劇場公開日 2023年8月25日

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「資本主義社会の行き着く先」あしたの少女 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0資本主義社会の行き着く先

2023年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

『私の少女』のチョン・ジュリ監督とペ・ドゥナの再タッグということで興味が湧き見に行きました。
この日本タイトル、いくら前作にかけていると言っても分かり難く過ぎでしょ。原題の「ネクスト・ソヒ」ならば観終わってからなるほどと思えるのですけどね。
しかし、久々に心にグサッと来る強烈な韓国映画でした。
テーマ的には韓国映画よりも日本のインディー作品の方が得意とする内容の様にも感じられましたが、このテーマなら時代的に今の韓国の方が合っていたのでしょうね。
現在68歳の日本人の私からすると、昔の苦い思い出を呼び起こされる様な作品でありました。
“平成”が始まる(今から34年前)高度経済成長のピークから一気にバブルが崩壊した、1980年後半から2000年位までの日本の社会をこの作品を見ながら思い出していましたが、まあこの時期の日本は労働者派遣法の流れとリンクし、私も派遣会社を転々としていた時期でもあるので、本作で描かれていた資本主義社会の根本的な構造悪は身に染みて生きていました。

資本主義の高度成長というのはアジアで(いや、世界で)日本は先頭ランナーとして走っていたので崩壊も一番早かったのでしょう。で、中国や韓国は今現在がその頃の日本と似た状況になっているのだと思います。
そして今の韓国社会が、本作で描かれていた様な(本作は実話を基にしたフィクション)世間擦れした大人達は社会悪を当然の様にスルー出来るメンタルに(改悪)され、それが“悪”であることにも気づけず(忘れてしまい)、社会全体が感覚麻痺状態となった結果、一番純粋で弱い者に皺寄せが来るような、こんな恐ろしい社会派映画を(社会悪に侵されていない人間が)作らざる得ない状況になってしまっているという証なのでしょうね。
なので本作で描かれている社会悪が、“誰が悪い”なんて単純な話ではないのは分かっているし、簡単に修正できる類のものでもないのは分かっているのだけど、何故一番先頭を走り転落した日本を反面教師とせず、どの国もどの国も同じ過ちを犯し同じ道を歩むのか?そんな気持ちで本作を見てしまいました。

本当にもっとマシな社会を作る事が可能なのか?、そこに本来の人間の本性があるのか?
日本の場合はあまりにも長く低成長が続いたので、全体的にちょっとした諦念に達したような国民性になって来ている様な気もしますが、相も変わらず“ビッグモーター”のニュースが氾濫している様な民度の低さもあり、つくづく本作のメッセージの難しさを感じてしまいます。

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シューテツ