「ライルはみんなのにんきもの」シング・フォー・ミー、ライル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ライルはみんなのにんきもの
これも別角度から見れば、引っ越しからの出会いの物語。
パパ、ママ、僕ジョシュのプリム・ファミリー。NYの古いアパートに越して来たんだ。
ママは本当のママじゃない。勿論今のママも好きだけど、時々ちょっと関係が…。
臆病な僕。学校でもなかなか友達が出来ない。
でも、そんな僕にもやっと友達が出来たんだ。“彼”が僕に勇気をくれた。
オ○トーさんより性格ねじ曲がってる住人の他に、このアパートにひっそり隠れ住んでいる“彼”。
ライル。
びっくりするかもしれないけど、ライルは…
ワニ!
越してきたアパートの屋根裏にワニが住んでいる! 『クロール』並みの恐怖…!
でも、さらに驚くべき事が。
このライル、どうやら人の言葉を理解し、とっても穏やか。かなりシャイな性格。
そしてライルは、話せはしないが、歌って踊れるワニだった…!
歌って踊れるアニマルたちやフラワーは知ってるけど、ワニって…。しかも、超美声。
“彼”は何者…?
全米ベストセラー児童書シリーズの実写映画化…とかじゃなくて、何やら訳ありが。
遡る事18ヶ月前。
マジシャンのヘクター。披露するマジックは何処かで見たようなものばかり。今時ハトって…。いつも借金を背負い込み、全く売れずにいた。
何か、目新しさを! 新たな“相棒”を求めて、ペットショップへ。
そこで出会ったのが、歌って踊れる小ワニのライル。
これはイケる! 練習を重ね、ライルも大きくなり、いよいよステージデビューへ!
が、いざ舞台と人前に立つと、歌えないライル。彼は、ステージ恐怖症だった…。
ステージは失敗。ヘクターはまたまた借金を背負い込む。
ライルを残し、アパートを出て行ってしまう。
一人残されたライル。ヘクターが置いてった曲の入ったカセットテープを聞きながら、帰りを待つ。
そんな時このアパートにやって来たのが…
独りぼっちのワニと臆病な少年の出会いと交流。
もう王道ハートフル・ファンタジーの用意は出来ている。
後はそれに楽しめるか否か。
児童書原作なので、確かに子供向け。ご都合主義、予定調和、ツッコミ所はキリがない。
メチャクチャ良かったってほどではないけど、子供と一緒に家族皆で見て、ほっこりするには充分魅せるものがあった。
まずは何と言っても、ライル。
仮にもワニ。さすがにリアルだったら低くけど、その見た目はリアルとデフォルメの最大限ライン。これ以上やったらリアルになっちゃうし、マスコットキャラみたいになっちゃうし、造形は結構苦労したんだろうなぁ…。“紳士クマ”のようにはいかないか。
人それぞれ意見はあるだろうが、私的にはライルがとってもキュート。
つぶらな瞳、ちょっとおっちょこちょいだけど、根っからの愛すべきライル。
一応ワニなので、最初遭遇した時は必ずパニック!
ジョシュ、ママ、パパ。いちいち3回もやるんかい!
お決まりのドタバタ劇。でもそれもライルが歌い出すと…
その歌声に皆魅了され、聞き惚れる。
話は出来ないライル。気持ちを伝える手段は、歌。
それがミュージカル映画ならではと言うより、例え相手と違って言葉が通じなくても、気持ちを伝えられるってのが素敵。
ライルとプリム・ファミリーの秘密の暮らし。
そこに、ヘクターが戻ってくる。調子良く、またまたライルで金稼ぎを目論む。悪い人…?
でも、口うるさく性格悪い住人に責められた時、マジックさながらの助け舟。本当はいい人…?
その直後、市の害獣課が入り、ライルは動物園に連れて行かれる。それを裏で手を回したのは…。お金の為。
悲しむジョシュ。そんな彼の前に、また戻ってきたヘクター。
ジョシュは許せないが、後悔して後悔して、ライルの救出に手を貸す。
メインはライルとジョシュの友情物語だが、ライルとヘクターの関係もまた。
どうしようもないダメ人間。金にしか目が無く、調子良く、やたらテンション高いウザい性格だが、ライルへの情も持ち併せ、何だか憎めない。
ハヴィエル・バルデムがファミリー向けファンタジーに出演とは意外! 本作鑑賞の理由もそこにある。
彼も歌って踊って、魅せてくれる。
ヘクターのマジックもあって、ライルの救出に成功。(つまらないヘクターのマジックだが、時々役立つ)
そのままとある劇場へ。“明日のスターは君だ!”という番組の生放送オーディション。
協力者の手引きもあって、舞台袖へ。
さあ、歌うんだ、ライル。
でも、やっぱり…。
私もどちらかと言うと人前に出る事は苦手。気持ちは分かる。
だけど、今は歌う時なんだ。
尻込みするライルに代わり、ジョシュが歌う。お世辞にも上手いとは言えず、失笑。
あの臆病だったジョシュがライルの為に人前で歌っている。
その気持ちが伝わる。
ジョシュのように勇気を出して、いざ…!
クライマックス、やはりこれが見たかったと思わせるライル(とジョシュ)の歌唱シーン。
ライルの歌唱を担当したショーン・メンデスの歌声が素晴らしい。
最後もオイオイ…ってくらい、裁判も無事解決。
ライルとジョシュ、家族との関係、さらにヘクターも。
絵に描いたようなハッピーエンド。
後味良し、それでいいんだ。だって、
ライルはみんなのにんきもの。
僕のスターは君だ!