「怪物とは何か、、」怪物 haginoさんの映画レビュー(感想・評価)
怪物とは何か、、
最初予告見た時、なんかホラー的なものかと思って見ようと思ってませんでしたが、後から思っていたのと違う系統だとわかって見に行きました。
映画は3人の視点で構成されていて、
最初は湊の母、湊の担任保利、そして湊となっています。
作り的には、湊かなえさんの本と似てるなあと思いました。それぞれの視点で見ることにより、実際はこういうことだった、というのが見えてきます。
前触れもなく、月日が戻るので、見ていて、あれ?となりましたが、それは一瞬だけでした。
●湊の母
湊の水筒から泥が出てきたり、怪我をして帰ったり、僕の脳は豚なんだと言い出したりするので、問いただすと、先生にやられたという。
クラスメイトの依里の家に聞きに行くと、湊の片方の靴があったりして、湊が貸してくれたという。そして学校で湊がいじめられてると思い、真実を確かめるべく学校に行くも、先生も校長先生もただすみませんと謝るばかりで、気持ちもなく、何もわからない。
ある日家に帰ってこない湊を心配して、依里に聞いて秘密基地の場所へ迎えにいく。その帰り道、湊は走っている車からドアを開けて飛び降りる。
母は湊が自殺しようとしたと考え、先生を辞めさせるように動いていく。
そして全てが終わったと思った嵐の日、湊の姿は消えていた。
母にとっては、学校そのものが怪物だった。
● 保利
担任になったばかりの新米教師で、自分の小学校の時の作文を読んだり、子供達に少しでも馴染もうと頑張っている。ある日教室で湊がクラスメイトの体操着を投げて暴れていた。依里は上履きを隠されたりトイレに閉じ込められたりして、湊がいじめてると思うようになる。
そして、湊の母が乗り込んできて、自分が湊に暴力をふるったとか、暴言を吐いたとか身に覚えのないことばかり言われる。校長や先輩の先生方には、こういう対処はまかせておけ、とりあえず謝れと指示される。ガールズバーに行ってたという噂も立ち、学校を辞めさせられる。
保利は週刊誌の誤植を見つけるのが趣味で、ある日未添削の生徒の作文を何気に添削して、湊と依里の関係性に気づいて家を飛び出していく。
保利にとっては、湊の母や先生たちが怪物であった。保利を信用できなくなって、自分の対面を気にして、離れていった彼女もまた怪物かもしれない。
●湊
湊のクラスでは依里に対するいじめがあり、自分に飛び火するのを恐れて、学校では庇えなかった。でも外では、依里は自分の知らないことをいろいろ教えてくれて一緒にいるのが楽しかった。
壊れたバスを秘密基地にして、2人だけの時間を楽しんでいた。
依里は父親から虐待されていて、「お前は豚の脳みそだ、病気なんだ」と言われ続けていた。
一方湊は、母から「お父さんのようにかっこよく生きて、結婚して子供ができるまで見守ってるから」、先生からは「男だろ」と言われたりして、当たり前の生き方というものに反発を覚えていた。
父は実は浮気相手と一緒に事故で死んだのに、それを無かったことにして母は正当化していた。
2人は似たような苦しみを持っていたのだろう。
依里が豚の脳なら自分もそうなんだと自ら追い詰めていく。
依里は父親がガールズバーに行ってることを知り、そのビルごと燃やしてしまおうと火をつけたように思わせるシーンもあるが、これはどっちだったのかな。
死んだ猫を湊と葬るシーンがあるので、それだったのかも。
湊にとっては、母や先生、依里にとっては父やクラスメイトが怪物、そして自分自身もまた怪物だったのかもしれない。
夜帰らなかったのも、単に依里を待っていただけで、母が迎えにいた時、その後ろに依里もいたが姿を隠した。でも帰りの車の中で依里からの着信があり、まだそこにいると思って車から飛び降りたのだった。
ラストは、湊と依里が嵐の中バスの秘密基地から脱出すと、青空が広がっている。草むらに駆け出す2人は心から笑っている。
死んでしまったのか、それとも現実なのか、、
もし生きていて、依里が祖母に引き取られたとしたら、湊と離れ離れになってしまう。
心の支えがいなくなってしまったら、2人はやはり現実に耐えられなくて死を選んでしまうかもしれない。