葬送のカーネーションのレビュー・感想・評価
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シングルベッド
トルコ南東部でヒッチハイクをしながら棺桶を運ぶ爺さんと孫娘のロードムービー。 車やトラクターに乗せて貰ったり、時に徒歩で歩いたり、国境を目指して旅する二人をひたすらみせていく。 あらすじ紹介には亡き妻との約束で遺体を祖国にと記されているけれど。誰の遺体だとか何故国境を目指しているのかは終盤になるまで示されないし、孫娘の心情は最後まで示されず。 「生きる言葉」も、出会った人とのやり取りというか一方的な身の上話はあったけれど、神の啓示は言い過ぎじゃ? 多分亡くなった奥さんの遺体を埋葬する為に国境の向こうに行きたいんだろうなと言うのはなんとなくわかるし、両親がいないであろう孫娘と二人というのも観てれば伝わってくるけれども。 爺さんも孫娘も多くを語ることはなく、木工所の兄ちゃんの発言で、えっ?まずいの!?からのまさかの結果になんだかモヤモヤ…そしてラストも、それでハリメは?と又ちょっとモヤモヤ。 重苦しいという程の空気感ではないけれど、特に大きな波もなく最初から最後までまったりじっくり、しかしながらなんだか作中に引き込まれ、哀しさや虚しさややり切れなさなんかはしっかり伝わって来て、なかなか良かった。 前日しっかり睡眠とっての1本目だから良かったれど、寝不足だったり疲れていたりでの観賞だとヤバいかも。
中野翠が5つ星を上げた作品。観て納得した。
私が映画鑑賞の目安とする「週刊文春」の映画欄で、中野翠が絶賛していたので鑑賞した。中野翠は私が信頼しているコラムニストだ。 セリフが殆どない。リアリスティックな映像だけど詩的なものを感じる。トルコの荒涼とした大地と山々、昇る太陽、沈む夕陽、吹き荒ぶ風、狼の遠吠え。それに主人公の心象を表すような夢や幻覚が交差する。 映像を観て、感じ、考える映画だ。私はこの映画から人間の孤独や希望、生きる尊厳なようなものを感じた。 ハマる人にはたまらない映画だ。
トルコに配慮しすぎて何を述べたいかはっきりしないタイプだが仕方はない…。
今年23本目(合計1,115本目/今月(2024年1月度)23本目)。 シネマートで見たのですが、あまりにセリフが少ないので音響がぶっ壊れてるんじゃないかとすら思ったくらいです。 またこの映画は「トルコ文化観光省」が協賛していること、および、日本・トルコ間は基本的に「仲が良い」ということはまず念頭に入れる必要があります。 そのうえで極端にセリフの少ない映画ですが、何となくロードムービーである点ははっきりします。この点、2023年だったか、イランかイラク国内のそれを描写した映画は、当該国の検閲が厳しすぎるので「本当にくみ取るしかない」状況になったのは確かではありますが、トルコといえば日本とは、表現の自由や検閲の多少の差はあっても「あれもこれもチェックする」という考え方には立っていないはずです。換言すれば、トルコをアジア圏、ヨーロッパ圏のどちらにいれるとしても、比較的「人権を尊重する国」ではあるはずです。 そのうえで一方で「難民」や「トルコ語と異なる言語が出てくる」といった語を考慮すると、トルコが抱える問題…、つまり、「広義の意味での」クルド人問題が背景にあるものと推測できますが(この点、この映画は去年かに東京で比較的早く公開されたときのQ&Aに「国内の難民を想定したものであるが、必ずしもトルコ国内ではなく、今でいえばロシア・ウクライナなどからの難民も含むと解釈して」というもの(大意)でしたが、「ロシア・ウクライナからの難民」を想定してこの映画を見ることはまず不可能なので、上記の発言もおそらくトルコ政府からのいろいろな規制がかかっていて「ギリギリ言える発言なのだろう」ということも推知ができます。 一方で日本ではというと、日本にはクルド人の方がいらっしゃるのと同時に、日本・トルコ間は仲が良く、トルコのような発展途上国を超えた先進国では「難民の存在」を(仮に知っていても)認知しないので「そんなものは存在しない」と突っぱねるわけですが、日本政府の考えも日本・トルコ間の関係は維持しつつも実際に滞在するクルド人をどうこうすることもできず(このことは、当事者が現在(令和5~6)においても、いわゆる「高齢化」に伴って「人不足」が懸念される産業である「解体工事」などの「工事現場」で多く働いている、という労働政策的な問題も絡んでくる事項であることから難しい)、実際、トルコが日本に「難民問題なんか存在しないんだ」と主張しても日本は関係を維持はしつつも、適法に在住する限りは無理やりなこともできず(行政訴訟が続出する)、こういった「特異な問題」を抱えつつこの映画の公開にこぎつけた経緯があり、「トルコの難民問題」(広い意味ではクルド人問題。