健康でさえあればのレビュー・感想・評価
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【フランスのマルチアーティスト、ピエール・エテックスの監督・脚本・主演作である4編で構成される。センス溢れるオムニバスシュールコメディ。この監督作は初めて観たけれども、好みだなあ。】
<構成> 1.『不眠症』 なかなか寝つけない男が夜に奥さんとベッドに入り、一人「ドラキュラ」を読んでいる。画面はドラキュラのシーンに成ったりしながら、ラストは奥さんの歯が牙になっていて、漸く寝た夫の首筋に・・。 2.『シネマトグラフ』 映画館で、映画の席を確保するのに苦労する男が、映画のCMの世界に入り込む・・。 3.『健康でさえあれば』 忙しくせわしない、近代化の弊害をシュールに描く作品。 4.『もう森へなんか行かない』 都会の夫婦が田園にやって来てピクニックをしようとするが、下手くそなハンター、偏屈な農夫が織りなす田園での可笑しな遣り取りを描く。 <フランスのマルチアーティスト、ピエール・エテックスの監督・脚本・主演作は、初めて観たが、面白いなあ。 少し、インテリジェンスを感じさせるシュールなコメディがクスクス可笑しい。 ちょっと、嵌りそうである。>
4つの短編映像の連なり。 "不眠症 / Insomnie" ある紳...
4つの短編映像の連なり。 "不眠症 / Insomnie" ある紳士、夜に寝付けず、読書をしだしたところ その吸血鬼の物語と現実が錯綜してくるお話。 "シネマトグラフ / Le cinématographe" テレビCMのなかに、主人公がいきなり飛び込んで 巻き込まれてしまうような動画。 宣伝文句?決めセリフ?が、わざとらしいような、滑稽なような。 "健康でさえあれば / Tant qu'on a la santé" 街の中で、駐車する路肩の場所の奪い合い、騒音や渋滞などをめぐり 人々が振り回される様子。 "もう森へなんか行かない / Nous n'irons plus au bois" ピクニックに出かけたご夫婦、その近所の農家さんや猟師さんの、ドタバタ騒動のお話。 クスリと笑える滑稽さが詰め込まれて、 飽きずにあっという間の鑑賞体験でした。
1.不眠症 不条理過ぎる。流れる様なドタバタがなくなっている。 2...
1.不眠症
不条理過ぎる。流れる様なドタバタがなくなっている。
2.シネマトグラフ
言ってる事はわかるが、今でも通じる万能物の根源だろうね。でも、資本主義の結論みたい。
3.健康でさえあれば
揺れる事でのストレスギャグ
4.もう森へなんか行かない
行かない理由が分かるきちんとしたオチがあるショートコント。これは良い。
凄い才能だけど有名になれなかった理由。
多才な人だし見た目も魅力的である。 ギャグも次から次へと休む間を与えない。 本人立ち会い修復で本来のオムニバス形式に戻ったらしい。眠っていた才能がきちんと後世に残る形になって極東の国でも観れる事は大変喜ばしい。 どれも大爆笑とはいかないほんわか、失笑系。 カメラワークも実験的で面白い。 気に入ったのは二重丸。 ●「シネマトグラフ」 1960代のフランスの映画館ってこんな仕組み、感じなのかぁ、、、と新鮮であった。 ◉「絶好調」 個別レビューへ→ ●「不眠症」 吸血鬼本の内容とベッドルームを行ったり来たりするアイデアが楽しい。 ●「もう森へは行かない」 森に狩にきた男、柵を作る管理人、ピクニックに来た2人がベタに絡み合うコント。 ◉「健康でさえあれば」 都会の工事、騒音、渋滞、なんかを皮肉った話。まあ確かにパリの駐車モラルはひどい。 いまはどうなんだろう? しかし、なぜ彼が世界的に有名になれなかったかという理由もなんとなく見えた気がする。 面白いコマーシャルを積み上げても、 面白い映画にならない、、、みたいな、、 、、もう何本か観てみよう。
