劇場公開日 2023年6月2日

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「良い脚本で、よくできた映画だと思う。でも、プロモーションが的外れじゃない?」怪物 p.f.nagaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 良い脚本で、よくできた映画だと思う。でも、プロモーションが的外れじゃない?

2025年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

「怪物」とは、(映画の中の)悪者ということだろう。映画の前半では、保利先生が問題教師で、「こいつのせいで、子供がつらい想いをしている」と思わせる。そして、「ラスボスはこの校長か」と思わせる場面もある。でも、映画が進むと、その考えは修正を迫られる。

この映画で伝えたいのは、『「この人は悪い人」と簡単に決めつけてはいけない』ということかもしれないと、見終わってしばらくしてから思った。

映画だけじゃなくて、普段生活していても「あいつが悪い」と、人格を否定してしまうことがある。事件などのニュースを見ても、「犯人をきちんと罰してほしい」と思う。でも、その人に怒りをぶつける前に、ちょっと立ち止まって「実は誤解かも」「特別な事情があるかも」と考えてみた方が良いよ、ということなのでは。

映画の中に出てくる「怪物、だーれだ」という遊びは、限られた情報だけで本質をつかむのは難しいということを象徴しているように思った。映画「羅生門」とこの映画を比較する人もいるが、少し違うと思う。「羅生門」は、どの人が嘘をついているかがわからず真相は藪の中、という話だが、この映画は情報が断片的なだけで、嘘は入っていないと思う。その意味でよくできた脚本だと思う。ラストが明るく終わるのも良かった。

この映画のプロモーションには、『それは、よくある子供同士のケンカに見えた。・・・そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した―。』『怪物探しの果てに、私たちは何を見るのか―』などとある。これを読んで「観たい」と思った人は、期待外れと思うのではないか。
この映画は、「子供のケンカ」や「子供が姿を消す」ところは見どころではないし、「怪物探し」が行われる映画でもない。プロモーションが的外れで残念に思う。

p.f.naga