SHE SAID シー・セッド その名を暴けのレビュー・感想・評価
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誰かの犠牲の上に成り立つ娯楽
映画業界に限らず
古くからある組織や業界、権力図というものは
非常に厄介なものだなと感じた。
映画でいえば
たとえば、何かしらの犯罪を犯した人の作った映画や、出演作を
犯罪と作品は切り離されて評価されるべき
と言われることもあるが
こと、権力を行使して従わせた挙句の犯罪行為において
その権力者によって弱者をつかって創られた作品は
果たして、そのように切り離して考えることができるのか。
どうしても、
誰かが一生抱える傷を負い
人生を犠牲にしてまで
誰かのための娯楽作品を創る一端を担うのは
あまりに不平等のように思う。
この映画に関しては、
受け取り方は人それぞれだと思うが
社会の問題にも触れつつ
当時の記者たちの直面したリアルも
描かれていて、わかりやすく良い作品だった。
決して他人事ではない。
まだ記憶に新しい超大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ事件を2人の女性記者目線で描いた作品。もっと面白おかしく描く方法もあったでしょうが、派手さは一切なくむしろ禁欲的。同じく新聞記者たちの奮闘を描いた「スポットライト 世紀のスクープ」を思い出しましたがドキュメンタリータッチとも言えるさらに抑制された演出によってとても誠実な映画になっています。
でも決して退屈ではなく、どんどんのめり込んで展開をじっと見つめていました。
口を閉ざす被害者たち。様々な障害。
地道な取材の積み重ねを映画の中でも丁寧に積み上げ、サスペンスと社会派ドラマの両面性の中でしっかり問題提示をしています。
加害者はもちろん許される存在ではないけれどそれを許容してきた社会にも大きな問題がある、と。
そしてアメリカだけの問題ではなく、日本でも現在進行形の問題なのだ、とあらためて気づかされました。
#MeTooは一人一人の戦い
#MeToo運動 という大きな動きのなかで新聞記者や被害者、一人一人に向き合うことはなかったけれど、この映画は違う。
事件を報じた新聞記者も、事件を語った被害者も、それぞれの生活のなかで様々なものと戦いながら、問題を先送りにしてはいけない。自分たちが変えなければ、と必死の思いで実現した動き。
選択をするにあたりどれだけの恐怖があったか。心に大きな傷を負い、大きく歪められた人生があることを、理解しなければいけない。
唾棄すべき、群れのヒエラルキー
お見事。事実も作品も実にお見事でした。変に偏らず、フラットな視点が感じられて「丁寧だなぁ…」なんて感動しちゃいました。主人公達も「強引だけれども丁寧」なんですよね。ああいうジャーナリストは大歓迎でしょう。上司とその上の役員も素晴らしい。この映画は、ジャーナリズムが虐げられた弱者に「手」を差し伸べた様な形になっているが、主人公達にもその「手」は差し伸べられていたし、全ての人物が背中をそっと押したり押されたりしてて、事件はアレなんだけれども、幸せな気持ちになれた。
ミラマックス好きだったんだよなぁ…。偏る特異点に呑み込まれる典型の様なケースだが、「彼もまた時代の被害者だ」なんて言うつもりはない。イジメ(ハラスメント)に言い訳も大小も無いのだから。
2人のワーキングママが抗えないシステムに立ち向かう
本作は#MeToo運動の火付け役になった2人のママさん記者たちの奮闘を描く。
火をつけるどころか火を起こすところから始まる本作のストーリーは報道記者の苦労をひしひしと感じる。また本作は傷つき、沈黙を余儀なくされた多数の被害者の存在がある。彼女らは公序良俗を無視した悪法たる契約の存在とそれを守る法の番人たちのせいで半ば生ける屍状態だ。
中でも印象深い台詞は物語導入でミーガンが語る 報道機関は法的支援はできない というもの。
しかし、観賞後そんなことはないと強く主張できると私は考えるにいたった。
報道とは報われる道と書く。
ひとつの記事を世に出すための労力たるは想像を絶する。
足を運び、関係者の心を解きほぐし、証拠や裏付けを得て、根回しもする。
他社とのスピード競争もあるだろう。
まさに究極の製造業といってもよい。
彼ら彼女らのとりわけ弱き者たちのための頑張りが報われ続けてほしいと願うばかりである。
権力におもねらないマスコミの健全性
Me too運動の切っ掛けとなったニューヨーク・タイムズの二人の記者の取材活動を実話に基づき描いた作品。冒頭、トランプ大統領からの抗議の電話音声が流れる。ニューヨーク・タイムズは権力や圧力に屈しない紙面づくりで有名だ。日本で言えば文春砲のようなものか?全国紙でニューヨーク・タイムズのような骨のある新聞社といえば、どこだろう?
