劇場公開日 2023年9月1日

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「温かさと瑞々しさ」こんにちは、母さん のらりさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5温かさと瑞々しさ

2023年9月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

正直、見るつもりのなかった一本。

寅さんシリーズ、映画「学校」シリーズのファンとしては最近の山田洋次作品に物足りなさを感じていたから。さすがに歳をとって守りに入ってしまったのかな、と。今回は大女優、吉永小百合礼賛映画なのかな、と。

それが映画評論家、秋山登氏絶賛の評を読み、映画館へ。
見事に裏切られた。
山田洋次監督、健在!

秋山登氏の言う「古き良き時代への郷愁がほのかに香り、芸も品もあって、爽やかに私たちの心を和ませる。」 まったくもって同感。

吉永小百合はやはり吉永小百合。艶やかな存在感を放つ。息子の大泉洋をはじめ、中心にいる人も、それを囲む人もそれぞれに美しい。一人として監督の温かな眼差しが注がれない人がいない。

寅さんもそうだった。脇役の1人に至るまで丁寧に、愛ある描き方をされ、嘲笑、蔑みが一切ない。「こんにちは、母さん」もその世界だった。

有名俳優の演技はもちろんのこと、とくにホームレスの男性イノさんを演じる田中泯が素晴らしい。吉永小百合と同い年、78才。戦争の記憶を今も引きずるイノさんに託した監督の深い想いが伝わってくる。

良い作品に出会えて幸せ。

のらり