「がんばれー!」は、きみが自分自身にも叫んでいるのだと思う。
同じように今の自分と将来への不安を抱えるルイくんと、ありのままの自分を受けとめてくれるトツ子に出会い、立ち止まっていた自分自身に「がんばれー!」と言える強さを持てたのだろう。
祖母に知られずにどうやって退学できたのか、とか、退学できたとしても田舎町の小さなコミュニティで祖母に隠す事ができるのか、などを言うレビューもあるが、きみの祖母、そしてルイくんの母は彼らの悩みも問題も気付いていた様に見えた。知っていて彼らが話してくれるのを待っていた様に描かれていたと思う。
だから、最後のライブシーンで元気な姿を見て、きみの祖母もルイくんの母も喜んでいたのだと思う。
とても良い作品でした。今年見た映画の中でも一番良かったかも。
カラフル × フュージョン
丁寧に時間をかけて混ざり合い、融け合っていく物語。
きみのルイに対する色の変化は映像には出てこないものの、トツ子の反応から魅力的な色の変化が「視えた」ように思える。また、ルイの男性性と女性性の垣根を感じさせない多孔性ある人柄は「中間色」のように感じた。
物語としては魅力的なのだが、楽曲が少なく、ワンステージで終わってしまうのは少し物足りなかった(せめてアンコール曲が1曲欲しかった)。
また、エンドロール後がおわりでなく、"See you"なのが、ルイの旅立ち(門出)に対する再会を予見させていて、印象的だった。
映画タイトル通り、物語が動き出すタイミングは、きみの色に出会った時から始まるのも象徴的だった。
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