「最大抵抗」ゴジラ-1.0 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
最大抵抗
ジャパニーズゴジラシリーズをリアルタイムで劇場で鑑賞するのは初めてです(シン・ゴジラはコロナ禍のリバイバル上映にて。アニメゴジラは未鑑賞。それ以前の平成ゴジラたちももれなく劇場では見れてないです。)。山崎監督の悪い癖が発動してしまうのか、それとも劇的なゴジラが誕生するのか、さまざまな意味で上映前からワクワクさせてくれました。
1から10まで最高、とにかく絶望に次ぐ絶望、ゴジラという存在の恐ろしさをこれでもかと知らしめた大傑作でした。ハリウッドをも超える圧倒的映像技術に惚れ惚れし、立ち上がる人々の総攻撃っぷり、熱くしてくれるもの満載でした。
なんてったってゴジラの存在感が素晴らしかったです。ハリウッドでのゴジラはどうしても怪獣プロレスの相手だったり、ひたすら暴れ回れるマシーンの様だったのですが、今作ではしっかりとその姿を現して、人々を踏み潰し、食いちぎり、尻尾でもぶっ飛ばして、これでもかと街を破壊する様はまさにモンスターでした。
海上での砲撃は食らっても食らってもお構いなし、何倍にしてでもお返ししてやるというゴジラのえげつない攻撃力を堪能できます。島の戦いでも十分恐怖を感じたのに、本当にゴジラに勝てるのかという絶望に叩き落としてくれました。
銀座でのゴジラの暴れっぷり、怪獣映画最高のシーンなんじゃないかってレベルでした。
初っ端電車を投げ飛ばして進路を塞いだかと思いきや、その電車を噛みちぎってバキバキにして、戦時中も生き残った建物を全て跡形も無く破壊し、吹き飛ばした瓦礫で人々は潰れていき、最終的には背が青白く光り、熱線で街ごと破壊し、破壊の衝撃の爆風によって数多の人々を吹き飛ばしていくというもう絶望まみれの絵面にスクリーン越しでも恐怖を覚えてしまいました。
典子も衝撃で吹き飛んでいってしまい、絶望に陥ってる敷島に黒い雨が降り注ぐ、ゴジラが放射線の象徴だったというのを改めて印象付ける演出も粋だなと思いました。
正攻法ではゴジラは倒せない、ならば人間の知恵をフル活用してゴジラを倒そうと思い切った決断に踏み切ってそれらの作戦を事細かく説明してくれたのも分かりやすさに拍車をかけていました。
戦後間もない日本だからこそ、かすかに残っている戦争の記憶を払拭し、自分たちの戦争を終わらせると覚悟した男たちの背中は本当に偉大なものでした。
最後の総攻撃、もうこれは圧巻と言わんばかりの戦闘描写でした。
ゴジラを海底まで沈めて息を止め、止まらない場合は海面まで急浮上させて気圧に耐えられない様にするという2重のプランで挑む海上戦が見応え抜群で、ゴジラの攻撃もとてつもないですが、うまいこと沈めた後も油断せず再び浮上させるプラン、それもダメでも諦めずに挑み、そこに地上に残っていたはずの仲間たちが総集結してゴジラを追い詰める様子は執念がこれでもかと感じられました。
宣伝文句にもある"生きて抗え"の通り、敷島の特攻も脱出装置を使って回避し、特攻機をゴジラの口の中に突っ込ませて破壊するというド派手なラストも手に汗握るものに仕上がっていました。パラシュートで無事に抜け出した敷島含め肩を組んで讃え合い、無事に全員帰還したというのも最高な終わり方だなと思いました。
人間ドラマも感動に偏らずに戦後間もない時代に立ちあがろうとする人々の前向きに生きる姿や、ゴジラに対して恐れを隠せない様子、政府もGHQも頼りにならない現状から脱却するために思考を練ってゴジラを倒すために立ち上がる様子などなど、ゴジラが暴れていない間もその存在感は消さず、常に緊張感漂うドラマの描き方が本当に凄かったです。
今作の特徴的な部分として、死ぬのは名誉ではないというのを強く描いている事です。巻き込まれて死んでしまうという辛いものとは違い、特攻なんて簡単に命を捨てると同義でお国のためなんてただの綺麗事だなと歴史の授業を習っている時も思っていましたが、最初の島に上陸した際に敷島に修理兵が投げかけた言葉が「アンタみたいな人間がいても良いんじゃないっすか」という言葉はさりげないですが、今作や山崎監督の考え方を示すには十分な一言だったなと思いました。
音楽も耳馴染みのある曲たちがこれでもかってくらいに映画の中で活き活きしていました。ゴジラ登場のシーンのおどろおどろしい音楽も、人間たちが反逆の狼煙を上げる際に用いられているのがまた胸熱でした。ここまでこの曲がカッコよくなるのか…!と痺れました。
役者陣も好演連発で、本当にこの時代に生きてる人たちなんじゃないかってくらいのリアルさでした。感情むき出しになる佐々木蔵之介さんが1番好きです。
エンドロール前では無事だった典子が映されますが、首元には黒いアザが、そして肉塊になったはずのゴジラが再生している様子が…。ゴジラはただでは終わらない、そんな次回作への布石も込めたラストにはゾクゾクさせられっぱなしでした。
リアルタイムでゴジラを大スクリーンで体験できたのが本当に嬉しかったです。観る前の不安なんてもうどこかへ行き、もう一度体感したいという興奮に変わりました。新たなゴジラ時代の始まりです。
鑑賞日 11/3
鑑賞時間 14:40〜17:00
座席 N-28