「やっぱり、いつもの山崎貴作品。」ゴジラ-1.0 ガッキーさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱり、いつもの山崎貴作品。
またか……またなのか、またやっちまったのか!?山崎監督!!!
思わず、こう嘆かざるを得ない、頭を抱える映画でした。
まず、こんな事を言ってると、どうせただの山崎アンチだろう、と浅薄な横槍が入りそうですが、
断言しますが、確かに本心から“ハズレ”と思う過去作もありますが、同時に、“アタリ”と思える作品だってちゃんとあります。
「ALWAYS 三丁目の夕日」は、普通に好きなシリーズですし、
「friends もののけ島のナキ」は、素で号泣しました。
「寄生獣」は、大幅な改変が賛否を呼びましたが、原作ファンの私から観ても、これはこれでアリと思える良作だったと思います(「完結編」の方はダメでしたが)。
「アルキメデスの大戦」は、巷でも好評が多いのも納得の、見事な傑作でした。
あと、必ず槍玉に挙げられてしまう「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」ですが、
意外に思われるかもしれませんが、私は普通に気に入っている作品です。
つまり何が言いたいかと言うと、同じ山崎貴監督作品だからと言って、
べつに頭ごなしに本作を非難している訳では無いのです。
で、前置きが長くなりましたが、
今回はと言うと、また“ハズレ”の方の山崎作品……と言いたい所ですが、
譲歩して、“ハズレ”寄りの“普通”でしたね。
長文になってしまうので、
良かった点、惜しかった点、ダメだった点、を区分けして述べさせて頂こうと思います。
◯良かった点。
VFX。
さすがの自分でも、これには関しては圧倒されました。さすが山崎監督と唸らざるを得ません。
ハリウッドと互角に戦えるレベル……とまで言うと角が立つかもしれませんが、それぐらいの大迫力だった。音響も物凄かった。
「アルキメデスの大戦」の戦闘シーンも見事でしたが、更にアップグレードされた感があります。
ストーリー。
“外枠だけ”は、よく出来ていたと思います。
戦争で生き残ってしまった人々を、及び戦争により全てを失った日本を、災厄であるゴジラが襲うという更なる絶望感。しかも敷島はPTSD。
「ALWAYS 三丁目の夕日」の茶川のように、縁もゆかりも無い他人同士に、新たな希望を見出そうとしていた敷島が「大切なもの」を奪われてしまい、
皮肉にもゴジラへの復讐心から、自らのトラウマと対峙する“覚悟”に目覚める。
同時に、橘との遺恨にもケリを付けるため、決戦に臨む…
そしてラストは、本当の意味で、自身の“幸せ”を手に入れる。
大体、こんなあらすじですが、この外枠だけだと、王道ながらも普通に良作っぽい作りに見えます。
「生きて、抗う」というキャッチコピーも合っていると思います。
「戦後(直後)」と「ゴジラ」を密接させたのも良かったですね。
◯惜しかった点
ゴジラの初登場シーン。
早々に登場させたのは結構ですが、あまりにもあっさりと登場させすぎです。
全容を見せるのが早すぎるんですよ。
最初の襲撃と海上の時はチラ見せ程度にして、銀座襲撃の時に全容を見せる、ぐらいの“溜め”がほしかったですね。
ギャレス・エドワーズ版「GODZILLA」は、その辺だけは上手かったです。
ゴジラの出番が少なすぎる。
VFX・音響が素晴らしかっただけに、これも実に勿体なかったですね。あともう一回、大暴れするシーンが欲しかったです。
◯悪かった点。
ストーリー。
肝心の“中身”の部分に関しては、はっきり言ってスカスカです。
あの人はこうなるんだろうなー、こうするんだろうなー、という予定調和だらけの展開。
人物の不自然だらけの行動、そして極め付けは説明のオンパレード。
これはもう本当に山崎監督の最大の短所ですね。もういい加減にしてくれよと思いました。
「仇をとりたい」、「無理だ…」(ゴジラを目の前にした秋津が)、「俺の戦争はまだ終わってない」
こんな事をいちいち台詞で言わすな!
ラストも酷いですね。
これも山崎貴監督のよくやる悪いパターンですが、無理にハッピーエンドに転換しようとするから案の定、薄っぺらいものになってしまっていました。
「アルキメデスの大戦」は、その逆をやったから上手くいったのだと思います。
なお、本多猪四郎監督の初代の「ゴジラ」を引き合いに出している人もいますが、
あの、ドキュメンタリーと見紛うほどの生々しい野戦病院のシーンと、
本作に出てきた、あの小綺麗な病院内のシーンの時点で、引き合いに出すことがいかにお門違いなのかがよく分かります。
まとめますが、確かに前半は観てて唸るほど良かったです。ところが、観終わって頭を整理したら、不満点が出るわ出るわ。
これが最高傑作とは、いくらなんでも首を傾げます。そもそも、最高傑作だのと断言している人がやたら多いのですが、本当に過去の膨大の数の「ゴジラ」作品を全部観ているのでしょうか。
興行的には、日本では記録的な大ヒット、海外でも絶賛レビューが多いと言う好成績ぶりですが、なんとも個人的には複雑な心境です。
色々とダラダラと不平を述べましたが、なんだかんだで、伊福部昭氏の例のテーマ曲で許せてしまうんですけどね。