みなに幸あれのレビュー・感想・評価
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才能あれど、どっちつかずの惜しさ
もし本作が世にも奇妙な物語などのオムニバス短編だとしたら、
納得いく出来だといえただろう。
ホラーとコメディには境界線があるのだが、本作は若干コメディに寄っており、シュールで奇妙な作風なので、小品としてはぴったりなのだ。
しかし、あくまで長編映画で、2000円とられるとなると、しかもそこに、
新たなJホラーとして期待させるような謳い文句を掲げておいて、
本作を呈示されると、さすがに文句を言いたくもなる。
まずは良かった点を簡潔に述べると、90分に収まる枠ということ、
一部の目を覆いたくなるようなゴア描写やシュールな笑いを誘う演出、
主演女優さんやその祖父母などの役者陣も良かった、
また序盤の家庭内での違和感や不穏な雰囲気にはシャマランの「ヴィジット」や「イットカムズアットナイト」などを彷彿とさせるワクワクを感じた。
さあ、では何故本作が傑作にならず、消化不良で終わったのかという話になる。
これは致命的なのだが、テーマやメッセージ性といった本作のコンセプトこそが、映画の邪魔をした、ということである。
本作のテーマやメッセージはわかりやすいものであって、要するに「他人の不幸の上で私たちの幸福は成り立っている。」というものである。
また、村の因習や村社会の闇も本作のテーマでもあろう。
それらは普遍的なテーマであるのも関わらず、
本作においてその構造は脆く理論は破綻しており、
遠回りして捏ね繰り回したあげく伝わるものも伝わらなくなってしまった、
ということである。
まず、共通したテーマを持つ他作について。
そのようなテーマの作品は枚挙に暇がなく、
幸不幸の対比というテーマにおいては、
傑作フランス映画「幸福」はその代表例であろう。
「幸福」では見事にこのテーマを、
恋愛映画の皮を被ったホラーコメディとして一級品の皮肉映画へと昇華した。
三池監督「オーディション」も前半で平凡な家庭を描き、
見知らぬところで地獄を生きてきた人間との接触が後半の地獄絵図を生む。
「パラサイト」だって例のどんでん返しの場面から幸と不幸の対比と反転による見事な展開があってこそ、傑作を傑作たらしめているのだ。
ジョーカーの救いの無さも似たような質感だ。
上記が我々の胸に迫るのはその切実さや、その残酷さを正確に摘出する的確さ(インテリジェンスとでもいおうか)、があるからである。
村の因習というテーマについてもウィッカーマンしかり犬神家しかり
昨今ではガンニバルしかり沢山の傑作がある。
さらに「鬼太郎誕生」のような大傑作がついこの間まで公開されていたことを忘れてはならない。
「他者の不幸で幸福が成り立つこと」「村の因習」「ホラーミステリー」この3点において、本作と鬼太郎誕生はテーマがかなり相似しているにもかかわらず、いわずもがな、雲泥の差である。
それは記述したとおり、切実さとインテリジェンスの欠如によるものであろう。
では本作の致命的なミスについて。
本作でも止せばいいものを、わざわざ登場人物に長台詞を喋らすことによって、映画の結末を待たずにしてそのテーマは説明されている。
曰く、「屠畜場で喰われるために肥やされ一生を終える豚」の話や、
「発展途上国の南アフリカで餓死寸前の子供達はこの国に住む我々からしてみれば不幸にみえるが、彼らには彼らの尺度があり、幸福なのだ。」ということである。
こんなことを簡単にべちゃくちゃ喋らせるべきではない。
安直であり、的外れであり、その浅はかさに憤りを覚えるレベルだ。
またその深刻なテーマと本作は関係あるようで結局あまりない。
というのも本作の話はもっと荒唐無稽であり、含みを持たせすぎており、
ホラーとしてもミステリーとしても消化不良で何も解決されないまま終わる。
また唯一感情移入できるはずの主人公の行動も荒唐無稽なものばかりで
とても共感できるものではない。
結局、テーマを重視するならガンニバルほどシンプルに振り切るべきで、
コンセプト重視ならシャマランくらいの展開力が必要で、
世界観を重視するならデヴィットリンチくらい振り切って、
意味深なテーマなど排除するべきなのだ。
そのどっちつかずの曖昧さが、本作を駄目な邦画たらしめてしまった。
形から入って外した。
メタファー(隠喩)として
観ている最中、観終わってしばらくは
意味が理解できなかった。
ただ劇中で、
酷い状況に置かれている描写があって
なんでだろう?と思い、
その酷い状況が解放された時、
酷い状況を強いた側が、
呪いが発動したように、血を流し始める。
なんだこれは?
