「はーーっこりゃ凄いゴジラ見たわ“ゴジラ”は」ゴジラ-1.0 木神さんの映画レビュー(感想・評価)
はーーっこりゃ凄いゴジラ見たわ“ゴジラ”は
庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』に次ぐ純国産にして生誕70周年記念を兼ねる日本制作節目の30作目『ゴジラ‐1.0』を山崎貴監督が手掛ける。結論から言うと“ゴジラ関連”はまさしく記念作として最高の形で応えていた。流石は昭和と日本戦争映画を撮らせたら外れなし男。
『ALWAYS続・3丁目の夕日』『ゴジラ・ザ・ライド』から溢れ漏れていたゴジラ愛が氏の手掛けた『アルキメデスの大戦』『永遠の0』などで培われた撮影手法や白組のVFXと組み合わさった結果、ゴジラ映画ながら戦争映画の側面を持つ独特の作風を築き目新しくも相性抜群の面白さを生んでいる。
従来にはない戦争映画的な雰囲気は海上にてゴジラが新生丸を追跡する所から救援に駆け付けた高雄との戦闘を代表に随所で表れている。本作の舞台が1947年に設定されているのも良い、沈められたり廃棄されるはずだった有名な軍艦や試作戦闘機が日本の未来を勝ち取るためゴジラ相手に再び戦場に赴く構図は否応なしに沸き立たされる。劇中曲も用途の変遷を知っているとかなり感慨深い、銀座と最終決戦それぞれで流れるゴジラのテーマは現在でこそゴジラを表す曲となっているが、元々は人類がゴジラに立ち向かう曲として作曲されたのが原点。それが銀座上陸時は破壊しまわるゴジラのテーマとして流れ、最後の戦いでは初代以来のゴジラに抗う人類のテーマとして原点回帰した演出なのが堪らん、約70年ぶりだで!?
そして忘れてはならないのがゴジラの秀逸な描写の数々。日本軍整備兵を容赦なく蹂躙し頭と剣山の如き背びれを出しながら海上を泳ぎ電車を咥え人と大地を踏み砕きキノコ雲を起こす放射熱戦、これらすべて歴代シリーズからの遺伝子を物語に落とし込んでいるのが実に良き。都市襲撃は初代や84のゴジラ、造形はVSゴジラ、悪魔的破壊力の熱線や終わる事のない不滅の絶望感はGMKの白目ゴジラのそれ、終盤の締めなんて正にまんま。シンゴジが新しい世界観を構築したなら本作は戦争映画にFW以前の世界観が融合したハイブリッド正統派ゴジラと言えよう。
ただ人類パートは微妙。終戦直後なので終始重苦しく辛い雰囲気なのは仕方ないとして、監督お得意の感動演出の前振りで無理な展開が多く、そのお涙頂戴シーンも詰めの甘さが目立つ、死んだと思った母親が生きてたなら子供は大泣きするし、そもそも感動シーンに不穏な描写は不要。政府批判が多めだが初代リスペクトか?良い点を挙げるならシンゴジの様なアニメ調会話じゃない所か、逆を言えばあっちは“それでも”会話が面白かったんだけど。
以上、数々の重責をものともしないゴジラ映画の傑作となった今作、まだ観てない人は ぜひとも! 何とか! 一回でも! 観て欲しいと思う今日この頃。あと同監督がプロデュースした『ゴジラ・ザ・ライド』乗ったんだが、これまたメチャクチャ面白いんで機会があったら是非乗って欲しい。