あしたの少女のレビュー・感想・評価
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何も…
何かが解決すると期待して観たので、そうではない展開、そしてあまりに無責任な大人と彼らをそうさせているシステムに暗い気持ちになった。
実習先のコールセンターでのクレーム対応のシーンは、仕事と重なり見ていて辛かった。最初こそ苦戦していたソヒがだんだんと慣れて顧客対応がうまくなっていく姿は単純に「良かったね」とは言えない。。労働市場によく言えば対応し、悪く言えば飲み込まれていくさまが描かれているようで…。
責任ある立場にいる大人たちが誰もソヒの状況を理解しておらず、知らないままであった。ソヒの親でさえ、彼女が自殺未遂をしていたこと、ダンスに打ち込んでいたことを知らずにいた。そんな中、ペ・ドゥナ演じるユジン刑事はソヒとはダンス教室で一度会った程度だが、誰よりもソヒを理解し感じようとしていたように見える。もっとソヒとの繋がりや関係があることを少し期待していたのだけど、2人の接点があまりないところが逆にミソというか。
過酷な労働に飲み込まれていく若者たち、苦しさを抱えながらもそれがバレないように必死に隠し、何事もないように生きる若者たち。ユジン刑事が一人ひとりに言葉数少なく、だけどもあたたかく声をかける姿に、彼らはどれだけ安心しただろうか。
何かが解決するわけではないけど、ユジン刑事を通してこの映画のメッセージはちゃんと伝わってくる。
前半と後半で物語の視点が変わる
「あれ?これドキュメンタリーだっけ?」と錯覚するようなファーストシーンから、心情を煽る音楽を極力抑えた演出で、じっくりと主人公にフォーカスしていきます。
センターの成績が…
みんなのノルマが…
学校の信用が…
あたかも自分が周りに迷惑をかけている異分子のような扱いを受け、かと言って
黙ってお金の為と割り切ることすら出来ない、八方塞がりの状況。
でも、そんな同調圧力を仕掛けてくる奴らは、たいがい自分の保身の為だったりする。結局は汚い大人たちによる搾取に他ならない。
後半は思わぬ社会の闇へと、芋づる式に繋がっていきます。
本来ならセーフティーネットになる筈の仕組みが機能していない現実が暴かれていき、これでもかという負の連鎖に、どこか一つでもストッパーになれていたら…と思わずにはいられませんでした。
そして、刑事が介入することに批判的な組織も闇が深いです。。。
最後の砦まで腐ってることに戦慄しました。
私にとってペ・ドゥナちゃんは永遠の少女なんですよね。
刑事役もすっかり板についた女優さんに対して失礼かもしれませんが、どうにも当時の少女が見え隠れする。
でも、やっぱりそこが彼女の強みというか魅力だと思うんですよね。
くたびれた大人になってしまってはいても、心の内にかつての少女を宿している。
ユジン刑事がソヒの思いを辿るように、同じ足跡を辿るシーンが印象的です。
かつて同じ光に誘われた側の人間であることが伝わる演出が素晴らしい。
ラストは涙なくして見られませんでした。
“ヒヤリハット”という言葉をご存知の方も多いかと思いますが、ついうっかりしていて「ヒヤリ」となったり、ミスに気づいて「ハッ」としたりするイメージで、事件や事故の一歩手前だった状況を表しています。
「1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件の異常が存在する」と言われておりまして、“異常”にあたるのがヒヤリハットなのですが、これを「事故にならずに良かったね。」で終わらせず、きちんと分析して再発防止に努めることが本当の事故の防止につながるという考え方です。
前置きが長くなりましたが、つまりソヒの後ろには300人の見えないソヒがいるのだと感じました。
みんな何かしら心に歪みを抱えている。
ソヒの友達だってソヒを心配していたけれど、いつソヒ側になってもおかしくない。
みんな自分のことで精一杯で、両親ですらソヒと向き合う余裕がない。
少しずつ悪いタイミングが合ってしまって、最悪のことが起きてしまった。
既に事故は起きていたのだから、絶対に「無事で良かった」で終わらせてはいけなかったのだ。
実際にあった事件が基なので『トガニ』を思い出しますが、社会派だけどきっちりエンタメなところが本当にすごい。
『あしたの少女』も社会派ですが、刑事モノとしても楽しめます!
前半はコールセンターで働く主人公が色んなしがらみに潰されて死を選ぶ...
前半はコールセンターで働く主人公が色んなしがらみに潰されて死を選ぶまで、後半はペドゥナ演じる刑事が事の真相を追求していく過程が描かれる。前半は主人公の心の機微がとても繊細に描かれて、静かな画や主人公の佇まいに惹き込まれた。が、後半、引きの視点で社会構造の闇が色んな角度から暴かれていく作りなのだが、あれだけエモーショナルに引き込む作りだった前半に比べ、後半はペドゥナがあまり主人公と接点がない役どころだからなのか、感情のつながりがそこまで感じられず、前半であれだけ盛り上がったテンションが徐々に引いていくのを感じてしまった。
問題提起としてはとても大きい意義を感じるが、ただただやるせなさで終わっているのでカタルシスもなく、惜しい仕上がり。問題が浮き彫りになり、どうしようもない私たち。で終わってしまっている。刑事視点より、友人視点で展開してもよかったかも知れないと個人的には思った。
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