劇場公開日 2023年1月27日

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「【触れると10秒で死ぬピンクの雲に依るロックダウンの中、人々の適応力と現実逃避や絆を求める姿を、現況下の状況と重ね合わせて観てしまう作品。】」ピンク・クラウド NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【触れると10秒で死ぬピンクの雲に依るロックダウンの中、人々の適応力と現実逃避や絆を求める姿を、現況下の状況と重ね合わせて観てしまう作品。】

2023年3月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

ー 冒頭、”本作は2017年に構想され、2019年に撮影されたというテロップが流れる。
 だが、今作はどう見ても製作側の意図ではないにしろ、現況下を想起させる。
 そして、明日からマスク装着の緩和が始まる・・。-

■物語は一夜を共にしたばかりのジョヴァナとヤーゴのカップルの生活にほぼ限定されて、映し出される。

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・ジョヴァナは向かいのマンションの男が、窓に”ピンクの雲には殺されない”と書き、窓を開け自ら身を投げるシーンを見る。

・当初はジョバナは子供は要らないと言っていたが、長引くロックダウンの中、男児リノが誕生する。
ー ジョヴァナとヤーゴは、生きる望みを得たかったのだろうか。それとも、2人だけの閉鎖された空間での生活に、危機感を抱いたのであろうか。-

・二人はそれぞれの家族、知り合いとはビデオ通話となり、必要物資はドローンで届けられる事になる。
ー 正に生活スタイルの激変である。今作と20年春からの現況下との相似性に驚く。-

・リノはどんどん成長し(7歳くらいだろうか・・。)、ジョヴァナの誕生日に、ヤーゴとVRヘッドセットを送るが、ジョヴァナは仮想現実の世界にのめり込んでいく。

・一方、ヤーゴは現状に諦観を持ちながらも適応していく。
ー 認知症になった父親とのビデオ通話は辛いが、彼はそれを受け入れ父とのビデオ通話を止めるのである。-

<今作は、イウリ、ジェルバーゼ監督が、ロックダウンの中で生きる人々の姿を抑制したトーンで描いている点が、奏功している。
 ラストのジョヴァナの行動には、私は賛同しかねるが、あの行動に至る心境はコロナ禍を経験しているからこそ理解できるのである。
 今作の作品設定と20年春からの現況下との相似性に驚いた作品である。>

<2023年3月12日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU