「MeToo運動の起点」SHE SAID シー・セッド その名を暴け 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
MeToo運動の起点
#MeToo運動のきっかけになったニューヨークタイムズ紙によるワインスタインの告発を描いている。
記者に課せられたのは実名付きの証言あつめ。
だが、関係者との接触をこころみるたびに、壁にぶち当たる。
女優らは権力と人気の失墜に怯え、ミラマックス職員らは訴えに示談が成立し、その後の行動制限まで約束させられている。且つ被害者は被害を秘密にして長い年月をすごしてきており、安寧が壊されることを畏れている。
ワインスタインはフェミサイドの女性弁護士までも味方につけている。人たらしな側面をもち、捕食対象ではない女性と良好な関係をキープしている。我を押しとおすために恫喝や脅しを用い、下の者を威圧で服従させることに長けている。
長い年月、かれの王国で何十人もの女性が被害に遭い、泣き寝入りしてきた。
──という規模と惨状が、被害者と会うたびにじわじわ広がっていく。
追うのはふたりの女性記者。いずれも子育て真っ最中。その母親な片面と記者の片面が、葛藤し揺れ動きながらも、なんとか王国の外堀を埋めていく。
このMotherlyな表現はMaria Schrader監督の味付けだと思う。が、Motherlyな一方、描写は冷静でスポットライトのような肌触りだった。
本編に出てくる女優の告発者はマッゴーワン、パルトロー、アシュレージャド。ジャドは本人が演じている。公表を拒んでいた女優や職員も記事発表のあと続々と名乗り出た。
それにともなってワインスタインの件とは別の性的被害をうけて泣き寝入りしていた女性らが、われもわれもと訴えに名乗り出た。それが世界じゅうに広がった。#MeToo運動のはじまりだった。
さいきん(2023)の海外報道ではDan Schneiderというプロデューサーのハラ疑惑があがっている。ギリースやグランデを輩出したキッズ番組チャンネルNickelodeonにながくいた。
ダライ・ラマもキモいハラ疑惑があがっている。少年とのやりとりで舌を吸ってとベロを出した映像が拡散されている。レディーガガのダメージジーンズの膝小僧をちょこちょこする映像もあがっている。
日本で少年をもてあそぶ性嗜好を満たすために芸能事務所をつくった男がいる。
美少年をあつめ寝食をあてがい夜な夜な未成年を捕食しつづけた。裁判所が認定しても権力と忖度に乗っかって悪さをつづけた。50年間で1,000人以上の被害者がいると言われている。サヴィルやワインスタインと同等かそれ以上だが、かれは殆ど報道に乗ったことがない。
映画の始めと終わりはミラマックスのいち職員だったローラの描写になっている。夢をたずさえ、わくわくしながら映画の世界に入ってきたローラだったが酷いことをされ何もかも投げ出してふさぎ込む。
性被害に遭うということは気持ちがズタズタに踏みにじられその悪夢が生涯つづくということだ。それを起と結で言っている。