オムニバス形式に期待感は膨らんだのではあるが…
短編『絶好調』と同時上映。 オムニバス形式というのは、エテックス本人の資質に凄くあっていたと思うし、あの頃60年代に良く流行ってた複数の監督によるオムニバス映画のオマージュというかパロディ的な構成を勝手に期待してたのだが、あんな華やかで贅沢な気分には程遠く… コントネタが、どれもこれも往年のテレビ番組のベタなレベルで「ドリフか⁈」とツッコミを入れつつ殆ど新鮮味が無かった。 まあベタなコント集でも前作までの行き届いた洗練された演出が発揮されていれば良かったのだが… ちょっとどころか、かなり物足りなかった。 オムニバス形式も最初から意欲的なコンセプトとして構想されていた訳でもなく… 前作の『Yoyo』の興行成績がイマイチだった為、当時テレビの影響で流行っていたコント集をプロデューサーから依頼され、ある種クライアント・ワーク的に作ってしまったようで… そんなワケで、どうやら本人としては、あまりノってなかったらしく… 結果、興行的にも批評的にも残念ながら失敗作となってしまい… そのレベンジの意味合いとして、70年代前半にオムニバス映画に再編集して、改訂版としたのが本作ということらしい。 4つの短編で構成されていて、第1チャプターの『不眠症』は元々『Yoyo』の前に作られていた短編で、短編の映画祭でグランプリも受賞していた作品。第4チャプターの『もう森へなんか行かない』は非公開となっていた作品。 そして間の2つのチャプターが、最初の公開時のヴァージョンで作られていたコント集だったらしい。 ちなみに、その最初のヴァージョンでは、後に独立した短編となる『絶好調』も含まれていた。 とまあ、なんとも複雑&ビミョーな経緯の作品なのであった。 しかし結局、なんだかんだで、最後まで観れてしまうのは、やはりエテックス本人による魅力が「大」といったところか。
都会の狂騒的喧噪と、田園の憂鬱――。才人ピエール・エテックスによる無声映画風スケッチ集。
イメージフォーラムでのピエール・エテックス特集上映、鑑賞2本目。 「不眠症」「シネマトグラフ」「健康でさえあれば」「もう森へなんか行かない」の4つのスケッチを、幕をはさんで劇場風にまとめたオムニバス集である。 もとは1965年に一本の長編として仕上げられたものの、興行・批評的にふるわず、本人にとっても不本意な出来で、1973年に今の形に再編集されたという。 正直、4つのパートともエテックスが主演しているとはいえ、まるで別の話、別のキャラクターなので、もともとの「一本の長編」だったときにどう編集されていたのかは全く想像がつかないのだが……。 それと、もともとお蔵入りにしていた4本目の「もう森へなんか行かない」を新バージョンで復活させた代わりに、(おそらく同じ森を舞台とするスケッチで被るという判断で)旧バージョンから押し出されてしまった部分を再編集したのが、短編「絶好調」とのこと。 今日は、副産物(?)の「絶好調」をまず上映してから、本編の上映が行なわれた。 「絶好調」は、キャンプ場を舞台にしたスケッチ。 『恋する男』に比べると、ベタなコント集になっているので、観ていて格段に愉しい。 相変わらず、触るものすべてを壊してゆくエテックスの特殊能力は健在で、いつまでたってもコーヒーを入れることができない。 勝手にソロキャンしていたエテックスは、管理人に指定地に移動させられる(今とまったく変わらないw)。後半は、その先で目にするキャンプ場あるある集。「キャンプ」といいながら、だんだん別のキャンプ(強制収容所)のパロディになっていくのが面白い。 「不眠症」は、眠れない夜に吸血鬼小説を読むエテックスを描くカラーの現実パートと、小説内世界を描くモノクロパートが、しだいにオーバーラップしてゆく才走った構成。 