劇場公開日 2022年11月21日

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「香港ノワールへのリスペクトにこってりと血糊を塗りつけた濃厚な味わいの手堅い野心作」鬼と獣 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0香港ノワールへのリスペクトにこってりと血糊を塗りつけた濃厚な味わいの手堅い野心作

2022年12月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

裏の世界で“トッケビ(鬼)“と呼ばれ恐れられる冷酷な殺し屋ドゥヒョン。しかし彼は妻からいつまでそんな稼業を続けるつもりなのかと問われ人知れず悩んでいた。そんなある日彼を慕う弟分ヨンミンが殺人を犯してしまい、ドゥヒョンはヨンミンを庇って服役、妻は娘を連れて姿を消してしまう。何度も面会を求めるヨンミンを頑なに拒否したドゥヒョンは刑期を終えて出所。前科者を雇ってくれる洗車サービスの会社に職を得て自分を逮捕した刑事に妻と娘の居場所を探して欲しいと頼むが・・・。

香港ノワールの大傑作『男たちの挽歌』に多大な影響を受けていると思しき作品。これでもかと銃弾の雨霰が降り注ぐ『男たちの〜』に対して、こちらはとにかく短刀でザックザク切り刻む韓流スタイル。バカバカしいレベルの偶然がドゥヒョンとヨンミンを引き寄せるくだりはヘタをすると白々しいドラマになりがちですがあくまでこってりとしたハードボイルドを貫いているので安心して予定調和のリズムに酔いしれることが出来ます。邦題が暗に語っているクライマックスの凄惨さは尖端恐怖症には地獄の責め苦のような展開で横っ腹が攣りそうになりますが濃厚な余韻を湛えた終幕は貫禄十分、昼食を食べる気が失せるくらい泣きました。

主演のチョ・ドンヒョクの演技は初めて観ましたが冷酷な殺し屋の顔と妻と娘を愛する男という二面性を的確に体現する演技力が頭抜けていて、韓流演技陣の層の厚さに改めて驚かされました。

よね