マリガンが好き。事実の重み、女性たちのきつさがリアリティとして襲っ...
マリガンが好き。事実の重み、女性たちのきつさがリアリティとして襲ってくる。本当にgood jobだったことがわかる。
ひとことReview!
後の「#MeToo」ムーヴメントになった実話作品。濃厚な感じなんだけど、「ふーん...それだけ?」ってな感じ。偏差値50以上の大卒の意識高い系と、フェミニスト女子向け。
放題の副題がなければ…
日本の邦題はなぜこの副題をつけなければいけないのか?ちゃんと考えたんだろうか?
最高の映画とも言えるこの映画にこの副題は価値を下げるだけでなく、ラストシーンの意味すらズラしてしまってると思った。
とにかく実名や本人が出てこのクオリティで作品としてエンタメとしてできる凄さをもっと評価すべき。
事件を風化させないという執念と覚悟が伝わる一作。
2017年にニューヨーク・タイムズ紙が報じた、著名映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行事件に関するノンフィクションを原作とした本作、取材の中核を担った二人の記者、ジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)とミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)はもちろんのこと、渦中のワインスタイン、さらには彼の被害に遭ったアシュレイ・ジャッドまでも実名で登場しています。ここに作り手の並々ならぬ覚悟と執念を感じることができます。
しかし本作は単にワインスタインの悪行を告発するメッセージの強さだけが特徴ではなく、映像の美しさ、そして心理描写の巧みさと言う点でも印象的です。例えば作中では、主人公達は度々逆光に浮かび上がるシルエットとして描かれ、これによって彼女らが取材の過程で時に強い孤独感を感じていたことを克明かつ美しく描いています。本作のもう一つ興味深い点としては、キャッチライトの使い方があります。「キャッチライト」とは眼球の黒目に入る光の点のことですが、カンター記者やトゥーイー記者ら疑惑を追及する側はこのキャッチライトが入っていて、その表情に強い生命力と意思を感じる一方で、ワインスタイン側のスタッフ、弁護士らの眼にはめったにキャッチライトが入っておらず、言わば「死んだ眼」になっています。もしかするとこれは単なる偶然なのかも知れませんが、あまりにも物語の内容と重なるので、興味深く感じました(ワインスタイン側の弁護士が思わず本音を漏らすときだけキャッチライトが入ったりとか)。
本作が第95回アカデミー賞において、全くノミネートされなかったことが話題になっていますが(ワインスタイン製作の作品は何度も受賞しているのに)、やっぱり未だワインスタインの影響があるのかと、ちょっと残念…。
華やかなことの裏側。
#metooは知っていたが、恥ずかしながら事の発端までは知らずこの作品を観ました。
記者2人の奮闘ぶりは見所あり。
映画界の裏側が垣間見れる怖い作品であり、こういうことはまだ氷山の一角なんだろうなと、考えさせられる。
ニューヨーク・タイムズという後ろ盾すら危うい敵との闘い
#me too運動に弾みをつけた、ハリウッドの超大物映画プロデューサー、ワインスタインの長年にわたる性的暴力の告発記事
その記事を書いたニューヨーク・タイムズ紙の2人の女性記者の、苦悩と闘いを描く
ニューヨーク・タイムズという後ろ盾を持ってしても、厳しい戦いを強いられる大物プロデューサーを相手に、悩みながらも果敢に挑む女性記者の奮闘記