イラストレーターでもあるエテックスらしく、吸血鬼小説のカバーアートが決まりに決まっている! 吸血鬼小説の中身は、けぶるモノクロームの映像といい、エテックスのメイクといい、明らかにトッド・ブラウニングの『魔人ドラキュラ』を意識したもの。ただ、あまりに「ふつうに」通り一遍の吸血鬼譚がちんたら展開するので、(なかなか寝付けない主人公とは裏腹に)こちらは大いに睡魔に襲われてしまった(笑)。 「シネマトグラフ」は、映画館あるある集のスケッチ。 なんか、映画が始まる前にいつもやってる「上映中は……」の警告映像となんとなくネタがいろいろ被っていて、映画の内と外、自分の「いま」と「ここ」がだんだんあやふやになってくる……と思ったら、エテックス自身が幕間のコマーシャルの世界にいつしか入り込んで……。 映画館で観る映画館のギャグというシチュを最大限にいかした、「越境的」な構造をもつ一篇だ。 「健康でさえあれば」は、表題作だけあって、いちばん力の入った佳品だったと思う。 「騒音」「振動」「渋滞」「満員電車」など、都会のストレスをテーマにした文明批評的な作品で、全編にわたってガンガン鳴り響いている工事の破壊音が、狂騒的なノリを増長させている(ちょっと、ジャック・ベッケルの『穴』を思い出した)。 とくに、レストランでの(杭打機の振動のせいで)「薬を呑みたくても呑めない」「隣の人間が薬を呑んでしまう」ギャグはエスカレートの具合が面白かった。どんどんストレスを溜めておかしくなってゆくメンタル医者のネタとクロスカッティングになっているのが、狂乱ぶりをいや増しに高めている。やっぱり映画にとって、モンタージュの技法って偉大だよね。 最後の「もう森へなんか行かない」は、都会の喧騒から打って変わって、小鳥のさえずる田園風景が舞台だ。エテックス演じるへぼハンターと、ピクニックを試みる中年夫婦、境界線のくい打ち作業をしている農夫の三者が、それぞれ邪魔をし合って、一向に目的を達成できないというベタベタのスケッチ。ドリフのコントのようなノリなので、ある意味いちばん安心して観られるかも。劇場内の笑い声もこれがいちばん大きかった気がする。 まあくだらないといえばくだらないが、アップテンポで密度が濃く騒々しかった「モダン・タイムス」風の三話目と、パストラル(田園的・牧歌的)でベッタベタなドタバタの四話目ということで、いい対比にはなっていると思う。 けっきょく、都会にいようが田園にいようが、エテックス世界の住人達はおしなべて誰も幸せにはなれないんだけどね(笑)。 というわけで、今年100本目の映画鑑賞終了。 ここ数年コロナと業務の多忙で出不精気味になっていたが、今年は頑張って内心ひそかに目標にしていたトリプル100(映画館で100本、クラシックのコンサート100回、テレビアニメシリーズ100本)を達成できた。 仕事に加え、趣味の登山、天然記念物めぐり、仏像めぐり、バードウォッチングと、それなりに充実した一年を過ごせてよかった。来年はこれに加えて、ミステリー小説100冊読破を目標にしたいかなと。 一応、備忘録的に今年の劇場鑑賞映画マイ・ベスト10を記しておく。 (封切り)1『RRR』、2『すずめの戸締まり』、3『ノベンバー』、4『さがす』、5『かぐや様は告らせたい』 (リバイバル・初見のみ)1『裁かるるジャンヌ』(ドワイヤー)、2『魔術師』(ベルイマン)、3『ストレンジャー』(ウェルズ)、4『アッカトーネ』(パゾリーニ)、5『クラバート』(ゼマン) なんか、ハリウッド映画がほとんどないね(笑)。 では皆さま、よい年をお迎えください。 とにかく、「健康でさえあれば」!!
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