波紋のレビュー・感想・評価
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痛快爽快の絶望エンタメ
社会問題になっている題材を中心にコメディも交えながら描いた痛快爽快の絶望エンタメ。主演の筒井真理子を中心に実力派揃いのキャスト陣の素晴らしい演技に引き込まれる。テンポが良くて誰もが共感できるような見応えある作品。
2023-105
波紋は人の数と同数で発生する
荻上直子監督作品。公開時見逃したが、予想通り直ぐにサンサン劇場で再映されたので鑑賞。
去年見た『川っぺりムコリッタ』が思っていた以上に心に残り好きだったので、本作はどのように料理されているのか興味津々で鑑賞しました。
個人的には『川っぺり~』の方が好きなテーマでしたが、本作は映画単体として面白く興味深く見させて貰いました。
よくあるハートウォーミング作品の紹介というか感想で「悪人が登場しない映画」とか「登場人物全て善人」とかの定型文がありますが、それを裏側から見たような皮肉を込めたブラックコメディという印象の作品でした。
人間なんて、全てが極悪非道の人間なんていないし、その逆の品行方正・清廉潔白な人間も現実では見たことないのに、映画の中ではどちらも存在します。
少し前に見た『パリタクシー』もそんな映画ではありましたが、節度が保たれていましたので良かったのですが、極端だと逆に鑑賞者のストレスにもなってしまいます。
そういう意味で本作はそうしたストレス解消の為の、悪人とは呼べないまでも、鈍感で空気を読めず自分勝手で自分の欲得優先の偽悪的・偽善的な日常の振る舞いに対しての摘発映画の様な気がしました。
本作ではそれがあくまでも主婦(主人公)目線ではありましたが、そうした自分に対する攻撃(暴力)的波動のことを本作では“波紋”として具象化していて、それは、鑑賞者の誰しもが実生活で経験することなのである程度共感出来て面白かったです。
私も見ていて(主人公の周辺にいる)こういう人達は絶対に心から信じられないし、私の実際の人生の中にも登場人物のような人間は一杯いたなぁ~って、次々と思い出していましたよ。
但し本作では、主人公も含め波紋は全ての登場人物から発生し他者に影響しているという事を映像で見せていました。
なので、相手にとっては自分が波紋を起こしている円の中心であるのかも知れないのだという事も気づかせてもくれていました。
正直言って私も決して多くの人に好かれるタイプでもないし、自分でも気づかない部分で人を傷つけているのかも知れないという自信のなさも強くある人間なので、本作は波紋のシーンで共感と反省と半々の作品となりましたよ。
ということで、本作は“大好きな作品”とは言いませんが、大いに刺激的で勉強にもなり、今後ますます荻上直子監督作品から目が離せなくなりました。
いくつかの波紋が人生をいろどる。
やはり、みんなそれぞれ、自分の地獄を持っているんだな。
波紋がたくさんあった。
見える波紋と。見えないけど、心情の中の波紋が。
自分の中に差別や、自分が忌み嫌っていたものが、思わぬ事態で突然現れてくる。そしてそれを抑えられなくなる自分が一番怖いかも。
常識的な反応の仕方はわかっているのに、もう以前のようにはふるまえない自分。
何が変わってしまったのか、なぜこうなってしまったのか…
でも掃除のおばさんの本当の姿を知った時、彼女の中にある地獄を見た時、主人公は自分の素直な感情を出す事ができた。
それが救いだ。
主人公の中で何かが終わったのか。
波紋の輪の広がりが、静かにおさまっていくような…
ラストのフラメンコは圧巻。
彼女の中の全てをほとばしらせながら夢中で自分の感情のままに熱く踊るさまは美しかった。
過去に情熱的な踊りを習っていたような、感情が激しい内面を持ち合わせている女性だったのね。
何か人生、一回、二回、回って戻ったような。
本来の自分自身に戻ってきたような。
波紋が何回か起こり、そして静かな水面に戻るような…
人生ってなんだろう。
なかなかうまくいかないね。
何かにすがってしまったり、自分はそういう人ではない、と思っていたのに実はそういう人になっていたり。私もあるな。
メビウスの輪のような…波紋のような。
それでもなんとなく終わっていく人生。
その時は地獄だったのに、なんでもないように終わっていく人生。
だからこそ、「今」を生きていかなければ。
もう、「今」しかない。「今」のあなたしかないんだ。と言われてる気がした。
自分の周りでも静かに起こっていそうな出来事に、なんだか安堵したのはなぜ?