と思っていたんだけれど、
観終わった翌日、
風呂に浸かっていた時に、
ハッとした。
世の中の幸せの裏側には、
見ないこと見て見ぬ振りをすること
話さない、話すことを禁じられて
堪える人たちが
強要される人たちいるのではないか?
そういった沈黙せざるを得ない
沈黙を強いられる人たちの上に
【幸せ】が積み上がってるのではないか?
誰もが持っている後ろ暗さ、
語られたら終わってしまう秘密、
これらを暴露されたら、
それを強いていた側が、
血を流し、社会的に抹殺される。
自分の幸せを守る側は
それの何が悪いの?
主人公に対して、
「あなたも知ってるくせに知らないフリ?」
と言ってくるのか、と。
とするなら、
かなりパンチの効いた作品だなと。
ホラーというより、
風刺映画に感じた。
不気味すぎる表現が秀逸な新境地Jホラー!
ホラーではないかも、というのが率直な印象。
ただ、不気味すぎる映像表現は秀逸と感じた。
老人役の俳優の演技もセリフ棒読み&感情表現ないところ
が更に不気味さを助長していた。
演出なんだろうけど、下手なのかな?と思うくらいに
棒読みである意味驚いた(笑)
キャラクターの名前がないところも不気味。
家族なのに名前で呼ばないところも違和感。
なんと言っても、伏線というかいろいろやっていることの
回収が全くされないところも驚き。
ここまでくると笑える。
唯一の救いは古川琴音。
彼女が主役でなければきっとここまで観れる作品には
なっていない。
私も古川琴音のポスタービジュアルに惹かれて観た。
Jホラーは嫌いな私だが、
A24とか割と流行っている因習村ホラー的な
位置づけとして鑑賞すると良いと思う。
強烈なメッセージ性のある異色作。説明不足過ぎるのが残念。
強烈なメッセージがある作品でした。
見終わった後にタイトルを見た時に「うわぁ、すっごい皮肉なタイトル…」と思いましたし、キャッチコピーが「地球上の幸せには、限りがある」とのことですが、なるほど、言い得て妙だと納得しました。
世の中には当然のように溢れてるもの、食べ物だったり衣服、電化製品、娯楽もスポーツも。
そういったもので豊かに暮らす一方で、に、地球では、必ず誰かが苦しんでいるもの。
それは家畜だったり、貧困にあえぐ人々、紛争や戦争で犠牲になる人だったり。
そういった存在とは直接関係なくとも、そういった存在がいることを忘れてはいけないし、それを「誰かが犠牲になるなんて間違ってる!」なんて叫ぶのはただの偽善でしかない。
この映画からは、そんな強烈なメッセージを感じました。
これは正直ホラーではありません。
スリルサスペンスに近い感じ。
タイトルの通りですが、残念なのは、とにかく描写不足、説明不足が目立ったことです。
そりゃ制作側はわかってるでしょうが、見る側は何一つ知識がないまま見るわけですから、「怖い。不気味」よりも「どういうこと?」の方が強くなっちゃいます。
もちろん全部を説明しろってわけじゃないけど、あまりにも視聴者側を置き去りにし過ぎかなぁって。
雰囲気に全振りしまくって、ただのカオスな場面も多々ありました。
でもこれまでの霊的ホラーとはまた違う面白さもありました。
新進気鋭の監督の長編ホラー初作品とのことですが、今後とも、この監督には注目したいと思います。
狂ってる。懐かし刺激。そして面白い。
狂ってる。そして懐かしい面白さ。総合プロデュースが清水崇。確かにこの感じは清水崇しかサポートできない、というくらい攻め攻めの映画だった。呪怨のトシオなど、一歩間違えばお笑いでしかないセンを音楽でひっくり返して怖さと面白さに転じさせる感じ。
題材は恐怖の田舎、田舎の恐怖、帰省した町に不安のタネがあり、自分が家と家族と町の恐怖の習わしに支配されてると気づき、脱出しようとするが取り込まれる。何に支配されているか、のディテールがかなりディープで異様な儀式的要素満載。ボディスナッチャー的要素もあるし、悪魔のいけにえ的要素もあるし、特にお金をかけてるでもなさそうなのに、殺風景で嫌になるほどの抜けのあるだだっ広い田園風景に配置される気の狂った町人がとにかく怖いというか、おぞましい。。徹頭徹尾素人臭くバカバカしい家族が最初っから笑える。味噌汁のアップからはじまるデビュー作って。。近年このテイストを観るのは久しぶり。その昔、ハーシェルゴードンルイスのいかがわしい安ホラー見た時の感じというか。とにかく見慣れた日本の風景(特に宅地)に人がいないでテクテク歩いてるのがこんなにグロテスクに見える映画はない。
幸せは犠牲なしでは得られない?
