「大川小学校事件遺族の闘いの記録」「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち bluewaveskyさんの映画レビュー(感想・評価)
大川小学校事件遺族の闘いの記録
本作は遺族側の2人の弁護士と遺族らの視点からみた、正に闘いの記録だ。大川小のことは当時ニュースでさわりは聞いたことがあったが、映像での情報は桁違いだ。
本作はいきなり紛糾する遺族説明会から始まる。遺族側はかけがえのない我が子を失ったのが何故か分からず、学校側のあやふやな対応に業を煮やし堪えきれず声を荒げる。津波災害の際、校長は休暇で不在で、唯一生き残った教務主任のたどたどしい説明に怒号が飛びかうが、『ひとまず聞きましょうよ』と主張する遺族の女性の方の発言で、一時は場がおさまる。教務主任は山に逃げて一児は助けているが、異論はあろうが子供が74人死んで先生が生き残ってしまっては道理が通らない。いい意味でも悪い意味でも、よく説明会に参加されたと思うが、見た目からも分かったが精神的不調であるとされ説明も二転三転。2回目の説明会には心身の不調を理由に出席されなかった。
地震発生から津波到達まで約51分あったが悲劇的結末を迎えたのには理由がある。教職員も10名亡くなっているので難しい判断だった事は間違いないが要約すると、そもそも具体的な危機管理マニュアルを作っておらず避難場所も決めていなかった。一部目撃されているが教頭らが逡巡し、避難場所を巡る言い争いもあって時間を浪費したとみられる事。最終的に高さがありわずか1分で行ける裏山に逃げず、津波に近い川側の“三角地帯”と呼ばれる場所の方へ逃げた事による。また事後も校長の教務主任からのメール削除、教育委員会の聞き取りメモの廃棄などの隠蔽や、市長の児童の犠牲を『自然災害による宿命』とする発言など不誠実極まりない対応に終始。
また裁判についても賠償金請求としてしか訴えられないことへの遺族の違和感が描かれる。また我が国では遺族が証拠を集めなければならず、裏山への各ルートの所要時間も遺族の方が実際に走って計測するシーンが象徴的だった。その上、何を思ってか遺族への誹謗中傷する輩もおり、中には脅迫する者も出て遺族が2次被害に遭うなど何ともやり切れない現実がある。
本作の示す教訓は有意義で、高裁の判決で裁判官が言い渡した『学校が子どもの命の最期の場所になってはならない』ということに尽きる。本作を生み出す源泉である遺族の方々の奮闘と勇気に最大限の敬意を表します。