みんな少なからず似たもの同士なのかも。
にしても、宗教の踊りのバージョンが何バージョンあるのか?何度も吹き出しそうになってしまって楽しかったです。
何に生きがいを見出すか
水繋がり❔共鳴はしないのか…
主人公が人生を生き直す、これからを感じさせるラスト
女性俳優筒井真理子をとことん味わうための映画
2023年映画館鑑賞34作品目
6月21日(水)イオンシネマ新利府
ACチケット1000円
監督と脚本は『バーバー吉野』『恋は五・七・五!』『かもめ食堂 』『川っぺりムコリッタ』の荻上直子
夫の蒸発後に新興宗教にハマった主婦の話
そんなある日に夫が戻ってきた
癌で長くないという
東京を離れ九州で就職した長男が恋人を連れて帰省した
恋人は6歳年上で聾唖者だった
監督初のブラックコメディーという意欲作
なにかしら思うところがあったのだろう
インタビュー記事を読んでもよくわからないけど
とにかく主演の筒井真理子の芝居に尽きる
とことん味わってもらいたい
サウナで水木さんが依子に「男を甘やかしてダメ」などと説教していたら男性客がどんどん席を立つシーンが面白かった
時折何かしら叩く音がうざかった
必要性を全く感じなかった
ラストで何の音がわかった
フラメンコだ
荻上直子監督にとっては重要だったのだろう
都内の庭で枯山水とはなんと贅沢な
しかし棺桶を運ぶときは歩きにくいったらありゃしない
ほらいわんこっちゃない
落ちた棺桶から出てきた夫の遺体を見て大笑いする依子とそれを見てドン引きする息子は印象的なシーン
あのホームレスがムロツヨシだったとはあとでわかったことでエンドロールでは「あれ?ムロツヨシ出てたっけ」と思ったくらい
福島原発事故のエピソードはどうしても必要だったのかな
あと妻が6歳年上ってなにがいけないのか自分は理解できなかった
生まれつきの難聴に関してはわからないではないが遺伝するとは限らないだろう
配役
スーパーのレジ係としてパートをしている須藤依子に筒井真理子
蒸発後戻ってきて再び共同生活を始めた依子の夫の須藤修に光石研
依子と修の息子で宗教にハマる母に嫌気がさして九州の大学に進学しそのまま就職した須藤拓哉に磯村勇斗
須藤家の隣に住む主婦に安藤玉恵
依子がハマる宗教団体の信者の小笠原ひとみに江口のりこ
依子がハマる宗教団体の信者の伊藤節子に平岩紙
拓哉の子供を身篭り結婚する予定の珠美に津田絵理奈
寝たきりの修の父に花王おさむ
レジで半額を要求するカスハラ常習犯の門倉太郎に柄本明
依子が働くスーパーの清掃係の水木さんに木野花
依子がハマる宗教団体のリーダーで教祖と信者のパイプ役の橋本昌子にキムラ緑子
修に話しかけるホームレスにムロツヨシ
総じて滑稽
閉塞した女性の感情
一滴の水〜♪大海に〜♪
フラメンコ💃
ストーリーの説明にあるように信仰宗教、介護、障がい者差別、ご近所トラブル⁈、老害案件。
皆、誰にでもあるはずなのに、他人事のうちは「大変だなぁ」くらいに捉えてる。
自分に降りかかると、とたんに被害者面。
そんな一面(起こる事はてんこ盛りだけど😓)を静かに徳を積むように鎮める(決して受け入れてはない)主婦のお話し。
めちゃくちゃ面白かったか?と言われれば、そうでもない。
ではめちゃくちゃつまらなかったか?とも思わない。
現代社会において、必ずどこかで起きている物語。
こういう役をやらせたら筒井さんは抜群にいいね。
たぶん、最後のフラメンコの件は全てを昇華した「達観の舞」を表現してるんだろうけど、なんか強引な〆に感じた。
せめて、息子が開いたアルバムに「昔習っていた」体の布石でもあればもう少しすんなり受け入れらたと思う。
0.5単位の評価だからできないけど、気持ち的に3.2くらいの評価です。
「お客さんに波紋のように伝われば」
希望があるのかないのか