ぶっちゃけた話、内容がついていけない。
何で今の御時世に家を繁盛させるための人柱的な生贄が必要になる…?家業を成功させるためには、誰かしら犠牲になってもらわねばならないという考えならば、それは相手に対する妬みでしかなく普通に考えたら事件だが、主人公は次第に受け入れる。
家を出た叔母が話す、アフリカの貧困層の話もはっきり言ってあのシーンは必要なのか、甚だ疑問でしかないし、ストーリー全体を通しヒトコワをメインにしたい狙いが強かったのだろうが、要所要所になんで?とツッコミをいれたいシーンがチラホラ。
悪いけど、怖さより話のなぜなぜが多過ぎて、見終えた後はただただ頭が疲れてしまった。怖くはないのであまり期待しないほうが良いかもしれない。
「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」というテーマから他...
「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」というテーマから他人の不幸が誰かの幸せになるような輪廻が描かれるのかと思ったら全く活かされていない脚本。
前半こそ日本独特の陰鬱とした田舎の雰囲気と何かが起きそうな気味悪さにドキドキしたがシナリオに捻りが無く祖父母の奇行をただ眺めるだけなので段々と飽きてくる。オチも正直ありがちで微妙。
前評判から新感覚村ホラーを期待したが年初からとんだ期待外れとなった。これでは清水崇監督や中田秀夫監督が近年量産している駄作Jホラー群と大差無いかそれ以下である。
と、思ったら清水崇監督が総合プロデュースで参加してるのね…
ネームバリュー的にこの才能の枯渇した御二方が必要なのだろうけどもういい加減に新しい才能を見つけないとJホラーは終わると思う。
古川琴音は凄く良い女優だったのでもう少しマトモな映画で再度観たいところ。
知らぬが仏
近年のJホラーでは観なかった感じのおどろおどろしさに惹かれて鑑賞。観る直前に気付きましたが「ミンナのウタ」の脚本の方が今作でも担当されているみたいで、その方面でも期待値が上がりました。
怖かったというよりもめっちゃ笑えた不思議なJホラーでした。怖いところは怖いし、全体的にきっしょいホラーで何度も顔が引き攣りそうになりましたが、途中途中抜けたところがあって吹き出しそうになりました。
目に入れても痛くないを物理的にやろうとするのは気持ち悪かったですし
設定には意外と穴があって、主人公がなぜ東京に戻らないのかというところは気になりましたし、幸せ平等システムをこの歳まで知らされていなかったのは謎でしたし、どこか宙を見ていたりすることに関しては何も明言されませんでしたし、指フェラは悪寒が走りましたし、結構雰囲気だけで片したシーンが多く見られたのは残念だなと思いました。
役者陣は古川さんが抜けすぎてるのか、他の方々があまり上手じゃないのか、バランスはあまり良くないように思えました。
でも棒読みっぷりが逆に胡散臭さと得体の知れない恐怖に繋がっていたのは良かったです。と思いきや、シンプルにあんま上手じゃないんだろうなとプツッと何かが切れるシーンでは笑ってしまいました。役者ってやっぱ大事だなとは思ってしまいました。
あと結構ホラーをやってるのかと思いきや、急にギャグになるのは狙ってるのかな?と思うところが度々ありました。
