私たちの場所
解説
2022年・第35回東京国際映画祭「アジアの未来」部門出品作品。
2022年製作/91分/インド
原題または英題:A Place of Our Own
2022年・第35回東京国際映画祭「アジアの未来」部門出品作品。
2022年製作/91分/インド
原題または英題:A Place of Our Own
主人公はNGOのコンサルタントとして働くライラと富豪の家でハウスメイドとして働くローシュニ。二人はトランスジェンダーであるがゆえに部屋を借りることも容易ではなく、ようやく見つけた部屋には夜中に怪しい男がやってくる始末。不動産屋にクレームをつけると逆に部屋を追い出されてしまう。とりあえず長期間家を空けることになった友人の自宅に転がり込んだ二人は仕事の合間に新居を探し始めるが、そこにはやはり差別の壁が立ち塞がる。
主人公の二人に容赦なく浴びせられる罵詈雑言にうんざりさせられますが、不寛容に満ちた世界の片隅で暮らすトランスジェンダー達が出会い友情を深め、そんな彼らに理解を示す人達も集まり始める。しかしそんなささやかな運動が注目を集め始めるとより強い力が全てを踏み躙ろうとする。インドに限らずどこにでも転がっている負の連鎖を眺めるのは不快ですが、そこはインド映画。91分と通常のインド映画の半分程度の尺しかないですがちゃんと歌と踊りがあり、終幕もかすかな希望の光に満ちています。
上映後に登壇したのは脚本と撮影監督のマヒーン・ミズラ。本作を製作したのはエクタラ・コレクティブというグループですが、彼らは監督というポジションを用意せず、映画製作過程の様々な判断を話し合いで決めるという体制を取っているというのがユニーク。『タンジェリン』という映画に強い影響を受けている等色んな話が聞けました。個人的には最初にライラが住んでいた部屋に備え付けの電子オルゴールのメロディが“この素晴らしき世界”だったところに強烈な風刺を嗅ぎました。