波紋のレビュー・感想・評価
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目を背け逃げる人たち
福島の原発事故が起こったとき、東日本に住む人たちはどうしようもない不安を感じていた。これからどうなるんだろうと。他の地域に引っ越した人もいたが、そんなことできたのは一部の人たちだけ。そんなことを思い出させる冒頭。
夫が失踪し宗教にハマるという女性を描いた作品。宗教は、つらい現実から目を背けたい人がハマる(という個人的偏見)ということを改めて教えてくれる。でもあの家族は皆、何かから目を背け逃げ出したってこと。それは悪いことではない。大なり小なり逃げておかないと心が持たない。
それなりに考えさせられ、ちょっと笑える。悪くはないんだけど、大きな感動は待っていなかった。個人的には、波紋が生じる水面に立ちながらセリフを話すシーンがなんとも心地悪かった。いい意味ではなく悪い意味で。大して効果的だったようには思えなかった。
意外と豪華な役者が出演していた本作。主演の筒井真理子もいいが、光石研がさらにいい。微妙に嫌な感じでダメな男がとても似合っていた。帰ってきてからの食事シーンは絶妙な嫌悪感を覚えるライン。妻の心が乱れるのがよくわかる。あと、ムロツヨシの出演はわからなかった。そうか!あいつがそうか!と消去法では思い当たるけど。なんかムロさんに負けた気がしてしまう。
筒井真理子名演・怪演 「波紋
「かもめ食堂」の萩上直子監督の
最新作は、ブラックユーモアに
満ちたホラーテイスト。
震災、放射能、介護、新興宗教、
障碍者差別と社会派カードを並べすぎた
感はゆがめないが、多分監督の目的は
そこじゃない。
一見平等のように映るが、ますます世の中
大変、女はつらいよ、解放させてあげなよ、と
筒井真理子の抑えた演技に託し、呟いていく感じだ。
キャラも、キャスティングも面白い。
放射能が怖くて家も捨て逃げ出した癖に、
ガンになって「治療費助けてくれ」と
頭を下げるダメ親父に、光石研。
新興宗教の怪しいリーダにキムラ緑子。
同メンバーの信者、江口のりこ。
筒井真理子の勤めるスーパーの清掃員に
木野花。
スーパーにクレームをつける爺さん、
柄本明。
筒井真理子の息子が連れてきた
したたかなろうあ者、
津田絵里奈(彼女もろうあ者だそうです)
他にもワンシーンだけ出るムロツヨシなど
一癖も二癖もあるキャスティング。
変な映画だけど、僕は結構笑えたし
好きでした。
信じることは、揺るぎない幸せの始まり
周りからみたら、信仰に凝ってしまったヤバい主婦。だけど、本人は信じることで、辛うじて心の平静を保っているのだなあ。失踪して帰ってきた旦那、思い通りにならない息子、ストレスばかりの職場、、、。やっと気の合うと思った人も、やはり孤独な人生を抱えているし。そんな心を乱す波紋がどんどんと広がっていき、壊れやしないかとヒヤヒヤもする。奇異で奇妙ではあるけれど、犯罪に走らないだけマシなのかもしれない。
枯山水は、ないのにある、あるのにない「水」を表現するもの。心の中にある悪をないものに、ないもの(赦しや幸福感や)をあるようにするのも、信じることから始まるのか。ラストの舞いは、吹っ切れた彼女ととらえていいのか、とうとう壊れたとみたのがいいのか。本人しかわかるまい。
ままならぬ
あの夫はオレだ!
味噌汁を音をたてて吸う、クチャクチャ食べる、当然のように食事が出ると思っている、それに妻
は愛想を尽かしている。結婚した人の三組のうち一組は離婚している現実、その予備軍ももっといるはず。宗教に走る人も多い。現実を鋭くついた良質な作品です。
恋愛、結婚、子どもを持つこと、家を建てることは割と簡単なのに夫婦が添い遂げることはどうしてこんなに難しいのでしょう。
最後のフラメンコのシーン、喪服のうち服がいつの間にか白から赤になっていましたが、どこからだったのかな?
