「ミステリーにしてはお粗末で、マッチングアプリを題材に選んだ理由も分からない」マッチング tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリーにしてはお粗末で、マッチングアプリを題材に選んだ理由も分からない
この手の映画では、「怪しそうな人物が実は犯人ではない」というのが定石だが、序盤で、いかにも怪しそうな男が、主人公に警告した時点で、誰が犯人かが分かってしまう(それ以前に、キャスティングの時点で察しがついてしまうのだが•••)のはいただけない。
その後、回想シーンで、主人公の父親の不倫相手に息子がおり、さらに、彼女が子供を身籠ったことが判明すると、誰と誰が兄弟なのかも分かってしまい、終盤で、散々もったいぶった挙げ句に、ようやくそのことが明らかにされても、何の驚きも感じられない。
アプリ婚の夫婦をターゲットにした連続殺人事件の捜査なら、そのアプリの関係者を疑って然るべきなのに、結婚式場のウエディングプランナーに目をつける警察も、無能でお粗末すぎる。
そもそも、タイトルにもなっているマッチングアプリが、作劇上、何の役割も果たしていないのは、どうしたことだろう。
当然、「デジタル社会の功罪」みたいなことが大きなテーマになっているのだろうと期待したのだが、「マッチングアプリ」を「結婚相談所」に置き換えても、何の問題もなく物語が成立してしまい、これでは、何のためにこの題材を選んだのかさえも分からなくなる。
主人公の父親がのめり込む、一昔前の出会い系チャットも同様で、ネットやデジタルの負の側面を炙り出しているようにはとても思えない。
ラストで明かされる連続殺人事件の真犯人にしても、その動機や目的が不明で、どうしてあのような猟奇的な殺し方をしたのかも分からず、ミステリーとしては完全に破綻しているとしか言いようがない。
単に、観客を驚かせたかっただけなのかもしれないが、そうだとしたら、作り手のセンスを疑うし、観客を馬鹿にしているとしか思えない。