SHE SAID シー・セッド その名を暴けのレビュー・感想・評価
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悪しきシステムは変わったのか
ハーヴェイ・ワインスタインの性的加害を暴いたニューヨークタイムズの二人の記者を主人公にした作品。事実を丹念に追いかける女性記者の努力と、証言者たちの勇敢さを称える作りになっている。ワインスタイン自身をほとんど画面に出さずに描くのも特徴で、限られた上映時間をできるだけ、女性たちの勇気を描くために使うという姿勢で作られている。
本作は、ワインスタインただ一人を告発しているのではなく、法律を含めて被害者を救済しにくいシステムそのものをあぶりだそうとする。主人公の2人がたびたび直面するのは、口外しな契約を結んだがゆえに事件について被害者が口をつぐまざるを得ないという事態だ。和解金を支払い被害について黙らせる法的手続きの存在をほのめかしているわけだが、それはつまりそういう契約を迫る弁護士がいるということなのだろう。ここで言及される「システム」の全容は、本作だけではわからない。このワインスタイン事件以降、そのシステムは変わったのだろうか。変えるためにどのような努力がなされているのか。
この映画が誕生したことはハリウッドに自浄作用があることを、ただちに意味しない。そのシステムが本当に変えられるたのであれば、自浄作用はあるということになるだろうが、今回の悪行を暴いたのはあくまでNYタイムズの記者である。それまでハリウッドは見て見ぬふりをしていたということでもあるのだ。
絶妙なバランスで女性の尊厳と調査報道の醍醐味を描く。
ひとの感想はそれぞれのものだし、文句を言う筋合いは本当に一切ないんですが、この映画が地味であるとか、エンタメとしては退屈とか言われていることがさっぱり理解できない(これを書いている時点で、映画.comの他のみなさんのレビューはまだ読んでいません)。というのも、難しい題材を、よくぞここまでエキサイティングに描いたものだと感心しきりだったからだ。
原作を2時間強に縮める上で、必要最小限にまで刈り込み、それでいて登場人物たちの人間的な弱さや葛藤をちゃんと描き、なおかつ強大な相手に立ち向かう覚悟をビシッと伝えてくれる。調査報道自体が地道な作業の積み重ねであり、当人たちがそこにプライドを感じていることもよくわかる、お仕事映画としても秀逸。どこまで描くかで苦慮したと想像するが、あそこで映画を終わらせると決めたクレバーさにも惚れ惚れした。
そして当然ながら、現実の事件で直接関節被害にあったり、わが身を晒して抵抗した女性たちへの連帯と配慮が大切な作品であり、本当にギリギリのバランスをみごとにつかまえたと思っている。アメリカの賞レースでは無視されている形になっているが、これほどのクオリティの映画には絶賛しかない。
製作面でも国際的な女性スタッフたちの活躍が頼もしい
ゾーイ・カザンとキャリー・マリガンが演じるニューヨーク・タイムズ紙の記者2人が、大物映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによる性的暴行を告発すべく、被害者の女性たち(アシュレイ・ジャッドは本人役で出演)に心を寄せながらも粘り強く協力を依頼し、ついに確かな証言を揃えて記事を出すまでの、スリリングで心揺さぶられるストーリーだ。
SF風味のヒューマンラブコメといった趣のドイツ映画「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」は音楽使いなどが結構お気に入りだったが、あのマリア・シュラーダー監督がこの「SHE SAID シー・セッド その名を暴け」でもメガホンをとっている。脚本は英国出身のレベッカ・レンキェビチ、撮影はアルゼンチン出身のナターシャ・ブライエと、主要な製作スタッフが女性で固められている点も、女性の地位向上が着実に進んでいることをうかがわせて頼もしいし、映画のテーマとも響き合う。
遅ればせながら日本のエンタメ界にも波及してきた#MeTooのムーブメントだが、被害者たちが勇気を出して告発に踏み切ったのが大きかったことが、本作で改めて思い知らされる。啓発効果も大いに期待したい。
社会を変えたムーブメントとメディア側の仁義
アワードシーズンもクライマックス間近の今。思えば、今からちょうど10年前のアカデミー賞授賞式で、MCのセス・マクファーレンが5人の助演女優賞候補者に対して、『おめでとう。もうあなたたちはハーベイ・ワインスタインが好きなふりをしなくて良くなったね』とぶちかましたのが、後の#MeTooムーブメントに繋がるヒントになっていたのだった。マクファーレンの発言は、当時、オスカーレースの常連だったミラマックスの元CEOが、多くの俳優たちにセクハラ行為を行なっていたという事実をジョークにしたものだったが、正直、その時、日本の映画ファンはあまりピンと来なかったと思う。