それと余談ですが磯村勇斗とリーアム二ーソン(まったく関係ないですが)は映画出すぎ!大丈夫か!
こころ
川っぺりムコリッタでは「いのち」とか「たましい」を深く想起させてもらいましたが、今作では「こころ」に踏み込んだのかな?と思うとともに監督・脚本の荻上直子さん、この方の生い立ち・どのような経験を積まれてきた方だろうと、深く掘り下げてみたい気持ちが強くなりました。
さて、今作の、きっかけは東日本大震災ですが、発端は何でも良いのでしょう、何かでスイッチが入ることで心が「壊れる」・「逃げる」・「目を背ける」・「すがる」、人それぞれに心の移ろい方は様々。
観る人により受け止め方も様々かもしれませんね。しかし実の子供から「あのヒトは頭がおかしいから」と言われるのは悲しい。他人を赦すことは良いことだけど緑命会に集う人たちは寛容なのではなく高みの見物をしながら自分の心は殻の中、仕返ししなさいよと言ってくる木野花さんの心情が一番俗っぽくてしっくり来る気がするけど、彼女自信何かを放り出してしまっている、うーん難しいなぁ。
ワタシ的には枯山水に猫が入るだけでも自分の心を汚されたように思う主人公が、カメさんが歩いても微笑んで見られるようになったところに赦しの感情が芽生えた(それも信仰の力ではなくって)、そこに光明を見いだせたようで、なんだかホッとしました。
男と女
どこに話が向かうのか見えずにハラハラ
著名バイブレーヤー実力派の布陣で、穏やかなはずの日常に「波紋」が起きた時の心理状況を淡々と描く、なかなかシビアなお話。
実の父親の介護が嫌で仕方なかったところに、震災の原発事故で放射能が怖くて、家のことをすべて妻に押し付けて逃げだした夫が、癌になって帰ってくる皮肉さとか。
妻の、聾唖者に対するストレートな差別とか。
弱ったところに忍び込んでくる新興宗教とか。
身近な「嫌なことあるある」の羅列が痛々しく。
どこに話が落ち着くのかわからず、ハラハラしました。
どの作品でも、観る側に解釈・評価を委ねるのが常ではありますが、これはさらに「行間」が多く、自分が試されてるような気になりましたね。
若かった(18、9の)私に
筒井真理子さん、舞台を観ない私にとって彼女をきちんと認識したのは、80年代後半、「フジテレビの深夜枠ほぼ面白かった」時代のなかでもトップクラスの『IQエンジン(89)』。第三舞台の俳優さんが中心に出演されていて、大高さん、筧さん、勝村さん達ほどの出番時間はないものの、今どきなら問題発言になるとしても当時の私の思いを正確に文字起こしすれば「ん、いい女だな」と目ざとく注目したのがきっかけでした。
その後、たまにお見かけしても特に気に留めるほどのことはなかったのですが、久々に「やはり、この人すげぇな」と思い直したのが園子温総合監督のテレビドラマ『みんなエスパーだよ!(13)』。「(染谷さん演じる)嘉郎の母役」というとチョイ役かと思いきや、対する父役のイジリー岡田さんとの掛け合いの「エロい」こと。そんな風で、全く以て「衰えを知らない」なと思っていたら、また少し経って出演の映画、深田晃司監督の『淵に立つ(16)』、そして園監督の『アンチポルノ(17)』となかなかの問題作立て続けで衝撃の演技を魅せ、更には「50代の彼女の代表作」と言って過言ではなかろう、深田監督の『よこがお(19)』は他と比べようのない「怪演」で、『IQエンジン』の頃の若かった(18、9の)私に「君の眼は誤ってなかったぞ」と伝えてあげたい思いです(笑)。
と、前置きでかなりの文字数を稼ぎましたが、
今作『波紋』は(信じられない!けど)60代になった筒井さんの主演作。私にとっていつも「劇場鑑賞するか否(配信待ち)か」が当落線上(多くが「否」判断)の荻上監督作ですが、今回は筒井さん主演ということで悩まずチケット購入しました。
