「ロッキーは出ないんですね」クリード 過去の逆襲 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ロッキーは出ないんですね
前作どころか、「クリード」シリーズ未鑑賞なのですが、予告の迫力に興味をそそられて鑑賞してきました。その昔「ロッキー」シリーズを4作目までしか観ていない自分でも、内容は十分に理解でき、おもしろかったです。
ストーリーは、世界チャンピオンにまで上りつめ、今は現役を退いたアドニス・クリードの前に、彼が子どもの頃に兄と慕いながらも、自らの不始末がきっかけとなり逮捕されてしまったデイムが、18年間の服役を終えて現れたことをきっかけに、アドニスが再びリングに上がり、デイムと自身の過去に向き合っていくというもの。
本作は、アドニス自身が目を背けてきた過去に向き合うことが最大のテーマです。そのため、アドニスとデイムの因縁にずっとスポットを当て続ける展開となり、登場人物はそれほど多くなくて話もシンプルです。それでも、デイムとの間に起きた出来事の真相をなかなか明かさず、ためてためてラストの試合にクライマックスをもっていくという展開のおかげで、最後まで飽きずに楽しめます。
肝心の試合のシーンも、最初に描かれたアドニスの引退試合はかなり見応えがありました。試合巧者のアドニスがピンポイントで狙いを定めて勝利を引き寄せた姿が、なかなかかっこよかったです。また、最後のデイム戦では、パンチの衝撃の大きさがびんびん伝わる演出に目が釘付けです。
ただ、全編とおしてアドニスの内面を描くことに重きを置いたため、試合のシーンが少なくなってしまったのは残念でした。最後の試合のシーンも、二人が互いに向き合うという意味で演出を工夫していたと思いますが、試合の臨場感という意味では半減してしまったように感じました。それに、初戦では汚い手を使い、アドニス戦前には弱点をしっかり研究していたデイムが、そこを狙わず、正面から撃ち合っていことも解せません。試合もいつのまにか最終ラウンドになっていて、死闘というにはやや呆気ない幕切れに感じました。
とはいえ、試合後、リングの去り際に見せるデイムの穏やかな表情はとても印象的でした。その後のロッカールームでの二人のやりとりには、涙腺を強く刺激されました。ここでハッとしたのですが、これはすべてデイムの筋書きで、自らがダーティーな役どころに徹し、アドニスを再びリングに上げ、自分を倒させることで、アドニスの抱えた闇を晴らし、彼を救おうとしたのかもしれません。ちょっと考えすぎかもしれませんが、それぐらいデイムが悪い奴に見えなかったということです。そこで気になるのが、彼が書いた手紙の内容です。そこだけはちょっと引っかかります。
キャストは、マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、ジョナサン・メジャースらです。中でもジョナサン・メジャースの演技が秀逸で、本作一番の立役者だと感じました。ちなみにロッキーことシルベスター・スタローンは製作には関わっているものの、出演はしてないんですね。ちょっと残念でした。