「漫画に取り憑かれた漫画家」零落 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
漫画に取り憑かれた漫画家
業(ごう)と言うか?
煩悩か?
売れたい欲か?
つまりは強欲だな!
まず陰々滅々たる前半と、
晴れ上がった空のような後半。
ガラリと変わる。
冒頭からの暗さ、
(でも題字が凄く良い字で、
(続くのピアノ曲がとてもセンス良い、
(などで、心掴まれる)
漫画家・深澤薫(斎藤工)は8年連載した漫画が完結した。
燃えカス状態なのに、早く次作に心を切り替えようと
焦るほど、心も身体も言うことをきかない。
書けないと悩む私小説作家みたいな漫画をはじめて知った。
《零落=れいらく=落ち目、か?》
書けない悩みに七転八倒する漫画家・深澤薫は、
心底やな奴、ムカつく男。
本音で接するのは飼い猫のミーと、風俗嬢だけ。
しかしこの男、根っからの屑ではない。
風俗嬢を低く見ない、むしろ自分の欠落を埋める天使として敬意を払う。
風俗嬢のちふゆ(趣里)とのシーンはロマンティックだ。
で、後半、
お気に入りの風俗嬢“ちふゆ“の郷里に付いて行くことになる。
ここからは自然が生き生きと描写され、
風景が明るくなる。
「旅先」「毛虫色の電車」「私服のちふゆは子供みたい」
「ちふゆの昔話・・・100円の漫画本を毎日買いに行く幼なじみ」
深澤も心を開放して“ちふゆ“との旅を楽しむ。
ちふゆを演じるのは趣里。
OTOCOTOを読んでいたら、浅野いにお描く
「歓楽街に佇む、ちふゆ」の絵が載っていた。
自販機の前に立つ“ちふゆ“
中学生みたいな猫顔の幼ない娘。ネオンの灯。店の看板。
インパクトのある絵。惹かれる。メッチャ絵上手い。
プロだ、上手いのは当たり前だな。
趣里そのまんま、
(なんでこんなに女は足が細くなきゃダメなの?)
(と、キレかかる。
(少女しか愛せないおっさんかよ‼️
(ちょっとムカつく。
(そういや、脚フェチ映像・・多かったな・・
やっぱ斎藤工がスゲー良かった。
自意識過剰!!自己顕示欲の塊‼️
ナルシスト‼️自分勝手!!
漫画家のヒエラルキーは売れる順番。
読者人気アンケート31位。
そりゃ担当からも馬鹿にされるわ!!
売れたもん勝ち!!
1年半書けなくて、流浪して、ちふゆの郷里でちふゆの秘密を知って、
とうとうか?やっとか?
活力が湧いて来る。
踏ん切りがつく。
《俺は俺だー》
多分そう思って開き直ったんだよ!
「感動しました、泣けました」
と、サイン会でファンが言う。
「はい、馬鹿でも泣けるように書きました」
この台詞、言ってみたいだろね!!
多くの漫画家や作家、脚本家・・・の皆さん!!
「馬鹿を舐めんじゃねーよ!!」
監督の竹中直人はこの「零落」に惚れ込んで、
「映画にするぞー」と突っ走ったそうだ。
その熱が伝わって来る。
原作者の浅野いにお。
どんな絵を描くかも、作品も殆ど知らなかった。
映画化された「うみべの女の子」は良かった。
けっこうアダルト。
作風はひねくれてる。
いいじゃん、
ラストのイメチェンした藤澤薫。
斎藤工はメガネとど派手な服に変えたら、
成り上がりの成金にしか見えない。
《零=ゼロ=から這い上がった男になっていた》
その分、さらに、ますます、嫌味な男。
そこんところは観客にも全然媚びてなくて、
潔い。
好感持てない徹底的に、やな奴!!
(しかし、猫顔の女=玉城ティナの言う【化け物】は、
(ちと大袈裟‼️
監督(竹中直人)
脚本(倉持裕)
音楽(志摩遼平)
撮影(柳田裕男)
文学的なこの作品の良さを語る文章力は
私には無い。
全部がとても良かった。
としか書けない。
なんか強制しちゃったみたい?失礼しました。くだらない〜とあきらめる人もいるでしょうが、プンプンの正体もだんだんわかって、感動もする奥深い漫画ですよ。