「ゆるいTV番組にすぎない何か。」眩暈 VERTIGO comeyさんの映画レビュー(感想・評価)
ゆるいTV番組にすぎない何か。
「吉増剛造とジョナス・メカスがすごい」ということと「この映画がすごい」ということは全く別なんだよね。この映画自体は、要するにCM動画を羅列したTV番組。詩人の言葉が吸引力をもって迫ってくる、その瞬間が「たまたま映り込んだシーン」がいくつか生き残っているにすぎないです。
詩人たちの言葉は、きいているとだんだん不思議な重力をはらみはじめるのです。だけどそもそも作り手の考えが甘くて、あるいは映画を「商品」にするのに性急で、この映画は詩人のことばを黙って聞いていられない。だからちゃんと画面を見ることを知っている観客は「ああ、なんでそこでカットするんだよ」「なんでそんなちょろい絵をインサートするの」と何度も何度もつぶやくことになる。
作り手の感覚がCMだから、ニューヨークといえばマンハッタンの輝かしい夜景のドローンショット、タクシーが走る道路、地下鉄のパフォーマーたち…と、ああ、どうにもこうにもありきたりすぎる映像ばかりがずらりと並ぶ。雪山とか海とか鳥とか馬とかの「おまえらこんなの好きだろ」なビューティーショットを詩人の顔にインサートする無神経さは広告ならでは。
こういうCM動画にすぎないものを映画として堂々と見せるようになったのは、日本映画の新しい流れ。みっともないから海外展開とかやめてほしいんだよね。いちいち日本語・英語を並列するのも、バイリンガル方針としても意味不明。時間かかってかったるいだけだよ。
こういう甘すぎる自称「映画」を一種の推薦作品として上映するミニシアターの蛮勇には、悪い意味で感心してしまう。作品選びのセンスって、ミニシアターのほとんど唯一の存在意義だと思うんだけど。
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