劇場公開日 2023年6月2日

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「ずっと胸が締め付けられながら観た。「藪の中」とは作りが違う。元気なときに見に行って下さい」怪物 くまくまさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ずっと胸が締め付けられながら観た。「藪の中」とは作りが違う。元気なときに見に行って下さい

2023年6月8日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

誰かの嘘、誰かの憶測、誰かの噂、誰かの保身、誰かの憂さ晴らし、そういった大きいものから小さいものまで、色んな人の色んな闇がどんどん、どんどん積み重なって、怪物をつくって行く。誰の中にもあるそういった闇が怪物なのかもしれない。その怪物は弱い人、少数派を追いやっても行く。ずっと胸が締め付けられながら苦しく見た。うつ映画なので、元気なときに見に行った方が良い。

序盤に展開するストーリーから、これは何があったのだろう、誰が何をしたのだろうと、一種のミステリーになって真実は何なのか気になってしょうがない。見終わった瞬間は星4.5かな、と。ただ、思い返すと気になるところが出てきて、少しマイナスしました。

誰かの目から見たらこうです、ある人の目から見たらこうです、真実や如何に?という「藪の中」とは異なり、後半、徐々に見えていないことが明かされて分かる1つの真実。認識の違いというより、人間には見えていないことも多い、そして、それは捉え方を一変させることもある。
「藪の中」「羅生門」とは異なり、誰かの語り、つまり主観が入った状態で話を知らされるのではなく、観客は客観的な事実として話を追っていくため、前半と後半のある人物の違いは、ミスリードを狙い過ぎではないだろうか。他の方がコメントされていたが演出ミスではとも思えた。
また、真実が分かったときに、それぞれの事情から、そうかあの行動はこういう理由だったんだね、それはやむを得ないよね、と思えるところと、その部分が弱いところがあり、少しマイナス。もっとピースが全部カチッとハマり、おおお、さすがカンヌ脚本賞!と思いたかった。特に校長は、人物造形に一貫性が感じられず、田中裕子さんのぬめっとした演技に寄りかかってるところが大きい。まあ、現実、そんな貫通行動で一貫性のある人はいないから、リアルなのかもしれません。
子役の2人はとてもとても良く、次代の柳楽優弥さんを期待させました。

くまくま