キャリー・マリガンの出演作って、ハズレがない印象
熱量が凄い!最後は想いの強さで人の心も動く。
世界中を駆け巡ったハリウッドを揺るがせたあのセクハラニュースの裏側。NYタイムズの二人の女性記者の奮闘と、女優だけでない被害者達がその被害をきっかけにどれだけ辛い人生を歩むことになったのか。それも被害者によっては25年もの長い間。それには、一人の力を持ちすぎた最低なセクハラ男だけでなく、法にも問題があったということも。
NYタイムズの記者達は、命の危険も感じる嫌がらせの怖さから逃げたい気持ちもあったと思うが、そこに打ち勝ったのは、これ以上被害者を増やしたくないという強い想いから。記者達のその強い想いを受け止め記者を信じた、被害者達。最後の記事公開までの数分の熱量は物凄く、その瞬間の心臓の高鳴りは、スクリーンを通して熱く伝わってきた。
あえて男性がちゃんと観るべき作品。
男女がいる限り悲しくも消える事はない性的暴力。
加害者は同等の地獄を喰らうべきだが
相手は映画業界トップクラスの権力者。
情報なんて簡単に潰せる権力者。
どんな犯罪でも消せる。
そんな勝てるわけのない糞野郎に
女性新聞記者達が立ち上がる!
そんな実話。
女性が告発する勇気がテーマ。
あえて男が観るべきです。
この気持ちを知っておくべき。
それにしてもほぼ実際の名前。
ミラマックスとかめっちゃ悪の根源として表現。
これ、日本なら実名は無理だな、実話題材でも。
「音楽がいい」
今年12本目。
女性の所へ向かう車の運転中に流れる音楽が非常にいい。しびれました。女性3人と弁護士1人が話し合う所が一番好き。弁護士が弁護人を守らなきゃいけない、しかし行いも誰かに話さなきゃならない、その心のせめぎ合いが表情に現れ見ていて頷きました。記者が深夜まで記事を書く、近年残業時間が日本でも問題になっていますが、やはりそこまで働いている人がいる頭が下がります。現実の世界では適切な残業時間であって欲しいと思います。
巨大な権力に声を上げた勇気とそれを伝えた奮闘に脱帽
#MeToo運動のきっかけとなったハリウッドの大物プロデューサーのセクハラ記事の公開までの、沈黙を強いられてきた被害者が声を上げるまでとその声を伝えようと立ち向かう記者の戦いを描いた作品。
問題はプロデューサーだけではなく、それを隠蔽しようとするシステム、無関心を決め込むサイレントマジョリティだったんだと驚くばかり。
淡々と告発まで向かう中で記者たち、被害者たちも家族のいる人間であること、その人間性をぶち壊す非道な行いを繰り返し行ってきた、許しがたい悪に怒りがぶち上がった。
何十年もかけてやっと公になり、声を上げることができたんだとMeToo運動をふーんと見ていた自分を恥じた。
実名を出すことの困難
セクハラの被害者に証言をしてほしい、できれば実名を出して欲しいとお願いして回る2人の女性記者の話なので、「その名を暴け」という副題の「その名」は加害者ではなく被害者の名前を「暴け」ということになる。なんか変。
1990年代にまで遡って調査しているので、セクハラ被害はなかったこととして暮らしている女性の傷をえぐり出すことにもなり、当然スムーズには行かない。しかし、夫の理解や協力を得ながら子育て中の2人の記者の奮闘ぶりが被害者達を動かした部分もあり、勇気を出す人が出てくる。
髪ボサボサですっぴん風のキャリー・マリガン、ゾーイ・カザンはイメージとそんなに変わらないか、上司で白髪が美しいパトリシア・クラークソン、に加えて、「ブルックリン99」のホルト署長が出ているのも嬉しかった。
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