劇場公開日 2023年9月1日

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「兜を脱いだ吉永小百合、山田洋次九十歳の偉業」こんにちは、母さん mayuoct14さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0兜を脱いだ吉永小百合、山田洋次九十歳の偉業

2023年9月8日
iPhoneアプリから投稿

(好みではないのですが、所属する映画合評会の課題になっていたので見ることになりました)
もともと山田洋次監督の「下町人情もの」自体がそんなに好きなジャンルではなく、吉永小百合さんも好きではありませんでした。
特に、吉永さんについては、実年齢とかけ離れた(周りの技術やご本人の努力で作り上げられた)若い役をこの先いつまで続けるのだろう…と新作が封切られる度に思っていました。

しかし本作では、今までの吉永さんとは違って、年相応の「おばあちゃん」を軽やかに演じられていました。
ようやく「老いに抗う」兜を脱いだのではないでしょうか。自然体で素敵な向島のご婦人でした。
大泉さんも昨年末の『月の満ち欠け』とは違った抑えめの演技に好感が持てました。
吉永さんとのコンビネーションも、親子独特の遠慮のない、当意即妙なやり取りを面白く見ることができました。

私自身の期待値が低かったことも要因としてあるかもしれませんが、観終わって「いやぁ、意外と良かったなあ」という感想です。
ほかにも、向島や押上、隅田川界隈のロケや地名が出てきて、少し前までの自分の馴染みの地が舞台だったのもプラスに働きました。
こういった、まだ昔の雰囲気を残す街並みを切り取る撮影の美しさや美術にも一流の品質、品格を感じました。
このような素地の上に山田脚本の登場人物のキャラクターが乗ると、底抜けの善人ばかりでホントはあり得ない設定も、なんだかほのぼの見ることができてしまいました。

また、自分も含め、最近の日本語で忘れられてしまった「日本語の美しさ」を感じられる表現が、流れるように台詞の中ではき出され、これが、これまで長く生きて来られた時間の中で紡ぎ出された、山田監督の脚本なのだなぁ…と、しみじみと日本語の良さを噛みしめられる映画に出来上がっていました。
御歳九十歳越え、山田監督の偉業を素直に称えたいと思います。

mayuoct14
みかずきさんのコメント
2023年9月10日

フォローありがとうございます。
私の方からもフォローさせて頂きます。

私、10年位前から、キネマ旬報、kinenote、Yahoo映画レビューなどに映画レビューを投稿しています。現在の目標は2回目のキネマ旬報採用です。こちらのサイトには昨年2月に登録しました。
宜しくお願いします。

ー以上ー

みかずき
みかずきさんのコメント
2023年9月9日

はじめまして、みかずきです
共感ありがとうございます

山田洋次監督は、日本人の心情を熟知しているので、作品世界に入り易く、作品世界の居心地が良い作品でした。

吉永小百合は、仰る様に、実年齢相当の役柄でしたので、自然体で、
息子役である大泉洋との息もピッタリ合っていました。

山田洋次監督も90歳を越えました。
あと何作、山田監督の新作を観られるか分かりませんが、一作一作を大切に鑑賞したいです。

では、また共感作で。

ー以上ー

みかずき