その後、アメリカの芸能界からアメリカ社会へ、さらに世界的な問題へと派生して行った1個人のセクハラ行為の実態が、メディアを介してどう拡散されて行ったかを追うのが、本作『SHE SAID シー・セッド』。事実の解明に乗り出すニューヨーク・タイムズの女性記者たちの探究心、最初に声を上げた俳優と、それに続いた被害者たちの勇気、彼女たちの声を力で押さえ込もうとする側の狡猾さ、等々。描かれるポイントは色々だが、改めて振り返って、このムーブメントが個人を経由して未だ解消されない男性社会に大きな風穴を開けたことに感銘を覚える。小さな積み重ねが、やがて世界を変えることだってあるのだと。
そして、メディア側が記事を公開する前に標的となる側に許諾を取るという、アメリカ社会のフェアネスもちゃんと描いていることに感心する。とくダネ、砲弾は闇雲に放たれるべきではないという、ある種の仁義が守られていることに。
社会の闇の極一旦
ハリウッドだからと話題になったがタイトル通り救われた女性がいるもののそれでも90年代ということで泣き寝入りした女性も多いだろうと察してしまう。
男性より女性記者2人から始まる行動力「正義漢」は当時としては珍しく心強く、真実を追い求める警察官のように目に映る。
実話なのだからエンタメというよりドキュメンタリー要素の構成だったので、ただただ苦しいが9割を占め、最後も胸焼けが残った。
邦画もこういった形で日本のJ社長の闇がどのようにして地上波ニュース(初めはNHKでしたが…)で公に報道できるようになったのか映像化して欲しいものです。
スカッとを期待していたが……
淡々と事実だけを追っているので、クライマックスのような盛り上がりを感じることなく終わってしまった。記事をアップする緊張感は伝わるけど、アメリカのスキャンダルの話なので、あれからどれだけ世間が騒いだか今一想像できませんでした。それでも、事実を探るジャーナリスト(記者)の二人は彼の悪行に憤怒するのに比例して、こちらも一つ一つの言葉の証に悲痛と怒りが増幅していった。
鑑賞前のイメージで、ジャーナリズムの勝利!という爽快感を期待したものの、スキャンダラスというより「犯罪」の事実に気が重くなってしまった。そうはいっても、今後被害者を出さないために、本当に明るみにでてよかったと思う。日本でも同じテーマで芸能界の闇(真実)を描けるのでは?この映画のように、そこまでの気骨をみせてほしい。
いわゆる「お仕事映画」だが
二人の女性記者が証言を集め証拠を集め、ワインスタインの悪事を暴くプロセスが描かれている。映画としては淡々としているが、当事者を尊重するとはこういうことだろう。打ち明けることの難しさを考えさせられる。日本でもこういう映画が作られるようになってほしいと心底思う。
声をあげてくれてありがとう
アメリカも日本もどの国でも、性加害者は犯罪ではなくちょっとしたいたずら位に思ってますよね。それは、今まで性犯罪の刑が軽すぎたことも原因のひとつだと思います。性犯罪の被害者は圧倒的に女性が多いですから、「ああ、そういうことだからか」(男性が被害に合わないから)かと思います。
ワインスタインの事件から、#MeTooが起こり、この動きで日本でも性犯罪が公になり少しとはいえ厳罰化が進んだと思います。本作に登場した女性達、日本だと伊藤詩織さん、五ノ井里奈さん、元ジャニーズ、その他のたくさんの人達の勇気のおかげです。葛藤しながらも声をあげてくれて本当にありがとう。
#MeToo‼️
まず最初に被害を告発した女性たちと、NYタイムズのジャーナリストの皆様に敬意を表します‼️そのおかげでハリウッドの闇の一部が払拭された気がします‼️ハーヴェイ・ワインスタイン‼️この男がプロデュースした作品は大好きな映画が多いので、彼の犯した罪が数多くの名作にケチをつけた事は確かです‼️ホントに腹立たしい‼️そして今作なんですが、ジャーナリズム映画として良く出来てると思います‼️記事掲載の中心が二人の女性だったことも意義深い‼️ただタイムリーな事件だけにワインスタイン自身が声だけの登場や後ろ姿だけだったり、被害者のグウィネス・パルトローも登場せず、チョット映画としてシラける箇所もチラホラ‼️純粋に映画として、ワインスタイン役に別の役者さんをキャスティングして、徹底的に善と悪の戦いを描いたら「大統領の陰謀」や「スポットライト/世紀のスクープ」に並ぶ傑作になったかも⁉️
史実に基づいているので説得力がありすぎる。
権力のある加害者や組織の隠蔽、社会や世間の無視無関心によって、性被害者は隠され起こり続けるということ。
対して、被害当事者はいかにたった1人の個人として戦わなければならないかということ。
実際、個人では太刀打ち出来なかったものを、第三者である新聞記者が暴いてくれたわけだが、いかにまわりの意識改革が必要かということ。