私が荻上直子の「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」あたりを全く評価しないのは、人間関係の面倒さを「なんとなく言葉も交わさずに通じ合ってしまう人たち」を描くことで安易に切り捨てていたからです。
世間がそれを「癒やし」などと言っていたのにも驚きましたけど。
「彼らが本気で編むときは、」で少し苦手感が後退しましたが、この作品も性的指向の問題を他の問題を描くためのダシとして使って終わるところに反感を持たずにいられませんでした。
そんな私は今作は、好きになれる作品でした。
震災の体験に、ある程度ちゃんと向き合おうとしていると感じたのと、家族でもなく宗教でもないところにも居場所はあるはずだというメッセージにそれなりに共感できるからです。
もちろん、障害のある人の役を当事者キャスティングし、キャラとしても「可哀想な人」の枠に閉じ込めず、ちゃんと自分の意思を自分で表現し、何なら主人公を追い詰めるところまでいく人物として描いているのも大いに評価できます。
マイノリティを可哀想な人(あるいは、可哀想なのに頑張っている善良な人)のままにしておきたい日本映画界においては、画期的だと思いました。
ただ、読み間違えてはいけないのは、息子の恋人も交えた四人のシーンです。あそこは主人公の行動をきっかけとして噴出する男性の身勝手さを描いた場面です。
家事だけでなく義父の介護を一人で背負わされ(夫や息子はなーんにもしない)、さらには夫が勝手に出ていき、勝手に帰ってきて、そんな彼女がちょっと息子の恋人に嫌なことをしたからといって、夫が正義漢のように彼女を叱る資格はなく、夫はこれまで息子の恋人にしたようにちゃんと妻の「味方」をしてきたかどうかを考えなければいけないはずなのに、いざとなると男同士がタッグを組んで女を虐めにかかるという状況を描いているのがあのシーンですね。
むしろ震災の前に、あの家庭から逃げたかったのは主人公の方だったのでは……と思います。(「PRO」のレビュワーがあの頃には戻れない家族の肖像とか言ってますけど、彼女は「あの頃」にはすでに幸せではなかったですよ)
しかしそれにしても気になるのは、この現代に、同じ女性である監督(脚本も書いている)がここまで「家庭」に縛られ続けなければならない女性を描いている点です。
わずかな救いは、女性(木野花)同士の連帯と、フラメンコを踊りながらちょっとだけ家の外に出ることくらいしかないのでしょうか。そりゃ、更年期でなくても苦しくなりますよ。
筒井真理子さん💕
絶望を笑え
実力ある監督と演技力最高俳優陣とのコラボレーション作品
筒井真理子さん主演の緊張感
助演としても存在感のある筒井さんが主演となると、やはり「よこがお」や「淵に立つ」を意識しなくてはならず、緊張感を持って上映を待ちました ポスターやチラシで自転車で疾走するその表情が笑っているのも、何とも怖い、そんな思いでした 彼女に限らないでしょうが、様々な辛苦が降りかかってきたとき、「なぜ私だけ」と思うし、そのぶつけどころのない場面に、にじり寄ってくる「理解者」を受け入れてしまう危うさ それは私たちにも共感するのだけれど、あの筒井さんが人の内面の恐ろしさをみせてくれました
光石研さんと、近所の猫の飼い主安藤玉惠さんはしばしば共演もされていて、キネ旬1位を取った「恋人たち」では水道水に「美女水」というラベルを貼って瓶詰にし、怪しげな水を売るカップルを演じていました
このお二人の存在も、主人公を苦しめる「ダメ夫」「嫌な近所」であり、柄本さんも加え
恐ろしい「脇」でありました
それでもフラメンコを観終わってちょっと希望の持てるラストになったのではないでしょうか(6月8日 TOTOシネマズ梅田 にて鑑賞)
良い行いは正しい行い?
