「ミステリー×超絶青春映画。真の怪物とはなんだったのか?」怪物 ともさんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリー×超絶青春映画。真の怪物とはなんだったのか?
「かいぶつだーれだ」と、真の悪人を探していく『告白』みたいなミステリー映画かなと思ったら、思いのほか青春映画だった!
観終わったあとは、2人の世界の余韻に浸るとともに、怪物の実態について1人で悶々と考えてしまった。
全てについての答えをださずに、観客に考えを促させてくれる余白のある、素晴らしい映画だった。
1章では安藤さくら演じる母の視点で物語が描かれる。
息子の中に怪物が潜んでいるのか?
やはり担任の先生が怪物なのか?
星川君も、良い子過ぎるのがどこか不気味で怪しい…
校長先生も酷い人で、怪物のようだ…
と、取り囲む全ての人が怪物のように見える。
必死にもがく安藤さくらに全力で感情移入させられるし、一緒になって「息子は実はいじめをしていたのではないか?」なんて考え込んでしまう。
担任も校長も学校も本当にクソ。息子の行動が突拍子なさすぎて「なんなんだコイツは!!」と思う。
難解な点が多過ぎて、めちゃくちゃ引き込まれる第1章。
2章は担任の先生の視点。
1章の母の視点とは大きく異なる印象で、同じ出来事が描かれる。
1章では難解だった先生の行動の真意が、種明かしをするかのように明かされていく。
私と職種が似てるので、これまた全力で感情移入した。
子どもに親に同僚にって、色んなことを言われて板挟みになって…やってらんねぇよなこの仕事!
職や恋人や社会的な居場所を失ってもなお、「子どもを助けたい」「謝罪をしたい」と必死になって探す先生の姿は美しかった。
子どもたちの世界は、見えそうで本当のところは見えなくて、何を考えているのかわからない行動ばかり…!ここも共感ポイントだった。
3章は、息子のみなと視点。
大人たちの視点からは全く見えていなかった、子どもたちの社会や、少年2人の関係、など真実が見えてくる。
少年2人の秘密基地が、秘密の関係が、あまりに美し過ぎてもう直視できないくらいだった…。刹那的でキラキラしてて、心がギュッとなる。
1章2章では全く想像だにしなかったセクシュアリティの問題に少年たちは直面していたんだということを知って驚いた…。
(セクシュアリティの問題といってしまうと、そのテーマがメインで扱われているみたいなイメージになってしまいそうなので、少年の抱える心のモヤモヤの1つがたまたまセクシュアリティに関連するものだったという方が近いのかもしれない。)
大人はついつい子どものことをなんでも把握している気になってしまうし、なんでも打ち明けてくれるだろう(そんなに深い感情や考えはないだろう)と思ってしまう。
でも子どもにだって、そう簡単に人には言えない、例えばセクシュアリティの問題であったり、例えば家庭内での虐待であったり、例えば教室の中の社会の問題と日々戦っていることもある。
この映画の意図や大きなテーマとしては、「誰かの視点から見たら誰だって怪物である」みたいなことが言いたいのかなと思いつつも…
個人的には、「教室全体を取り巻いていた空気感」が1番害悪な怪物の実態だったのではないかなと思った。
いじめをする生徒たち、そしてそれを黙認する生徒たち、次は自分がターゲットにされるかもしれない…そんな緊張感のある教室そのものが、怪物だったように思う。
そしてそんな怪物は、この映画の中にだけじゃなくて、結構な割合の教室や子どもの社会の中にいるのではないかな。
いじめやそれを黙認する空気感、擁護したら次は自分がターゲットにされる…、少なくとも私の過ごした子ども時代の教室は、8割がたそんな実態があった。今も昔も、いじめの割合ってどうしても減らないと思う。
どんな子どもでも、大人にはわからない怪物たちと日々戦っているのではないかな。
謎の多いミステリーな展開で一気に引き込まれる前半。
少年同士の友情と刹那的な美しさ、少年の心のモヤモヤや繊細で感情などなどに目を奪われる後半。
前半があったからこそ、後半の青春映画の要素が陳腐にならず、輝いたのだと思う。
トンネルを抜け、「生まれ変わるための電車」に乗って、地下を抜けて草原を駆け抜けてホワイトアウトしていく終わり方、2人は亡くなって「生まれ変わった」のかなと思いつつも、それを信じたくない自分もいる…。
色んな部分で、答えを見せ切らずに観客に考える余地を与えてくれる、長い余韻に浸れるいい映画だったなと改めておもう。
放火魔の犯人は?校長先生の真実は?と、一度観ただけでは私の頭では理解しきれないところがあったので、他の人の考察も読んでみたい。
わーーーーっと色々思うところがあって、まとめきれない感じもあるのですが、それほどこの映画は良い作品だったということです!!!ここまで読んでくれた方もしいらっしゃったら、駄文で本当に申し訳ない!!!解釈違い存分にあると思うので、ノベライズ版も読みます!ありがとございました😭