予告もほぼ観てない状態で鑑賞していると、まぁ次々と豪華出演陣で、この辺はやはり荻上さんの業界評価は高いのだろうと認識します。で、光石さん、柄本さんら男性俳優も間違いなく巧いのですが、やはり女性俳優さんがどなたも素晴らしく、特にベテランのお二人木野花さんとキムラ緑子さんがえげつない。また、見過ごせない一人が珠美役の津田絵理奈さん。グイグイくる演技で邦画もやれば出来ることを、この映画と荻上さんが証明しています。そして勿論、そんなメンツの中でも全く引けを取らない筒井さんの切れ味抜群な演技は見どころしかありません。
そんな感じで荻上さん、やはり監督として巧いことは認めざるを得ないのですが、脚本は今回ももう一押しが足りない印象で惜しい。ずっと「おかし味」の連続にもかかわらず、全体的に見て「面白かったか?」と聞かれると、結局「配信でもよかったかも」と思う程度の内容です。
とは言え、荻上さんファンが多いことも知ってます。あくまで個人的な感想ですので、どうか悪しからず。
絶妙に奇妙で笑えた
筒井真理子さんが唯一無二になってきた
筒井真理子さん、可愛いね。フランスの女優さん達が何歳になっても可愛いと思って観てたんだけど、筒井真理子さんがそんな感じになってきた。
プールで泳いでるときに「別の若い女優が登場するのかな?」と思ったら筒井真理子さんだったの。
表情の演技が多かったんだけど、笑うところから睨むところまで、どれもいいの。
内容を追いかけるというより、筒井真理子さんを観てたな。
そして出てくる女優がすごいね。
新興宗教のシーンでキムラ緑子が教えてて、よく見ると江口のりこと平岩紙がいるし。
パート先で知り合うのは木野花で、近所の奥さんが安藤玉恵。
女優の名前を並べたら、大体どんな映画か分かるよね。
映画の内容は、公式Webサイトに監督コメントがあるから、それ読めば分かるの。
それ読んで分かるなら、映画観なくていいじゃないかという気もするけど、やっぱり作品観た方が伝わりそうなものはあるね。
でも観てるときは、そこまで伝わんないんだよね。なんでかというと僕が男性だから。
女性が観たら「わかる」と共感するシーンは多いと思う。
これは観てる側の問題意識の低さが原因の大半ではあるんだけど、物語の造りが「わかりますよね」「わかります」と、無意識にだと思うんだけど、共感に頼ってるところもあると思うの。この辺ってどうしたらいいんだろうね。
観終わってから色々考えるとして、観てるときは筒井真理子さん観ていればそれでいいというのもあるから、観るのがいいと思うよ。
筒井真理子 色っぽいね💕
自立して、自由に生きろ、主人公!
やばい、泣くつもりはなかった。
いい映画だった、予想以上に。
自立していてこそ、誰かを支えることができるし、搾取される側にならずにすむ。
幸せは自分でつかむ時代になってきていると実感。
だれでも、何かのきっかけでぷつっと崩れる瞬間があるのかもしれない。
そんな時に、家族に限らず、互いに支え合える人間関係があればいいなと思った。
宗教を信仰することを否定はしないけれど、盲目的に信じて、ガラス玉みたいな目になるのはイヤだな。
私は、神様や人間、人工物ではなく、山や森に一番癒される。
日本の自然は最高です!
定期的に山に出かけての心身浄化は、お布施もいらなくてリーズナブルです。
最後のフラメンコ踊るシーン、よかった。
息子には息子の人生がある、主人公にも主人公の人生がある。
執着を手放して、人生を楽しんで欲しいものです。
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