「映画の教育のままにならない関係について。」フェイブルマンズ 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
映画の教育のままにならない関係について。
2022年。スティーブン・スピルバーグ監督。少年期の衝撃的な映画との出会いから映画にハマっていく男の少年期、青年期を描く監督の自伝要素満載といわれる作品。最後はジョン・フォード監督が現れ(しかもデヴィッド・リンチ監督が扮している)、映画スタジオらしき敷地の地面は濡れていて(もちろんフィルム・ノワールに代表される映画手法)、そして「地平線は下に」張り付いている。映画史三昧。
もちろん監督の自伝的な物語なのだろうが、幾重にも描かれるのは映画と教育の関係。主人公は転向した高校でいじめを含む多感な時期を映画をつくることで生き延びるし(教育課程と映画)、映画を見ることや撮ることを通じて人間の無意識を含む心の複雑さを学んでいくし(映画による教育)、この映画自体が映画手法や映画史を教えている(映画の教育)。そしてそのすべてについて、「思い通りにはならないこと」が強調されている。意図せずに写ってしまうもの、思わぬ効果を発揮するもの、つい発見してしまうものこそが映画の精髄なのだ。スピルバーグ監督という偉大な先生が、身をもって教育と映画の「ままにならない」関係を教えているのだ。それが人生賛歌でなくてなんなのか。
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