うお〜、見応えあったな〜。
社会風刺で不謹慎なブラックコメディかつ、奇妙で不気味なシリアスドラマ。なのに、クスッと笑える。介護問題、高齢化社会、障がい者差別、震災要素が全体の3割程度、信仰、夫婦の決裂、母子との関係性がのこり。様々な問題を扱いながらも、「水」を関連ワードにして作品にまとまりをもたらす。流石の、萩上直子監督である。あまり話題になっていないが、もうひとつの「怪物」として並び称されてもいいと思う。
手を叩く音と太鼓の音が混ざったBGM。
もう、この奇妙な音楽?を聴いた時点で確信。これ、絶対面白いやつ。何かに追われているような、ものすごい緊迫感が身体中を襲い、同時に謎の高揚感を覚える。主人公が自転車で坂を下るシーンで流れるこの手拍子。どんどん底へと向かっている、重圧に押しつぶされそうになっている主人公の様子が、意識せずとも伝わってくる。やばい、何かがおかしいぞ、、、。
筒井真理子、光石研、江口のりこ、木野花、柄本明、キムラ緑子といった、恐ろしいほどに名優が勢ぞろい。「この人出演してくれたら間違いないね」ってのがこんなにも出演しているんだから、そりゃ面白いはず。ベテランに囲まれながらも、磯村勇斗もいい演技。てかまぁ、光石研と柄本明と磯村勇斗はよく出ますよねぇ...。筒井真理子のどんどん落ちぶれていく、顔が強ばっていくのには、恐怖超えてニヤニヤが止まらない。こういう役に彼女の配役は言うことなしです。
こんだけの要素が詰まっているから、色々と雑で回収できていない部分もあるのだけど、とっちらかっている感じはせず、割と綺麗に見せてくれます。庭の枯山水は美しく、ラストの筒井真理子もまた美しい。話の流れもスムーズで、引っかかることなく、笑いながら見ることが出来ます。同じようなシーンが繰り返されながら、主人公の心情の変化を描く。シンプルだけど、言いたいことが直に伝わってくるのです。
母親であること、妻であること、姑であること、パートであること、新興宗教の一員であること。色んな重荷を抱えながら生きる女性。本作は少し過剰だが、こういった重荷を抱える人々は多くいるはず。「川っぺりムコリッタ」とは打って変わって、ダークなテイストだったが、かなり楽しめました。「怪物」と併せて、ぜひ。
目を背け逃げる人たち
福島の原発事故が起こったとき、東日本に住む人たちはどうしようもない不安を感じていた。これからどうなるんだろうと。他の地域に引っ越した人もいたが、そんなことできたのは一部の人たちだけ。そんなことを思い出させる冒頭。
夫が失踪し宗教にハマるという女性を描いた作品。宗教は、つらい現実から目を背けたい人がハマる(という個人的偏見)ということを改めて教えてくれる。でもあの家族は皆、何かから目を背け逃げ出したってこと。それは悪いことではない。大なり小なり逃げておかないと心が持たない。
それなりに考えさせられ、ちょっと笑える。悪くはないんだけど、大きな感動は待っていなかった。個人的には、波紋が生じる水面に立ちながらセリフを話すシーンがなんとも心地悪かった。いい意味ではなく悪い意味で。大して効果的だったようには思えなかった。
意外と豪華な役者が出演していた本作。主演の筒井真理子もいいが、光石研がさらにいい。微妙に嫌な感じでダメな男がとても似合っていた。帰ってきてからの食事シーンは絶妙な嫌悪感を覚えるライン。妻の心が乱れるのがよくわかる。あと、ムロツヨシの出演はわからなかった。そうか!あいつがそうか!と消去法では思い当たるけど。なんかムロさんに負けた気がしてしまう。
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