「誰かにとって誰かは『怪物』」怪物 ユタカさんの映画レビュー(感想・評価)
誰かにとって誰かは『怪物』
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圧倒され、圧縮された。この感想が実に当てはまる傑作でした。
3部構成からなる物語は視点が変わるだけで物語としてはどこにでもありそうな問題を描いています。
ただ、この視点が変わるがとても重要なファクターであり、この視点によって僕たち観客はそれぞれの登場人物に同情し、寄り添う。ああでもないこうでもないと予測を立てながら物語を吟味する。怪物探しの果てに気付いたのは全員が全員の最善を尽くしたということ。しかしそれがそれぞれの最善ではあっても誰かにとってはそうではなく、知らず知らずの内に誰かを傷つけ誰かにとっての怪物になっていく。3章はとても美しく、切なく、怪物を探していた自分自身の気持ちが圧縮されるような独特な感情になりました。二人の子どもたちはもっと圧倒され、圧縮されていたのでしょう。普通という常識が作り出した怪物が彼らを抑圧したのかなぁ。2つの楽器から鳴る怪物の鳴き声は抑圧された悲鳴にも高らかに生を謳う叫びにも聴こえました。天国なのか現実なのかはそれぞれの解釈によるのでしょうが、せめて2人の行先に幸せが多くあらんことを。今年イチの傑作です。
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