なのに、やはり日本は残念ながらほとんど響かず。考えようとしないどころか無関心。それがすでに加害であるのに。
そんな性犯罪対処の後進国にも一石を投じてくれる一本。
となりますように。
本当にレイプシーンは不要
観る前はこれ135分もあるんだーって思ってたけど、実際は90分くらいに感じるほどずっと引き込まれていた。
監督が、観客に苦痛を与える「レイプシーンはもうウンザリ」とあえてそのような描写を入れなかった本作。
それでも被害者が語る言葉や、ワインスタイン(役)の後姿だけでその卑劣さや世間に与えた衝撃の大きさは十分すぎるほどに伝わってきた。
最近の映画は知らないけど、本当にレイプシーンがある映画って多い。もちろん、男性監督作品ばっか。
実話映画化で本人も出演
アマプラで鑑賞
内容を知らずに観たら実話が元だったとは。
それも昨今日本でも大きくなった性加害問題
よく「こんなに何年も経ってから言うなんて目的は金だろ?」って言う人必ず出てくるけどそういう人たちにはこの映画を観た上でもう一度その言葉がどんな意味を周囲にもたらすのかを改めて考えられる作品になると思いました
ジョディ・フォスターの告発の行方とかもそうですよね
被害女性のみなさんが穏やかな日々を過ごせていますよう、心からお祈りします
トッツィーは82年か。
配信初見。
硬質上質。
トップ次第で業界全体が恐怖に染まり腐敗すると。
我が国でも同課題の幾つかが進行中。
調査が進展し核心に迫る程に神妙に緊張感が高まる作劇は成功。
評決、を想う。
素敵な仕事だ。
芸能界の性差をネタに笑わせたトッツィーは82年か。
宇多丸氏推薦作。
権力の強さ…
権力を縦に自分の思うままに
三十年に渡りセクハラを
姓暴力を隠し揉み消してきた
大物映画プロデューサー
ニューヨークタイム誌が告発し
刑を科すことになった事件。
当時TVで大きく報道されてました
そして
被害者の多さにぴっくりしました
その事件の真相を描いた作品
…権力を持った人物が
何人もの女性を私物化し
女性を苦しめてきた
ふたりの女性記者の粘り強い
関係者の聞き込みと現地取材
刑事並みの情報収集
時間をかけて着実に確実に
遠い先のゴールを目指す
二人にとって
並大抵の仕事ではなかった
被害者が女性だったから
女性記者だったから成し得たのかも
しれません
姓加害を起こしそれらを守る
システムが多くの女性を
苦しめきた結果です
…常に女性記者が
被害者である女性に寄り添ってきた事
女性だったから心を開いてくれた事
当時は声をあげても報道されてこなかった事
…無関心な時代であった事
関心がなければ現在も何も変わらない
いじめ、虐待、暴力、パワハラ等
今の世の中から
少しでも無くなればと思います
アシュレイからの電話
に胸が熱くなった。
と同時に、この電話をするためにどんなに勇気が必要だったことだろうと考えると胸が痛くなる。
つい先日、五ノ井里奈さんの判決が出たばかりだ。加害者の言動に(私はいろいろな記事で読んだだけだが)腹が立って仕方がなかった。
伊藤詩織さんのその後のこともよく目にしているだけに、判決が出てそれで終わりでないことはよくわかっている。
しかし、みんなの勇気で少しずつだが世の中が変わりつつあることも感じる。
ワインスタインの件については特に「アシスタント」とあわせて見て欲しい。
追記
伊藤さんの映画「Black Box Diaries」はまだ日本での上映は未定とのこと。
ニューヨークタイムズ記者たちの奮闘
映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる性的暴行事件を告発した女性記者たちの実話を映画化した社会派映画であるが、こういうドラマは見ていて「やるせない気持ち」になる。
また、権力をカサに人権蹂躙するような人間に対する怒りも感じた。
新聞記者が苦労を重ねて悪事を報道することで社会が動く……という流れは『大統領の陰謀』に似ているものの、内容が全く異なるので、あれほどのアッパレ感はない。
ただ、冒頭でトランプの大統領選の話が描かれたが、本筋とまったく関係ないのは何故?
このニューヨークタイムズ記者たちの奮闘が、その後の#MeToo運動へ繋がっていくわけだが、実際の被害者が出演したり、グウィネス・パルトロウ(声のみ出演)など細部にもきめ細かい配慮がなされた力作🎥
女性記者の奮闘に感動
重いテーマだが避けては通れない。見て見ぬふりもできない。
2人の女性記者の奮闘には、思わず全力で応援してしまう。
個人的にはキャリー・マリガンよりもゾーイ・カザンの方が輝いていた印象。
皆でひとつのパソコン画面を見つめるラストシーンは、地味ではあるがこれはこれで迫力あり。最後のワンクリック「publish」しびれました。
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