「見る人を選ぶが、香港のスタント事情に興味があれば…」カンフースタントマン 龍虎武師 はまたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
見る人を選ぶが、香港のスタント事情に興味があれば…
香港アクション映画の裏にあるスタントマンの歴史をインタビューを中心に振り返るドキュメンタリー。
歴史と言っても100年に満たないものであり、第1世代と呼ばれる人たちもまだご存命である。
日中戦争により日本が中国に侵攻し、京劇役者たちが香港へ避難したところから香港アクション映画の歴史が始まった。京劇自体は文化として保護され、京劇の学校もあったようだが、京劇は北京語で上演され、香港は広東語圏であったために京劇は流行らず、その身のこなしから武術指導やスタントマン(代役・ダブル)をやる人たちが出てきたのだ。
当初は京劇にルーツがあることからあくまでも魅せる演劇であり、曲芸に近いものであったが、ブルース・リーの出現により、より実践的な格闘機としての武術に近づいていった。実践的なものや身の回りのものを活用して目新しさを出すもの、さらにはジャッキー・チェンがコメディ要素を加えて世界的な人気を得る中で、危険な飛び降りなどのスタントが過激さを増していき、同時に経済成長による雇用・撮影事情の変化もあり若手のスタントマンの成り手がいなくなっていった。そこで近年はスタントマンの養成学校を作るなどしてスタントマンの歴史を繋いでいる。
ストーリー(ドキュメンタリーだから、流れ?)としては上記のような話で、その説明をしながらいかに70-80年代のスタント事情がひどかったのかをレジェンドたちが笑いながら話していく。あまり笑い事ではない話が多いが、当時は当たり前であったんだろうし、生き残ったひとたちだから笑えるんだろう。
スタントシーンに当時のこぼれ話、みたいな期待で見るとがっかりするかもしれない。スタントシーンは確かにたくさんあるが、こぼれ話よりは全体的にヤバかったという話が延々と続く。
レジェンドたちの近影を見れる点では楽しいところもあるが、香港アクション映画が衰退していくところをドキュメンタリーにしたような感じで、明るい展望もそれほどなく、なんだかなぁ、という気持ちになりました。