パンツおじさんがトラックに撥ねられて吹き飛んでいくシーンなんかギャグ漫画みたいにボヨンボヨン跳ねてましたし、ばあさんが全力ダッシュで驚かせてくるのかと思いきや、そのままドアに突撃しまくってましたし、テーブルの下に隠れてるのに丸見えな状態だったり、夢の中で見てる夢でパンツおじさんのダンスに爺さんのボイパにお父さんの畳すりすり(絶対火傷してる)の悪夢みたいにシーンに、息子が幸せのバランスのせいで目から血が出るまでならまだしも、もうギャグ漫画の飛び出し方をしてたので、思いっきり吹き出してしまいました。もう中盤からはそういうものだと割り切って見るのが正解だなと切り替えたのが功を奏しました。
ラストの婆さんの組体操出産はマジで意味が分からなくて置いてけぼりにされましたが、幼馴染が生贄になって幸せが持続していくラストはおぉと唸らされました。
エピローグでその後の幸せどうたらが語られますが、不意に見せるニターッとした笑顔は「Pearl」を彷彿とさせるものが観れました。なんかそこで不思議な満足感が得れました。
作品のバックボーンには少子高齢化と若者の田舎移住とかがあるんだろうなと思いました。
互いが互いの文化を分かり合えないのはしょうがないと思いますが、介護するのは若者の方ですし負担ばかりかかるから、老人が危惧するんだろうなと思いました。ただ街中であんな意味ありげな事を言う婆さんは中々に怖かったです笑
ジャパニーズA24と言われるのも頷ける不気味さが良かったです。真面目にホラーとして見ると意味不明なところや拍子抜けなところがあるので、そこをどう捉えるかによって評価が変わりそうな作品ですが、コメディとして楽しむのが一番だなと思いました。
ジャンプスケアに頼ることなく、しっかりとホラーで勝負してきてくれた作品なので、そういう作品もっときておくれと思った次第です。
鑑賞日 1/25
鑑賞時間 18:35〜20:10
座席 E-2
パンケーキ食べたい♪
総合プロデューサーのはずなのに、清水崇臭が強すぎる。「犬鳴村」「樹海村」「忌怪島」、「事故物件」「それがいる森」「禁じられた遊び」...。2020年代のJホラーのこの駄作、全て清水崇と中田秀夫の仕業。頼むから、もうホラーには首突っ込まないでくれ。「呪怨」と「リング」の栄光に縋り続けないでくれ。
本作も罪深きプロデューサーの生贄となったのだが、テーマは斬新で素晴らしく、1歩違えばJホラーの新たな傑作だと賞賛されたはず。村ユニバースで飽き飽きしていた村ホラーだが、これは新しい。第1回ホラー映画大賞に選ばれただけある。なのに、要素だけ盛り込んでいて、あまりに中途半端な作品になっている。アイデアはすごくいいのに勿体ない。短編から長編に伸ばすにあたって、ストーリー構成が全然練られていないように思えた。
案の定ホラー的な怖さはなく、怖さよりも気持ち悪さを優先させちゃっている。チープな演出が作品の品質を下げている。いかにもな雰囲気を醸し出しながら、音を大きく荒立てたりしているのに、しょうもない着地をしてしまう。本作の説明不足っぷりは酷く、状況についてろくに話してもくれないのに、「なんで分かってくれないの?」と自ら開き直る極悪スタイル。これにはめちゃくちゃイライラさせられた。要素減らしてでも、ちゃんと話すべきじゃない?
