「行きあたりばったりで魂の無いキャラクターたちに詰めが甘い描写が目立つ」トロール すけさんの映画レビュー(感想・評価)
行きあたりばったりで魂の無いキャラクターたちに詰めが甘い描写が目立つ
まず最初に、この作品は脚本があまりにもクソすぎるので、「迫力ある怪獣とそれに振り回される人間たちの物語」を求めている人は回れ右して別の作品を探したほうがいいです。
見どころはどこ?と聞かれたら「岩に擬態したトロールが起き上がるシーン」と「トロールがオスロ(ノルウェーの首都)で雄叫びを上げるシーン」としか答えようがないです。
擬態したトロールが起き上がるのは最初の登場シーンなわけですが、トロールでしかできない登場の仕方で良かったです。(主人公がトロールが近くにいることに気付く超自然的な臭いが何なのかは謎でしたが)
また、おとぎ話に出てくる岩の巨人が近代的な街並みに立っているというビジュアルも対比がしっかりとしていて、クオリティ高いCGと相まって良かったです。
ただ、褒められる部分はそこだけ。
ストーリーはあってないようなものでお粗末。
キャラクターたちの行動に共感できず何がしたいのか分からず、トロールを動かすことに意識割かれすぎててトロールがその場所に至るまでの跡が無かったりとVFXも中途半端。
久しぶりに「時間を無駄にしたなぁ」と思った映画でした。
もうまず一番最初に山が崩落して大きなくぼみができた時、「専門家の意見が聞きたい」と首相が言うのですが、そこでなぜ生物学者が必要になるのか。しかも古生物学者である主人公が呼ばれる理由が全くわかりません。
トロールが確認されてから呼ばれるならともかくそうじゃない状況で呼ばれてますからね。
しかももう他の学者が集まって会議が行われているところに途中参加という扱われよう。
主人公がいなくても始められる会議なら最初から呼ばなくてもいいのに。
トロールが一般人の前に出てくるシーンでは遊園地にいきなり現れるわけですが、いやいや周りの木よりも背が高くどっからどう見てもでかいのが近づいてるのがわかるのに「唐突に化け物が現れた!」みたいになるわけないだろと。
それが許されるのは空から降ってきたor海から出てきた時だけです。このトロールは普通に山歩いてますからね。
そしてそのトロールが街に近づかないように、苦手であろう鐘の音を聞かせる作戦があるのですが、ヘリに鐘を吊るして周りを飛ぶのはまぁ100歩譲って許せたとしても、その後の描写が『キングコング:髑髏島の巨神』のオマージュなんだろうけどちょっと雑だなと。
しかもそのあと街に向かわず山に向かって歩いていくし。お前何しに来たんだ。
終盤でなぜトロールが街に向かっているかの謎が明かされるわけですが、それはノルウェー王家の地下にトロール王族の死体が埋まってるからだという話で、近代兵器使ってもトロール1体倒せないのに過去のノルウェー王家はどうやってトロールの王族を虐殺したんですかね。不思議ですね。
太陽光を無理矢理浴びさせて全滅させたならともかく、子供を1体残すという余裕すらある。
最後、トロールが太陽光に弱いと分かり紫外線ライトを当てて殺そうとした軍を止め、自然に帰してあげたかったはずの主人公なのに、トロールが目の前で死んでちょっと悲しんだと思ったらその後すぐに「この場所をなんて名前にしようか?」みたいな話で冗談を言い合う主人公の情緒がもうよく分かりません。
そんなわけでこの映画はクソです。
トロールを題材にした映画なら2012年の『トロール・ハンター』のほうがよっぽど面白いのでそちらをぜひ。