雨の詩のレビュー・感想・評価
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シンプルイズベスト?
「あなたの人生をシンプルにすると、宇宙の法則がよりシンプルになります。孤独は孤独ではなくなり、貧乏は貧乏ではなくなります。そして弱さが弱さではなくなるのです。」(ヘンリー・デイビッド・ソロー)
19世紀の奴隷解放論者であったアメリカの詩人ソローは、実際この映画の主人公のように、湖畔に家をたて、自給自足の生活を営み、数年の間一人、本を愛する生活を営んでいたそうです。そしてソローの「森の生活」はタルコフスキーの愛読書でもあったわけですが、この映画にはそんなタルコフスキー映画の特徴である、「雨、火、時間を刻印するためのスローな移動撮影」などが頻出します。
ガラス窓に打ち付ける雨音、二人が叫びながら泥だらけになって鰻や魚をとろうとする湿原や清流に降り注ぐ驟雨の光、そして虫の鳴き声、焚き火の揺らめく火を見つめながら朗読される詩の言葉。
この作品の16ミリ白黒フィルムに焼き付けられた、そんな原初の根源的な体験に身を委ねると、不思議な幸福感に包まれます。
考えてみれば我々の遺伝子に組み込まれている狩猟の歴史は180万年、農耕の歴史は2000年、産業革命の歴史は200年、情報革命の歴史は数十年です。ふとたちどまり我々を形作っている根っこの部分に耳を傾けて、今の生活を振り返ってみるのも面白いかもしれません。
短くある意味あっけ無い印象を受けられる方も多いかもしれませんが、ふと立ち止まり、遠い来し方に思いを馳せながら、今を振り返ってみるには良い作品だと思いました。
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