更にはおばあちゃんの棒読みのせいで緊張感まるでなし。素人とは言えど、これはあまりにもでしょ。古川琴音の演技力を生かしきれていない周囲の登場人物。あと一人、有名な役者さんが使えればね。作品の引き締めが弱いように感じちゃう。白石晃士だったら、とひたすら妄想する88分間。ピースは良いだけに、これっぽっちも完成されていない脚本にガッカリする。あぁ、なんでこんなことに。。。
なんかなぁ、もうJホラーには期待できないのでしょうか。昨年の個人的ワーストもほとんど日本製のホラーでしたし、ここまで来ると映画館でわざわざ見なくても...と思ってしまう。でも、本作の下津監督には周りに流されず、頑張って頂きたい。どうか、この状況を変えてくれ。
ホラーとして観てしまうと肩透かしになる
幸せとは❔
とある田舎出身の看護学生が祖父母の家に
帰省し、家族や周りの人々が異常で奇行を目の当たりにしていく。
彼女が知らなかった、自分が幸せなのは誰かが
不幸せなのだと次第に心と身体を侵食されていく状態に。
多分、身代わりの人が必ず存在する形を表現したかったけど上手に演出が出来てない感じが。
最初から最後まで、おばちゃんの行動が心の奥底から嫌悪感をマックスにする。
また棒読みのセリフが更に。
古川琴音さんの演技は光っていた。
普通と奇行も演じ彼女らしい演技で魅了された。
もう少し底上げ出来る役者さんが居ても良かった気がして勿体無い。
監督さんの作りたい主張が全面的に画面に
出てるのは良いが、映画ワークとしてのバランスを崩していた。変に笑えないシーンは要らないし、遊び心がある笑いなら良かったのでは。効果音の入れ方が不思議。あれだけ床のきしむ音や
ドアの音を綺麗に拾ってるのに。
もう一歩、二歩引いて考える方向性もありかなと思ってしまう。
人は無自覚で他の人から幸せを貰えてる形を示しているのだろうか………。そして身代わりを探しているのだろうか……。
背筋がゾッとする作品。
得体の知れない嫌悪感を感じたい方は
覚悟をして観て下さい。
糾える縄の如し
限られた資源のように幸福を奪い合う、ということらしいが…
どちらかと言うと幸と不幸が同量であり、幸せになるために不幸を増やしているように見えた。
(あるいは、身代わり人形のようなものか)
序盤、横断歩道のおばあちゃんのわざとらしい台詞と、手伝いが不要に見える外見や喋り方に違和感。
その後も脇(特に祖母)の棒読みが気になって仕方がなかった。
まぁあれはあれで独特の不気味さがあるので、わざとなのかもしれないけど。
ドアに突進し続けるなどの奇行は真相と関係ないし、止めない主人公も不自然すぎた。
故意ならまだしも、あれだけ見晴らしのいい農道で轢くというのも、う〜ん…
アフリカだの、0と1だの、他人を見ての幸不幸だのは主題から焦点がブレてしまっていたように思う。
何より、通報するという発想がない時点で有り得ない。
ラストも、直前まで「やめて」と言っていた主人公の心変わりの理由が分からなかった。
祖母の出産も一体何だったんだろ。
心情的なリアルさを感じない反面、物理的なリアルさが強めなのもバランスが悪い。
(祖父母が生贄を2階に運んでたのはおかしいけど)
テーマは良いのだけど、色々と中途半端で恐さも深みも足りなかった印象でした。
説明不足は、脚本の推敲不足か?長尺のため説明カットしたか?。
ジワジワ不気味な新タイプJホラー
Jホラーとしては有り
不幸とされる人が志願して、満面の笑みでいるのを不幸と呼べるのだろうか
2024.1.19 アップリンク京都
2024年の日本映画(89分、R15+)
祖父母の元に帰省する孫が、そこで行われていた奇妙な風習に直面する様子を描いたホラー映画
監督&脚本は下津優太
物語の舞台はある地方都市(ロケ地は福岡県田川郡赤村)
「孫(古川琴音、幼少期:久保留凛)」は東京の看護学校に通っていたが、実習を一通り終えて、祖父(有福正志)と祖母(犬山良子)のいる実家へと帰ってきた
一緒に父(西田優史)と母(吉村志保)と弟(名本伊吹)も帰ってくる予定だったが、何らかのトラブルで1日遅れるとの連絡が入った
孫は祖父母と一晩を過ごすことになったのだが、雰囲気の異質さと時折2階から聞こえてくる音が気になって仕方がなかった
地元には幼馴染(松大航也)がいたが、彼は父の怪我によって農家を継ぐことを余儀なくされていて、祖父母は幼馴染一家との関わりと禁じてくる
その理由はわからないままだったが、翌日に孫は得体の知れないものを見てしまう
それはパンツ一丁の謎の男(橋本和雄)が床を這いずっているというもので、祖父母は何食わぬ顔をして、男を引きずって2階のある部屋へと閉じ込めた
