劇場公開日 2023年6月2日

「実写映画の限界を感じたが、同時に実写映画としての最高峰を感じた」怪物 夜月さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5実写映画の限界を感じたが、同時に実写映画としての最高峰を感じた

2023年6月13日
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知的

難しい

何が言いたかったのか分からない。
そういうレビューを度々見かけました。
その通りだと私も思います。
一般的に、物語には二つの意味合いがあるのではないでしょうか。
一つは、命題の提示。
そしてもう一つは、その作品なりの解答。
例えば、友情とはなんぞやと問い、友情とはこれだと示す。
そこまで行って一つの作品だと私は思います。
この作品は、この作品なりの解答を示しません。
2時間という時間を使って、終始私たちに問いかけてきます。
怪物とはなんぞや、と。
ですが、これは仕方のないことなのではないかとも私は思います。
普段、アニメ、漫画などの二次元を好んでいる私からすれば、実写映画というものは情報が観客に伝わりにくいメディアです。
キャラクターの感情一つ伝えることだって、いくらでも誇張が出来る二次元に比べて困難だと言えるでしょう。
同じ2時間という尺であるならば、実写映画というだけで伝えられる情報は限られてしまいます。
けれど、ならばこその今作なのではないかと、私は
考えました。
中途半端に命題を提示し、中途半端に解答を示す。
そうすれば一定の完成度は保てたかもしれません。
けれど、敢えて命題の提示に全てを注ぎ込み、観た者に最大の爪痕を残す。
もしもそのような意図であるならば、これこそが実写映画という範囲での最高峰なのではないでしょうか。
勿論、自分で考えさせられるのではなく解答を示して欲しい人たちには無価値である可能性も存分に孕んでおり、そういった意味では全国放映の映画として欠点ではあるのかと思います。
私は考察も大好きなので個人的には命題投げっぱなし上等で星5をつけたいくらいですが、客観的にレビューをするなら3.5くらいかなと。

後、いくら考えても飴ちゃん食べるのだけはおかしくないです?

夜月
夜月さんのコメント
2023年6月13日

私が観たことがある実写映画ではあまり命題の提示のみを強烈にというものがなかったもので物珍しく思いその点に感動したのですが、今思えばホラー、ミステリー、恋愛など命題の提示で終わらせては消化不良になるジャンルばかりだった気がします。
今回の映画を観たのは偶然だったので、これを機にそういった系統の作品にも手を出してみようと思います。

恋人からもらった飴玉という視点、そもそも私の中に記憶がないので拾いきれていなかった点です。
それならば納得です。
再視聴して一度では拾いきれなかった伏線の回収をしてみたいと思いました。

夜月
ばんちぃままさんのコメント
2023年6月13日

こんにちは。
命題を投げかけて終わるのは純文学や映画では常套なんですけどね。

アニメ、漫画、ドラマ中心層にはなんだこれなのかもしれませんが。

とはいえ、設定が絶妙で映像化されていない部分も想像できてしまうのがこの作品の秀逸なところだと思います。

主人公の少年を小学生にしたこと。
LGBTを扱いたいなら中学生でも良かったんです。
しかし、それは一要素でしかないから小学生なんでしょう。

小学校の教師って殆ど一日中自分のクラスの子どもたちとすごします。
他人の子ども数十人とたった1人で対峙するんです。
しかもまだ自分の気持ちを上手く伝える表現力は持たないし、大人の支配下でもある。
子どもたちが信じられなくなったらそれこそ一人ひとりが怪物に見えます。
自分の主張も聞いてもらえずしてもいない体罰を謝罪させられるなんて地獄でしかないです。

敵意むき出しの保護者(この時点ではいじめの張本人の保護者と考えている)の前に引き出された保利が気持ちを落ち着かせようと恋人からもらった飴を「無意識に」口に含んだという伏線回収にわたしは膝をたたきましたよ。

ばんちぃまま