「ほのめかしにすぎる。」メグレと若い女の死 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
ほのめかしにすぎる。
1922年。パトリス・ルコント監督。1950年代のパリ。不釣り合いに高級なドレスをまとった若い女が刺殺体で発見された。メグレ警視は女性の身元を探るうちに、地方からパリにやってきて苦労する若い女性に若くして死んだ自らの娘を重ね合わせて、という話。
ジェラール・ドパルデューがすっかり老け込んだ肥満気味の警視。原作を想起させるための小ネタを随所にちりばめてファンをくすぐりつつ、なんらかの感情が湧き上がってくる予感をほのめかしつつ、しかし、決定的な場面、しぐさ、身振りが決定的に描かれるということはない。どこまでもくすぐり、ほのめかす。
愛情と性癖、格差と搾取、結婚と財産、などといったミステリの定石を扱っているのだが、怪しさが中途半端で恐ろしかったり、どきどきしたりしない。若い女性に独特の興味を持つ初老の主人公の視線だけでも、庇護者的なものと性への渇望的なものとが混じり合っているか混じり合っていないのか、でどきどきできたと思うのだが、そうなっていないのは残念。
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