「紛れもなく「ブラザーズ」の映画」ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 思いついたら変えますさんの映画レビュー(感想・評価)
紛れもなく「ブラザーズ」の映画
イルミネーションの映画って聞くと「ペット」で全然ピンと来なかった思い出があって若干の不安があったのだが、トータルで言うとめちゃめちゃ楽しんでしまった。忘れてたマリオへの思い出を次々ほじくり出してくれる気持ちのいいファン映画だ。
まず前提として僕は「話の杜撰さをシリーズファンへのご機嫌取りで誤魔化す映画」が大っ嫌いな質で、最初は前述の思い出も相まって本作にも懐疑的だった。
しかしこの映画ではそのファンサの飛び道具っぷりが尋常ではない。あのウツボがあんな解像度でお目見えするなんてアングリだったし、何よりあのブラッキー(本作ではスパイク)にあんな長ゼリフがある時点で大事件だ。気がついたら「この砂漠にサンボとかいないかな」「ここでウンババが噛み付いてきたら最高なんだけどな」と、もっともっとと欲が出てしまってて、この時点で僕はもうめくるめくマリオワールドにまんまとのめり込んでしまってた。目論見は大成功だよちくしょう!おめでとう!
もっとも映画自体が決してずさんの一言ではない。展開にご都合感こそあれど(ブルックリンの大水害の下り終わりなの?!とか、やっぱり映画的にはハテナブロックとは結局何なのか理屈付けした方が綺麗じゃないかなぁ…とか)、主に主要キャラクターたちの描写においては見所が尽きない。
取り分けルイージの解釈が最高だ。今まで永遠の二番手だ日陰者だと煽られてきた彼なので、無意識のうちに「ルイージはマリオへの僻みがある」と植え付けられてしまっていたが、この映画におけるルイージのマリオへの心情は真逆で、冒頭から通して、常にその言動に兄への親愛がある。「センスのある人が見れば絶対惚れる!」はルイージ自身の人間性をも引っ括めて2人の全てが集約された名言だ(あと昔からイジられてる「なんであのチビ髭が美人のお姫様にモテてるんだよ」的ヤジへのカウンターとしても痛快だし)。
個人的にはクッパも良い。オデッセイのようなシリアスに徹したクッパのが無難じゃないかな…とも思ったが、コミックボンボンで連載してた「モト珍」版マリオとか、チャーリー野沢(のちの桜玉吉先生)が描いた「マリオの冒険」で育った世代としてはめちゃくちゃ馴染み深いクッパ像で嬉しくなってしまった。そして何の説明がなくとも収まりのいいカメックの側近感。コレでしょ。
そしてもちろんマリオだ。思い出を振り返ると、実は素のマリオって昔から弱い(映画では加えて「ビジネスが上手くいかず、周りの目がコンプレックスになっている」という心の弱さにも繋がっていて哀愁すら感じる)。そこを逃げずに描いた上で、「何度ミスしてもへこたれない」という、全面クリアまで粘った全てのプレイヤーに対するリスペクトと言うかラブレター的な設定に昇華してるお手並みはこの映画を作った意義を大きく押し上げてる。
そんなマリオとルイージは終盤まで離れ離れだったのだが、最終決戦で阿吽のタッグとなって大仕事を成し遂げる。このフィナーレでこの映画は「スーパーマリオ」でなく「スーパーマリオブラザーズ」ですよと箔押しされるのだ。美しい。
言ってしまえばマリオって「冒険者がお姫様を助けるため国に来た侵略者をやっつける」というベタすぎる下地なのだが、その上でやるべき事が全部詰まった花丸エンタメとして気持ちよく締めくくってくれる。見たいものが高い水準で全部見れて終わり。ええじゃないか!
巷では早くも「カービィやゼルダもやるべきだ」と熱が上がってるが、僕としてはマリオ映画自体も是非2、3と続けていただきたい。そしてもしサラサランドが舞台になったその時は、デイジー派の僕は泣いてイルミネーションに感謝すると思ういやほんとご検討お願いします。