劇場公開日 2023年11月3日

「人形劇のような人間ドラマが嫌らしくなくゴジラの東京破壊を引き立てている点がイイ」ゴジラ-1.0 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5人形劇のような人間ドラマが嫌らしくなくゴジラの東京破壊を引き立てている点がイイ

2024年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ゴジラ映画シリーズは、第1作は名作だが、それ以外は安っぽい特殊撮影と、下手くそな子役を持ち上げたりするものが多く、まともな鑑賞に値するものとしては「シン・ゴジラ」くらいしかなかったのではないか?(ろくに他のを見ていないので保留付きの評価ですw)

そして本作となるのだが、まず特撮面は素晴らしい。子役もあまり出て来ない――ので、従来のシリーズもののマイナスは回避している。

では映画としての出来はどうかということになるが、面食らったのが第二次大戦末期から終戦後という時代設定である。そして、普通なら敗戦後の瓦礫の中で荒み切った社会風潮と貧困生活にもかかわらず、奇妙なことに「○○です」「○○します」と、ですますコトバで会話する丁寧で、人形劇かと思うような登場人物たちには、もっとビックリさせられた。

そして、その作り物めいたキャラクターが、いかにも作り物めいた愛情や使命感、贖罪意識のままに作り物めいたドラマを繰り広げる東京を、ゴジラは破壊しまくり、口から核分裂による火炎砲を発射して、キノコ雲と思しき煙の柱が立ち上がる。それが、不思議なことになかなか小気味よいのであるw

恐らく背景の人間ドラマの部分がリアルで濃厚だったりしたら、むしろ押しつけがましく、嫌な感覚を与えたのではないか? それがスカスカで人形劇っぽいから嫌らしくなく、観客は、主役であるゴジラの襲来と東京の核攻撃を十分堪能できる。そういう仕組みではないか。計算で意図的にやっているとしたら、スゴイと思う。

徒然草枕