「ひたすらド派手アクションだけを楽しむ」ハート・オブ・ストーン クニオさんの映画レビュー(感想・評価)
ひたすらド派手アクションだけを楽しむ
ド派手アクションのつるべ打ちムービー、それも世界各地でロケーションを敢行し如何にも金のかかった作品とすぐ判る。同じネットフリックスの「タイラー・レイク2」とほぼ同じで、これ程の激しいアクションであればこそ巨大スクリーンで観たかった。それ程に寸時を惜しんでのアクションは素晴らしい、けれど同時にそのアクションに意味をもたらす間に挟まれたドラマの未熟さもほぼ同じなのです。
主演のガル・ガドットは製作まで請け負って、ワンダー・ウーマンのイメージの定着を恐れず果敢に激しいアクションに打ち込む。よって、観ている方としては、ここぞのピンチにワンダー・パワーを何故使わぬ、とまで思ってしまった。卵型の美しいお顔に大柄な体躯は本作にこそ相応しい。制作はトム・クルーズのSkydance。どんなアクションのベテラン監督かと思ったら、おやまあ歌手の出世物語「ワイルド・ローズ」のトム・ハーパー監督とは意外。
開巻早々のアクションのステージはイタリアのスキー場。断崖絶壁にそびえる巨大コテージ(ホントにあるのか怪しく多分CGかと)が舞台。仲間がターゲットを捕まえ飛び乗ったリフトが麓まで下降する。麓にはターゲットの一味が集結し仲間の身が危ない。で、同僚が急遽車で雪の道を走るが間に合わない!ここでガル扮するストーンが選択した手段が、まあ派手派手。斜面に何も持たずいきなり飛び降り、他人のパラグライダーを奪い取り絶壁を急降下、しかも夜間ゆえ真っ白なパラグライダーにLED照明が付き美しい事、続けて今度はリフトのロープに紐掛けてぶら下がり下降、摩擦熱で紐が切れる心配なんて当然杞憂です、さらに今度はスノーバイクを奪いスリル満点の走行を披露しやっと到着の無茶苦茶です。まあこれだけで並みの映画一本観た気分。
この後、舞台はポルトガルのリスボンに移動し、これまた夜間の市街地で「ミッションインポッシブル」並みの超ド派手カーチェイスを展開、続けてアフリカはスーダンでの攻防戦、そしてアイスランドのレイキャビクのビル爆破を含む市外戦と、これでもかのボリュームです。リスボンでは名物の路面電車まで巻き込んで、1年前の同じNetflix映画「グレイマン」のプラハでのアクションを思い出す程。
要はロンドンのМI6に属する彼等の活躍を描くのですが、ストーンの挙動が怪しかったり、相手役のイケメンに扮するのがジェイミー・ドーナンで途中彼も突然の変身でややこしい。目的は世界中のシステムを操作できる「ハート」と呼ばれるシステムのようで、悪の組織に奪取されまいと奮闘するわけです。しかし、そんなお話は退屈で、どうでもよろしい。中盤にはアッと驚くビッグスターまで登場、なんて勿体ぶっても仕方ないですから明かしますが、組織のトップに君臨するのがオペラ劇場のワンシーンのみ登場するのがグレン・クローズ! 何故ワンシーン?この後すぐに殺害されてしまうから、嗚呼勿体ない。
いかにも頼もしいガル・ガドット姉さんですが、普段はひっっめ髪が多く勇ましいけれど、ここではフェミニンなボリューミーなヘアスタイルで可愛さ際立ちます。が、ジェイミー・ドーナン相手に何も起こらず、ってガドットの演技の幅を魅せるシーンもなんなんて。ひたすら一本調子の演技に陥り残念。
滅茶苦茶とかご都合主義とか不死身過ぎ、なんて百も承知。ラストには続編を匂わせますが、消耗品としての娯楽アクションは必要なので頑張って下さい。スカイダンス制作ですから、突入した部屋になんとトム・クルーズ!なんて、あり得ますよね。