「誰もが優しくあったからこその悲劇」怪物 こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
誰もが優しくあったからこその悲劇
視点が変わる度に、さっきまでこういうことだろう、こういう人物だろうと思ってたものがガラリと変わる。
立場や視点で起きてる事実はひとつでも受け取るイメージがあまりにも違うのに驚かされる。
さらには誰もができるだけ大切な人を傷つけまいとついた嘘が、巡って1番のダメージを与えることになる悲しさだ。
ずっと、なぜ?と抱く問いの答えが徐々に明かされていくに従い、なぜからどうしてに変わっていく。
完璧な組み立て。
あまりにも悲しく切ない。
走らないはずの線路、窓が上部になってたということは、車両が嵐で崩れた土砂で横転したということなのだろう。
つまりラストはそういうことだよね…。
怪物というのは、己が理解出来ないものを外部が勝手にそう呼ぶ言葉。自分からそうは言わない。怪物を生み出すのは周りの人間なのかもしれない。
追記として。田中裕子演じる校長が、湊くんに「誰でも手に入れられるものを幸せと~」のセリフ。
すぐには自分の中で理解ができず引っかかっていたのですが、時間を置いたら納得が出来ました。
私が独身だったころに母がいきなり「あんた達(私を含めた友人数人)でAちゃんは幸せね。公務員と結婚して子供もいて」と言いました。当時私は、独身でも私けっこう楽しく過ごしてるんだがそこは無視?え?娘に私は不幸だわって思って暮らして欲しいのか?となんとも嫌な気持ちになったものでした。
作中のあのセリフを思うにこういうことなのですね。いわゆる「みんな」「平均的に」そうしてる、というものをほとんどの人は幸せと呼び、当てはまらない人々の気持ちや考えなどは見ようとしない。
改めてすごい脚本だと唸りました。