劇場公開日 2023年6月2日

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「難易度が高すぎる令和版「羅生門」」怪物 0UTSIDER109さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0難易度が高すぎる令和版「羅生門」

2023年6月17日
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鑑賞方法:映画館

「真実は藪の中」という言葉は日本映画屈指の名作「羅生門」の原作になった芥川龍之介先生の「藪の中」という小説のタイトルから来ている。羅生門のストーリーは多くの人もご存じだと思うのであえて語らないが、ある小学校で起きた些細な喧嘩の真相を「親」「先生」「子供たち」それぞれの視線で描いていくこの映画の手法は、まさに「令和版羅生門」であると言えるだろう。

この映画の中頃で、ある人物が話している「穿った見方」についてのシーンに注目した人は多くはないと思うが、私はそれこそがこの映画の隠されたテーマ「穿った見方(物事の本質)を見ることの大切さ」ではないかと思う。わずか数行のツイートや発言で人生が破滅することが当たり前になってしまった今の時代、ひとつの行動の裏に隠された本当の意味を見つけるのは非常に困難である。インターネット社会の今、正義と思った発言が別の誰かを傷つけ、傷ついた誰かを守るための発言がまた別の誰かを傷つけている。まさに現在人は、ある意味では全員が「怪物」であると同時に、全員が「怪物の被害者」になってしまっているのも事実である。
そして、そんな世界における唯一の未来はいまだ「何者」にもなっていない子供達である。そんな「何者」にもなっていない子供たちを「怪物」に育ててしまうかどうかは我々の手にかかっているのも明確の事実である。

長々と述べたが、本作に関してはとりあえず一回観てほしい。群盲象を評すの例えの如く、この映画は「藪の中」に隠された答えを手探りで探していくような映画なのだ。藪の中から鬼が出てくるか蛇が出るかは本人の人生観が大きく影響されるだろう。とにかく観終わった後は考察を語り合うのが楽しみな映画である。ただ一つだけはっきりしているのは主役の子役ふたりの演技はまさに「怪物」レベルだということだ。

0UTSIDER109