「芸術は麻薬だ!俺らはジャンキーなんだ!」フェイブルマンズ まままさんの映画レビュー(感想・評価)
芸術は麻薬だ!俺らはジャンキーなんだ!
途中で叔父さんが呪いのように言うセリフ。
同じ場面で、お前は家族と芸術の板挟みになる、孤独に道になる、的なことも言ってた。
終始そういう話。映画製作のいいところと悪いところ。
芸術肌の自由人お母さんの浮気な心も映画なら隠せる。
いじめっ子を神格化させることもできるし、また別のいじめっ子はダサく見せることもできる。
ただどちらかというとそういう強いメッセージがあると言うよりは、1人の少年が大人になるまでの様々な出来事の記録に近い。
大きな山があるというよりは小さな山が複数回ある。
それぞれの出来事に愛が感じられるのがスピルバーグのいいところで、それぞれの出来事が不思議と退屈せずに見れてしまうのがスピルバーグの凄いところ。
印象的なシーンやセリフが多いのもその理由の一つ。
・地上最大のショウのシーンが忘れられなくて再現する少年
・フィルムにピンで穴を開けて銃撃戦を再現。それは楽譜を母が踏んで穴を開けたところで思いつく。
・ピアノ弾きの芸術肌お母さんは洗い物をしないので、使い捨ての食器を食後にテーブルクロスで包んで捨てる
・母は思いつきだけで竜巻に突っ込んでいく。全ての出来事に理由がある、と
・浮気相手のおじさんからのカメラのプレゼントを無視するでもなく壊すでもなく金を払って受け取るのはスピルバーグっぽい。それでいて金をさらりと返される
・母は今度は猿を飼い始める
・交際相手はイエス大好き。
・デビットリンチがジョンフォード役
・地平線は上か下かだ!のあとに真ん中から下へと地平線を動かすカメラワーク
芸術家の自由人母とエンジニアの天才父からスピルバーグが生まれるのはまるで必然かのよう
様々な嫌な人間や出来事が絵が描かれるのに、怒りこそあれどそれがねちっこい憎しみにならずなんだかんだで愛で包まれているのはスピルバーグのさすがの人柄。