「恐怖の累積を感じない機械的なシナリオだが、ラストのオチは悪くない」マッチング Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
恐怖の累積を感じない機械的なシナリオだが、ラストのオチは悪くない
2024.2.23(イオンシネマ久御山)
2024年の日本映画(110分、G)
ウェディングプランナーがアプリでマッチングした相手に翻弄され、自身の周囲が殺人事件に巻き込まれる様子を描くスリラー映画
監督&脚本は内田英治
物語の舞台は都内某所
そこでウェディングプランナーとして働いている輪花(土屋太鳳、幼少期:川口玲那)は、父・芳樹(杉本哲太、若年期:藤本タケ)と二人暮らしをしていたが、浮いた話など一切なく、週末の酒の相手はずっと父親だった
輪花の母は20年以上前に家を出て行ったきり音信不通で、その手がかりすらなかった
親友で同僚の尚美(片山萌美)は、出会いのない輪花を心配して、巷で流行っているマッチングアプリ「ウィルウィル」をインストールさせたがっていた
やむを得ずに登録だけは済ました輪花だったが、それっきり動く気配もない
それを見兼ねた尚美は、勝手にアプリを操作して、相性抜群の相手・トム(佐久間大介)を見つけてしまい、輪花も仕方なくマッチングをさせることにした
それから文字でのやり取りをする輪花だったが、相手が一方的に書き込む展開で関係は進まない
その進展の遅さに苛立ちを見せる尚美は、またもや勝手に「会いましょう」とメッセージを送ってしまうのである
映画は、輪花の会社と利用しているアプリの運営会社が合同事業を始めるところから動き出す
尚美の計らいで、アプリ開発者・影山剛(金子ノブアキ、幼少期:山口太幹)にトムの相談を持ちかけるところから動き出す
影山の会社もアプリ利用者の連続殺人事件に頭を悩ませていて、とうとう輪花が手がけた夫婦も犠牲者になってしまう
さらにそれだけではなく、恩師・片山夫妻も犯人の餌食になってしまい、彼女はその関係をマスコミに暴露されてしまうのである
と、マッチングは導入だけのアイテムになっていて、マッチングアプリの怖さというのもほとんど感じない
このマッチングによって輪花はトムと会うことになるのだが、この偶然の出来事が「輪花側のアクション」になっていて、様々な因果とか展開を考えてみるとおかしな感じになっている
影山が輪花に近づく目的は理解できるので、アプリの相談ができる立場になれるように仕向けることもできるだろう
でも、影山とのコンタクトも「輪花側(正確には尚美)のアクション」になっていて、こちらも偶然の出来事になっている
これらの導入とか、人の出会いなどは偶発的を装いながら、結果的には異父母兄弟妹の関係であるという構図があるので、ある程度「仕掛け」を施していた方が良かったように思う
一番わかりやすいのは、トムと影山の思惑が一致させ、輪花と近づくための演出を施すことだと感じた
映画は全体的に作り込みが整然としていて、この展開を作るためにはこの展開をというように目的から逆算して作っているように思える
それがかなり機械的な逆算になっていて、順序立てた場合に、その動きに人間臭さというものを感じない
その点がもう少しクリアになった方がのめりこめると思うし、輪花に降りかかっている難題が多すぎてフォーカスされていないのも問題のように思える
終わってみたら全て繋がっているというのは良いと思うのだが、父の浮気発覚→父の死、トムが尚美に接近→尚美の死という感じで、それぞれのエピソードが独立して次々に重なるというところが恐怖の累積を産んでいないように思えてしまうのである
いずれにせよ、この手の「いつの間にか閉鎖空間スリラー」というのは、その沼にハマっている理由がわからないように進行するのがベストで、数多くの事象に「ある共通点」があって、それが一気に解明されるという爽快感が必要になってくる
この映画の場合は、それぞれのエピソードで想定される犯人像というものが事前にわかるし、それをほぼ裏切らないので、答え合わせの際に驚きがない
あまりにも狭い世界の復讐劇にしかなっていないので、人間関係を絡ませすぎたことで、さらにスケールの小さな話になってしまっているのは勿体無いなあと感じた