劇場公開日 2023年5月26日

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「観たい度○鑑賞後の満足度△ ラストは誉めてあげましょう。それ以外は如何にも中途半端。シンボリズムやイメージが先行していて人間が描かれていない。」波紋 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0観たい度○鑑賞後の満足度△ ラストは誉めてあげましょう。それ以外は如何にも中途半端。シンボリズムやイメージが先行していて人間が描かれていない。

2023年5月26日
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鑑賞方法:映画館

①キムラ緑子、江口のりこ、安藤玉恵、ムロツヨシ、平岩紙、木野花、柄本明と云うメンツが揃ったらもうコメディしかないでしょう、と思うが余り笑えない。緑命水の座談会シーンももっと笑えるか、と期待したが苦笑がやっと。
監督が「これだけのメンツが揃ったらコメディと思うでしょう。でも違うんですよ。」と言いたかったのか分からないけれど、かといってシリアスなドラマでもないし、面白いわけでもない。
江口のりこや平岩紙がにこやかに微笑みながら恭しくお上品な口調で話していると、そのうち何か起こすんじゃないか、起こるんじゃないか、と期待しましたが何も起こりませんでした。
「どうでもいい話」と「どうでもよくない話」とのボーダーラインにあるような映画。
やたらシンボリズムやイメージ(水、雨、波紋、波、人間の手・足・脚)は出てくるのだけれども、これだけ人間の内面を描いていない映画も珍しいかも(誉めているのか貶しているのか自分でも分からないけれど)。
②見たくもない男の足の裏のアップからスタート。筒井真理子演じる妻は其方に頭を向けて寝ている。これでこの夫婦はもう上手く行っていないことを表しているんだろうけど、もしかして足フェチ?或いは旦那の足の臭いが気にならないほど実は仲良し?なのかとも思ってしまった。
③女性監督だからか女性の嫌な面ばかり目につく。
筒井真理子の視線が怖いし、嫌なもの・嫌いなものからフッと顔や身体を背けるところはなかなか上手い。
帰ってきた夫の飯を食う音、味噌汁を飲む音に嫌悪を示すところなどはリアル(その事で奥さんに文句を言われると愚痴る上司が昔いました)。
ただ、介護している養父のお粥には飲んではいけない?水道水を使ったり、夫や息子の恋人(絶体やったと思う)の歯ブラシで洗面台や排水口を掃除するなんて、嫌いな上司のお茶に唾を入れるOLみたいなセコい意地悪で苦笑。
④息子の恋人が障害者(であろうがなかろうが不快だったと思うけど)というところが別の切り口かと思ったら、結構厚かましくて息子を盾に脅すなど図太いと云うかずる賢い女性として描いているところは新鮮。
⑤時々挿入される水面に主要人物が立って話をするシーンは画的に陳腐。
⑥木野花が演じる掃除婦のオバサンが一番人間臭いかな。
『ヴィレッジ』ではもうひとつ生彩に欠いたが、あれは彼女の芝居が悪いのではなく演出と脚本のせい。
彼女と主人公との交流シーンがこの映画で最も人間的だと思える。(しかし、「仕返ししなさい」と焚き付けられるが、瀕死の爺さんに自分に遺産を遺すよう遺言書を書かせたのだから既に仕返ししてるじゃん。)
ゴミ屋敷みたいな彼女の部屋も凄いが、それを見事に片付けた主人公もある意味凄いというか、そういえばこの人の家も庭もゴミひとつないような3S ぶり。あんまりこんな人と一緒に住みたくないなあ。
⑦ラスト、雨の降るなか喪服でフラメンコを踊るシーンは、これまで観たことのない画で、これは面白かった。

もーさん