祖父母は「まだ聞いていなかったかな」と普通に接し、その風習は代々伝わるもので、「あの男の不幸によって、我が家の幸せは保たれている」という
そして、幼馴染の家ではその風習がなく、それによって不幸が訪れているので近づくなという理由があったのである
映画は、地方にありそうでなさそうな風習を描いているホラーで、抵抗する孫が徐々に感化されていく様子を描いていく
この土地では当たり前のような風習になっていて、謎の男が死んだことで代わりを探さなくてはいけないということを町中の人が理解しているという感じになっていた
どうやら選択制のようで、「ウチはやめてね」みたいなセリフもあったりする
物語は、「幸せの総量は決まっていて、それを奪い合っている世界」という前提があり、その中でどう生きていくか、を描いているのだが、設定が穴だらけすぎて失笑を禁じ得ない
その最たるものが「生贄になっている人が不幸に見えない」というもので、謎の男はわからないものの、途中で助ける中学生(増永成遥)とか、幼馴染は「志願兵」みたいな感じになっていた
いわゆる相対的幸福論と主体的幸福論の溝を考えていない感じになっていて、無抵抗の志願兵目線の幸福論というものが置き去りにされている感じがした
謎の男の儀式に関してもコミカル一辺倒で、何か薬を盛っていて恍惚状態になっているようにも思える
ある意味、この世界においては「幸福というものを考えずにいる方が幸せ」という感じになっているのだが、それを考えると、「あなたはどちら側で幸せになりたいですか?」と問うているようにも思える
みんなが幸せになるためには、率先して誰かの幸福を支える犠牲が必要で、そういった社会構造を理解して支えましょう、という感じだろうか
これが現代日本の幸福論に物申すという寓話として作られているのなら興味深い部分はあるが、それを作品から感じ取るのは無理だと思う
日本の土着ホラーにありがちな生贄論の延長線上に過ぎないので、そこに新しさを感じないというのが率直な感想だろうか
いずれにせよ、最近流行りのコメディホラーなのだが、おそらく現地の素人を大量に投入しているので「棒読み演技」が凄まじいことになっていた
それが主要キャストにいるので、無茶なことをするなあと思ってしまって、記念出演としても、これで良かったのかは何とも言えない感じになっている
主演の古川琴音ひとりの演技力でカバーできるものではなく、ここに演技派を起用している時点で、素人演技がさらに際立つようになっていた
幸福の限度性という設定は面白いものの、不幸の侵食に対する危機感がほとんどなく、パニックになることもないので、不幸すらも許容しているのなら、風習にこだわる必要がないのではないだろうか
そのあたりがスッキリしない世界観だったように思う
古川琴音が素晴らしい。話の素材は、実に面白い。それが本当にもったいない。
田舎の祖父母の家の2階には何かいるらしい。
祖父母の様子が変だ。
奇行をたまに見かける。
「幸せには総量が決まっている。」
テーマは面白いと思うし、観たい。
しかし、それを興味深く説明する内容になってない。
そもそもそういうルールがあるなら、親はちゃんと教える義務があある。
その都度、「あなたはまだ知らないんだぁ」じゃない。
- 以上。
いや、自分だけが知らない。
なぜか絶対に誰も教えてくれないという恐怖…というのならわかる。
さらに、それが、田舎の特定の地域だけ(それには無理がある)なのか、全国なのか、全世界なのかもわからない恐怖。
そうならば、実に面白いし、新しい!
しかし、そこまで描けていない。(私の認識違いかもしれない。)
観客に説明できていないのは、クリエイターの力不足以外の何物でもない。
それを臭わせるだけ、テーマを提示するだけなら、本作の元となった短編でいいかもしれないが、長編映画ならちゃんと描く必要がある。
素材が面白いのに実にもったいない。
主演の古川琴音は素晴らしい。
一般の方の演技も異様さを表現できていて、いい。
その分、他の人の、ドラマの脇役のような凡庸過ぎる演技が際立っている。
さらに、笑えないコメディのようなシーンが無駄、というかそれ以上に足を引っ張ってる。
Jホラーの昔からのファンですが、最初の爆発的なヒットの頃以降は傑作が極めて少ない。
「いつまでも「リング」の中田、「呪怨」の清水じゃダメなんです」(清水監督の言葉)というなら、「日本ホラー映画大賞」や本作にも、清水監督と清水組は関わるべきではないと思います。
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