おそらくもう少し絞れると思えるが、セリフがあまりにも少なすぎて無理)という特殊な分野を扱っていることから、字幕も驚くほど少なく(全部かき集めても原稿用紙1~2枚いくかどうかすら怪しい)、こう「ワケのわからない状態になったのでは」と思えます。ただこれも当事者(配給会社側)にはいかんともしがたい部分もあり、そこも考える必要はあるかな…というところです。 実際上記の「難民問題、広義の意味でのクルド人問題がテーマか」ということは調べればわかりますが、そこもある程度外国人問題にアンテナを張っていないとその「調べようか」に至らないという部分はあり、この点で明確に「クルド人」といった語が出る問題提起型の「マイスモールランド」などと比べるとどうしてもどうか…という部分はあります。 こういった事情もあいかさなって「極端に何を述べたいかわからない」という部分は多々あるので、もう仕方なしかなという気がします。まぁ大人の事情でいえばトルコに気を使ったのだろうという気もします。 採点に関しては以下の通りです。 ------------------------------------------------- (減点0.3/映画の述べる趣旨が(トルコ等、表現の自由等が日本と同じ程度にある国の作品ということを考えると)極端にわかりづらい) ・ ある程度外国人の人権問題にアンテナをはっていれば「そういう問題なのかな」と思って帰って検索などすればこれらの「答え合わせ」にはたどり着けますが、この映画を見ただけでそこまで思いつくのはなかなかむつかしいのでは…と思えます(「クルド」という語も出ないし、まして「難民」という語は出ても「どこに行くのか」ということも明示sれない)。 -------------------------------------------------
こういった作品こそIMAXで観たい!
連れ合いの遺体を納めた棺を運ぶ老人と孫娘のロードムービー。 演出の手触り、筆致、リズムに心地よく酔いしれる内にあっという間に終わってしまった。 創作物に接する醍醐味はその表現を味わうことであることを改めて思い知らされます。 繊細な自然音を活かしたサウンドデザインもカメラも素晴らしく、個人的にはこういった作品もIMAXやドルビーシネマで観てみたい。 新年早々。素晴らしい映画に出逢えたことに感謝。 ラストシーンが忘れられない。
葬送のカーネーション 妻の骨を埋めるために故郷に戻るお爺さんと孫娘...
葬送のカーネーション 妻の骨を埋めるために故郷に戻るお爺さんと孫娘のロードムービー。 ストーリーとしては二人が故郷に戻りに行くだけ。 トルコ国内情勢と戦争の関係などの一定知識が必要なのかなと感じた。 妻を故郷へ戻したいお爺さんと逆に故郷に戻りたくない孫娘の対比が描かれているのは理解できた。 戦争はおろか死や、都会育ちで故郷というものに対する思いが薄い自分にはまだ早い映画だった。 個人的な2024年洋画新作鑑賞ランキング 1 ネクスト・ゴール・ウィンズ 2 アクアマン/失われた王国 3 ニューヨーク・オールド・アパートメント 4 異人たち 5 ミツバチと私 6 エクスペンダブルズ ニューブラッド 7 葬送のカーネーション
余白を残した作品でした
採点3.7 亡くなった妻を故郷に埋葬するため、棺を背負い歩む老人とその孫娘の旅。 台詞が、取り分け親子の会話がほぼ無く、その代わりに旅の途中で触れ合う人たちの言葉が優しく彩ます。 そして舞台となるトルコの景色や自然が雄大。そしてそのカットが実に美しい。 絶望感さえ感じる荒野なのですが、すごい魅せられました。 BGMもほぼ無く、風や雨や獣など自然の音だけです。 それぞれの立ち位置やバックボーンも語られる事なく、逆にその一瞬一瞬だけが浮かび上がるよう。 何となく感じる二人の難民らしさと、根付いたイスラムの思想も感じました。 孫のハリメと老人ムサの間にも"仕方なく一緒にいる”といった距離がずっと横たわっているんですね。 そんな気持ちは二人、遂に辿り着いた国境で完全に浮き彫りになります。 絶対に帰ると決めた故郷と、絶対に戻りたくない向こう側。 紛争下における、それは家族であってもある世代による意識の違いを写し込んでいるのは見事でした。 もう一度観たくなる、余白を残した作品でした。
トルコの冬は寒そう
トルコ映画です。 セリフがこんなに少ない映画をはじめて見ました。 自分の妻を自国に埋葬するため、孫娘と国境を目指していくお話です。 エンディングは、感動します。 寒い冬のトルコの風景が二人の旅路の厳しさを際立たせています。
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