「はみ出してしまった人たちへ」パラダイス 半島 okayuさんの映画レビュー(感想・評価)
はみ出してしまった人たちへ
世間からはみ出してしまったかも、と感じている人にぜひ見て欲しい作品です。
過去に多忙な仕事に限界を感じ、突発的に辞職してしまったことがあります。その後私を待っていたのは、自由な日々ではなく焦燥・孤独・迷いでした。
真英や夕起もそうだったのかな?と思いました。自分がしたいことは何となく分かっている。でもそれを絶対にやりたいという訳ではないし、正しいかも分からない。半島で過ごすことによって、体は元気になっても心の方はどうなのか。希望に満ち溢れている人にとっての『時間』はありがたいものですが、心が元気でない人にとっての『暇』は意外と怖いものです。
そんな状況で2人の背中を押したのが、竜の存在だったのではないかと。最終的に背中を押された理由は決して良いことではなかったですが、真英が拙くても俳句を書くことができたこと、それを夕起と笑い飛ばすことができたことが全てなのかなと思います。
真英が島を出た際にいなくなり、真英が島に戻ってきた今になって帰って来たロンの存在が、真英にとっての人生の筋みたいなものを表しているのかなとも思いました(ロン役の犬の本名がリュウだったのももしかして?)。
話が少しズレますが、夕起という名前もとても良いですよね。朝に起きて行動できなくても、夕方に起きて動き出しても良い。この夕起という名前そのものも、朝に起きられなかった=世間からはみ出してしまった私たちの背中を押してくれている気がします。
さらに話は変わりますが、真英の人の良さも心に沁みました。言動に愛情が滲み出ていて、身の回りで家族を含めあんな風に接することができる相手がどれだけいるだろうと。夕起と竜もそんな真英がいるからここに来てしまうのだろうなと思いました。そんな3人の関係性は通常なかなか手に入るものではなく、見ていてとてもうらやましい気持ちになりました。竜に対しては様々な疑問がありますが、夕起と逃げることをせずに最後に2人へ真実を告げることができたこと、そこに半島での3人の生活の意味を感じました。いつかまた、ここで3人が再会する日もあるのではないかと思いました。
まだまだ自分の中で消化できていないことがたくさんあるので、もう一度見たいと思います。
最後に、稲葉監督は本当にメインキャスト3人のことが大好きなんだなと思いました(笑) 私は染谷さんのファンですが、ファンがこんな染谷さん見てみたいなと思っていたところをたくさん見せてくださって、きっとそれは立川さんや吉田さんのファンもそれぞれ同じ気持ちになったのではないかなと。とても監督のキャストへの愛を感じる作品でした。