「思ってたものとは、ちょっと違ったかな…?」怪物 Kudoさんの映画レビュー(感想・評価)
思ってたものとは、ちょっと違ったかな…?
前半はすごく面白かった。
久しぶりに観る是枝作品だと、身が震えるような感じで「この先どういう展開が待っているのだろう?」と、ワクワクしながら鑑賞していた。
しかし、中盤以降になってガキ2人の友情話にすり替わってしまった。ここでジュブナイルものが好きな人には申し訳なく思うのだが、当方は興味ないジャンルなので、正直なところ、だんだんウザく感じるようになってしまっていた。
そして途中から浮かび上がってくるBL色……相手役の子役を女の子っぽい外見と声にしていたのは、こういう同性愛が色濃くなっても下品に見えないよう最低限、観客に気を遣ってくれていたのかなとも思える。事実、BL系ドラマを苦手として避けてきた僕でも、何とか視聴に耐えられた。そういう節度を保ってくれていたのは、是枝監督の配慮ある采配なんだろうと感謝したい。
後半から僕はかなり興味が薄れてきて、どうでもよくなっていたのだけど、ラストシーンを観てハッとした。
子供2人は、すでに死んでいたのかと。
はっきりとした描写や演出的な明示もなかったが、そんなような美しさを感じさせるラストシーンだったのだ。
もし、これが2人が死んでいたとされるのなら、僕はもうちょっとBL色の表現にも許容できていただろうし、むしろ増やしても良かった。いや、もっと死の匂いを前半から伏線的にチラリズムさせても良かったのではないかと思う。そのほうが文学性も高まったし、2人が合い言葉のように「○○の夜」とか記念日のように指折り数えて待つような、その日に向かっていく高まりがあっても良かった。
それだけ死という表現は、生きてるときに生々しかった表現をすべて浄化させてくれる作用があるからだ。
子供たちは心身を「純化」させないと、2人同時に「死の夜」の高みにはいけないだろうから、それをお互いに守るため約束しようと誓いを立ててもいい。それを邪魔する同性愛的な性交への誘惑とかなら、僕もかろうじてBLシーンを許せる……。
「禁じられた遊び」的な感じで、性器の見せ合いっこから、互いに自慰のやり方を見せ合うなどのチラリズムも許せる。それは死という浄化が最後にあるから許せるのだ……。
こんなことを書いてしまうのは、ラストシーンで子供2人が死んだかどうかわからないような「観客の判断にお任せします」的な終わり方をしたからだ。正直、もうこういう終わり方は飽きたな。このパターン、そろそろやめませんか、と是枝監督にちょっと言いたい気分になってしまっていたので、こういう「死の匂い」をもっと出して欲しかったと書かずにはおられなかったのだ。
……というわけで、映画としては物足りなかった。
スクリーンから迫ってくるようなもの、心を抉ってくるような感覚、見てはいけないもの的な非日常の何かを覗いてしまった後ろめたさなど……求めていたものの何かひとつでも発見できれば良かったのだけど……拾えなかった。心には届かなかった。届きそうだったけど、そんなエグさは途中で消えていた。
とはいえ、映画としての節度は保てていた。
この映画を観たあとで、とある批評家のレビューを読んだが、まあ政治的にLGBT方面にこの映画を利用したくてたまらないといった内容で、非情にキモかった。
批評というより、政治系の活動家による印象操作、誘導、洗脳系で吐き気がした。
この映画が、そのようなプロパガンダに屈しなくて良かったと思う。それは映画の敗北だと思うからだ。