「3.6) それを決めるのは自分」非常宣言 tsukaregumaさんの映画レビュー(感想・評価)
3.6) それを決めるのは自分
ジャンル映画の面白さを詰め込んだ前半から一転、後半に突きつけられるテーマは重い余韻を残す。『新感染』にも劣らぬ傑作だった。
ジェット機のリターンに呼応する映画後半の転調が素晴らしかった。まず機内に差し込む光でそれを暗示し、「危険」の対象が一人のサイコパスから巨大なジェット機そのものへと変わる衝撃。アメリカ、日本、そして自国からも見捨てられる恐怖感。
誰もが楽しんだであろう前半とは違い、後半は評価が二分している。否定派の主な論旨は、乗客たちの最後の判断を「美徳化している」のが受け入れ難いようだが、それには同意しない。あの乗客たちはただ「自分の運命を他人に決められたくない」。人間としての(自分で決めるという)尊厳を守っただけで、それが利他的な行動に映ったのは結果論と思えたからだ。彼らを救おうとした刑事、元パイロット、大臣。この3人もクライマックスでの行動は皆、自分の判断でやっているという共通点。劇中の賛成派vs反対派にも似た作品への賛否が分かれるのも、本作がそれだけ攻めた作りを取った証左(近年のハリウッドには期待できない部分だ)。
エンディングの名曲が残す深い余韻。
月🌘は死のメタファー✞
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